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一般民間人の健康・快適宇宙空間を実現する宇宙QOL向上を目指した研究を開始

JAXA・宇宙戦略基金「SX-CRANE」に私大で唯一の代表機関として採択決定

2026年3月4日
 
早稲田大学
慶應義塾大学
東京理科大学
東京女子医科大学

一般民間人の健康・快適宇宙空間を実現する宇宙QOL向上を目指した研究を開始 JAXA・宇宙戦略基金「SX-CRANE」に私大で唯一の代表機関として採択決定~

 

詳細は早稲田大学HPをご覧ください。

【発表のポイント】

●JAXAの「宇宙戦略基金:宇宙転用・新産業シーズ創出拠点「SX-CRANE」」の採択を受け、国内の産官学9機関で、2030年以降に民間活動の拡大が期待される地球低軌道の宇宙空間を対象に、宇宙QOL向上を目指した有人宇宙滞在技術開発を推進します。

●地上とは異なるECLSS※1(環境制御・生命維持システム)に支えられる宇宙空間において、十分な訓練を経ずに滞在する一般民間人がどう感じるのかの視点から、認知・感覚・生理反応に基づく人間中心のアプローチによりQOL向上を目指します。また、同空間における健康・快適性を維持する技術と環境条件に制約されない快適性を統合し、宇宙滞在における新しい宇宙QOL像の提示を目指します。

●地球での実験データ、宇宙拠点での実証データ、ヴァーチャル環境でのデータを一体的に統合した統合データ解析プラットフォームを構築し、人の生理・認知・行動反応を多角的に再現・評価できる、新しい研究基盤の確立を目指します。

 学校法人早稲田大学(所在地:東京都新宿区、理事長:田中愛治)は、2026年2月6日にJAXA(宇宙航空研究開発機構)の「宇宙戦略基金:宇宙転用・新産業シーズ創出拠点「SX-CRANE」」に代表機関として採択されました。代表機関として採択された中では、私立大学で唯一の採択となります。

 2030年以降、地球低軌道の宇宙空間において、民間活動の拡大が期待されており、そこには訓練された宇宙飛行士だけでなく、民間人も活動対象のスコープに入ることが予想されます。本課題の採択を受けて、学校法人早稲田大学は慶應義塾大学、学校法人東京理科大学、学校法人東京女子医科大学、公立大学法人名古屋市立大学、国立大学法人大阪大学、有人宇宙システム株式会社、パナソニック株式会社、株式会社ジャムコの各連携機関とともに、宇宙QOL向上を目指した有人宇宙滞在技術開発を推進します。また、地球での実験データ、宇宙拠点での実証データ、ヴァーチャル環境でのデータを一体的に統合した、統合データ解析プラットフォームを構築し、宇宙と地上双方に価値を還元する新たな研究拠点の実現を目指します。

 また、本課題の研究代表者が、別に研究代表を務めている教育・人材育成プログラム(文部科学省「宇宙人材育成事業」令和7年度採択「ECLSS環境における人間の快適性を支える製品・サービスデザイン人材育成プログラム」)と連携し、非宇宙分野からの人材育成、裾野拡大、社会受容の向上を推進します。

 

図1. 人間中心の研究アプローチによる宇宙QOL研究開発

 

(1)採択事業について

■研究費の名称:JAXA 宇宙戦略基金 宇宙転用・新産業シーズ創出拠点「SX-CRANE」

■技術開発課題の名称:一般民間人の健康・快適宇宙生活を実現する宇宙QOL研究開発拠点

■代表機関名:学校法人早稲田大学

■研究代表者:早稲田大学 理工学術院 野中 朋美(のなか ともみ)

■連携機関(予定):慶應義塾大学、学校法人東京理科大学、学校法人東京女子医科大学、

        公立大学法人名古屋市立大学、国立大学法人大阪大学、有人宇宙システム株式会社、

        パナソニック株式会社、株式会社ジャムコ

■支援予定期間:2026年4月~2034年3月(最長8年)

 ※当初契約期間は、契約日から最初のステージゲート評価が終了する日の属する年度末日まで。

 

(2)背景と課題

 現在、宇宙における有人活動は宇宙飛行士が担っており、ECLSS(エクルス:環境制御・生命維持システム)は、高度に選抜され長期訓練を受けた宇宙飛行士が生命維持を可能とすることを前提に、設計・開発されてきました。

 その一方、一般民間人の宇宙旅行や商業宇宙ステーション構想の実現など、今後の民間活動の拡大が予測される地球低軌道の宇宙空間においては、健康維持に加え、快適に過ごせる環境の確保が不可欠となります。十分な訓練を受けずに宇宙空間に渡航する一般民間人にとって、快適性・QOLの向上や健康維持を支える製品・サービスは不可欠であり、今後、そのために必要な技術開発と研究拠点が必要となります。

 

(3)本研究開発内容と実施体制について

 本研究開発は、「人がどう感じるのか」の視点から、認知・知覚・生理反応に基づく人間中心のアプローチを導入し、宇宙拠点での健康・快適・QOL体験を統合的に設計する世界初の挑戦となります。以下の9つのグループによる3つの研究グループ群で、具体的な本研究開発項目を推進します。

図1:本研究開発を推進する研究グループおよび研究グループ群

<システムデザイングループ群>

1.民間宇宙ビジネス・サービスデザインG

 宇宙旅行や居住における利用者の選好・評価・心理的要因を定量化し、指標・ガイドラインGが各グループと連携して開発する「宇宙QOL指標」と結びつけることで、新しいサービスやビジネスの設計とともに、行動経済学の知見を応用し、宇宙環境において望ましい行動変容を促すサービスデザインの構築を目指します。さらに、サービスレベルごとの費用対効果を検証し、社会実装可能なビジネスモデルの提示を目指します。

2.システムデザインG

 居住空間に提供するQOL基盤のデザイン、各グループが開発するQOLアイテムにおけるQOL基盤および外部システムとのインターフェース設計を担当します。また、単にものが動くだけでなく、地上や宇宙でどのような試験を実施して社会実装していくか、社会実装を実現する分野融合研究開発のマネジメントを担当します。

3.宇宙実証G

 各研究グループにより創出された技術アイテム群を統合し、実際の宇宙環境あるいは模擬環境において段階的に検証・実装を目指す際に、開発した技術を宇宙実証および実装計画立案につなぐ役割を担います。また、「きぼう」有償フライト枠組みを活用し、技術成果を軌道上実証・社会実装に結びつけることを目指します。

 

<健康・QOL・快適グループ群>

4.快適・スポーツG

 運動・身体活動を通じた健康維持・ストレス軽減技術の開発を目指します。健康・快適度を評価する指標として、宇宙滞在における清潔評価指標、QOL-Fitnessスコアの開発、また、開発した技術を実装した空気・空間清浄装置、宇宙トイレ・宇宙エアシャワー、宇宙eスポーツ・フィットネスサービスプログラム、宇宙ヨガ・リラクゼーションプログラムの開発を目指します。

5.人間工学・クロスモーダル・アートG

 人間の感覚機能や多感覚の統合(クロスモーダル)にかかる特性を活用し、XR(クロスリアリティ)技術を用いた宇宙酔いの訓練対策プログラムや、宇宙での狭隘な住空間におけるアートの視座を取り入れたリラクゼーションの試みなどを通して、快適な宇宙旅行のUX(ユーザーエクスペリエンス)のデザインを目指します。

6.健康・医学G

 民間人の宇宙滞在における健康維持を目的に、宇宙環境を模擬した細胞/組織培養実験から一般民間人を対象とした閉鎖環境下での研究まで、包括的に展開できる研究開発プラットフォームを構築しつつ、階層的に宇宙環境の影響を解明し、その改善策の創出を目指します。

 

<基盤技術グループ群>

7.統合実験プラットフォームG

 AI技術を駆使し、人の生理・心理状態を仮想的に再現する「生理・心理デジタルツイン」、民間宇宙ステーションや宇宙ホテルを模擬する「ヴァーチャルQOL空間」を統合した、次世代の「仮想実験環境」の開発を目指します。

8.解析・デバイスG

 外的環境(温度・湿度・O2/CO2・宇宙放射線など)と内的環境(体温・心拍・脳波・ホルモンなど生体データ)の両面を網羅的に計測・解析し、軽微な体調変化を早期検知して、健康リスクを未然に防ぐこと、また、微小重力や宇宙特有の制約条件に適応した計測技術・解析モデルの開発を目指します。

9.指標・ガイドラインG

 健康・快適性・QOLの評価指標と標準化ガイドラインを設計・検証・規格化を目指します。宇宙飛行士の健康・心理モニタリング、閉鎖環境知見、航空宇宙医学、国際機関文書を統合し、サービスレベル別に実装可能な枠組みの提示を目指します。

 

 これらの研究開発内容は、「快適・スポーツ」、「人間工学・クロスモーダル・アート」、「健康・医学」を核とした人間中心の研究アプローチで行い、それらを統合・実証する「システムデザイン技術」、「サービス・システムデザイン」、「宇宙実証」等の基盤技術を柱として開発を進めることで、単なる要素技術の寄せ集めではなく、システムアーキテクチャ設計に基づく「しくみのデザイン」によって、宇宙拠点と地球における生理・認知・行動データを統合的に活用する新たな有人宇宙滞在技術の創出を目指すことができます。このことにより、「宇宙QOL基盤」と「宇宙QOLアイテム群」の開発につなげ、民間宇宙ステーションや宇宙ホテルの事業者が構築する居住モジュール内部の体験空間に導入される独立・分散型の要素技術を、宇宙QOL基盤上に製品・サービスのアイテム群として供給することを目指します。

 

図2.宇宙QOL研究開発の成果となるQOLアイテム群の一例

 

 また、地球での実験データ、宇宙拠点での実証データ、ヴァーチャル環境でのシミュレーションデータを一体的に統合し、AI解析によって知見を抽出する統合データ解析プラットフォームの構築も目指します。これにより、現実環境と仮想環境を横断した新しい研究基盤を確立し、人の生理・認知・行動反応を多角的に再現・評価することを目指します。

 

(4)研究者のコメント

 宇宙空間における民間活動の拡大に向けて、これまでの「生命維持」を前提とした技術から、「一般民間人が快適に過ごすための環境と体験」を設計する新たな段階へと移行しています。

 早稲田大学は、システム工学および人間中心設計の知見を基盤として、人の認知・感覚・生理反応を統合的に捉え、宇宙における健康・快適・生活の質(QOL)を科学的に設計する研究に取り組んできました。本研究では、これまで宇宙飛行士を前提として構築されてきたECLSSを、「人がどう感じ、どのように快適に過ごすか」という人間中心の視点から、宇宙QOLを科学的に設計し、宇宙空間における快適性を拡張することを目指します。

 日本は、環境制御技術、健康管理技術、精緻なセンシング・解析技術、そしてきめ細やかなサービス設計に代表される高度なサービス産業において、世界的に高い競争力を有しています。これらの非宇宙分野で培われた技術と知見を宇宙分野へ体系的に接続し、人間中心の宇宙生活設計という新たな研究領域を切り拓く挑戦です。そのため、医学、工学、人間工学、スポーツ科学、宇宙実証、システム工学、行動経済学・経営工学・サービス工学、産業技術を横断する、国内でも類を見ない大規模かつ統合的な研究体制のもとで本研究を推進します。大学、研究機関、企業がそれぞれの強みを結集した圧倒的な研究体制により、基礎研究から宇宙実証、社会実装までを一体的に推進できる点が大きな特徴です。

 早稲田大学は、本研究開発拠点の代表機関として、日本の強みを結集した宇宙QOL・ECLSS研究の国際的な中核研究拠点を形成し、宇宙における人間中心の快適設計を世界に先駆けて実現を目指します。そして、宇宙で培われた技術と知見を地上社会へ還元することで、都市環境、建築、サービス産業など幅広い分野の革新にも貢献し、宇宙と地上の双方に新たな価値を創出してまいります。

 

(5)用語解説

 ※1 ECLSS(エクルス:Environmental Control and Life Support System/環境制御・生命維持システム)

 宇宙船や宇宙ステーションなどの閉鎖環境において、人が安全に生活するために必要な酸素の供給、水の再生、二酸化炭素の除去、温度・湿度・気圧の調整などを行い、居住環境を維持する基盤システムです。

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