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【はばたけラボ 先輩に聞く】 「取りあえずやってみる」 沖縄の自然と一体になってやきものを作る————陶芸家・紺野乃芙子さん

 未来世代がはばたくために何ができるかを考えるプロジェクト「はばたけラボ」。食べること、くらすこと、周りと関わること、ワクワクすること・・・。今のくらしや感覚・感性を見直していく連載シリーズ。出身地の大阪から沖縄の大学に進学し、そのまま現地で陶芸家として活動している紺野乃芙子さんに話を聞いた。

大阪梅田本店(大阪市)の沖縄フェアに参加した紺野乃芙子さん
大阪梅田本店(大阪市)の沖縄フェアに参加した紺野乃芙子さん

 

Q1 沖縄の大学に進学した理由は?

 高校にやきもの部があって、一応所属していたんです。進路担当の先生に「やきものをやりたい」って相談したら、関西近郊にも芸大はたくさんあるけれど、「お前は大阪じゃダメだ。沖縄ぐらいに行った方がいい」って。私も「ああ、そうか」と思って、滑り止めも受けずに受験しました。沖縄に実際に行ってみて、大阪にいた頃の生活エリアより都会で驚きました。水牛とかがウロウロしていると思っていたので(笑)

Q2 陶芸家になったきっかけは?

 学生の時、那覇にある泡盛の老舗居酒屋でアルバイトをしたことがきっかけで、ここまできたって感じです。友達に頼まれて仕方なく始めたのですが、そこの店長の幼なじみが、島武巳(しま・たけみ)さんっていう知る人ぞ知る陶芸家だったんです。ちょうど島武巳さんがヤンバルに新しく窯を作ることになり、「人を探してるみたいだから手伝ってきなよ」と店長に言われて。大学でも窯作りは学べないので、手伝いに行き、その時に焼きもみっちり教わりました。その後、店長が名護に山を買い、斜面の下に古民家がポツンとあるから窯と工房を作ろうって。作った窯を稼働させるために私が呼ばれて、卒業と同時に名護で陶芸を始めることになりました。全店舗分の食器を一人で作ることになり、量を作ること、割れにくいもの、使いやすいものを作る勉強を6、7年ほどさせてもらいました。ガス窯ではなく、年に5回、薪窯(まきがま)をたくんです。それが地獄でしたね。作ることよりも、まきを切って乾かしてっていう雑用の方が何倍もある感じで。大量の注文がくるけれど、誰にも頼れず、寝る時はいったんレンガを積んでふたをして、あったかい空気を逃がさないようにしていました。

 

紺野乃芙子の陶器
紺野乃芙子の陶器

 

Q3 今はどんな生活?

 基本的にほぼずっと山の中で仕事をしています。息抜きは那覇に納品に行くことくらい。趣味もなく仕事とプライベートの境目もないけれど、別にそれが嫌でもないです。自然と土は買わずに工事現場などで手に入れるようになったのですが、それこそドライブがてら、どこかで工事していないかパトロールしています(笑)。沖縄に来てつらいことはないですね。むしろ、サバイバル術をいっぱい覚えていくので、生きる力が増した感覚はめっちゃありました。もし都会で暮らしていたら対応できなかったことが、対応できるようになったっていうか。台風で停電なんて当たり前だし、1週間つかないことも。どうするか? 諦めます。あ、はいはいって(笑)。

 

紺野乃芙子の陶器
紺野乃芙子の陶器

 

Q4 最近チャレンジした作品は?

 土に返る器を作りたいというプロジェクトから、豚血を使った再生陶器を作っています。陶器って、ガラス化したら、もう土には返らないんです。だから、土器のように低温で作ろうと。でも土器って植木鉢のようなもので、水が漏れるし、器として使えたもんじゃないんです。そこで、豚血の撥水作用を利用して、水が漏れない使える器にしました。それこそ趣味で研究していたんです、秘密裏に。そこへコロナっていう、いい隠れみのができたので実現しました。誰も訪ねて来ないので、血だらけになっても大丈夫だっていう(笑)。大阪には18歳までしかいなかったので、沖縄で大人になったという感じですが、豚血を利用したことは外の視線だなって思います。

番外Q 「はばたけラボ」が問い掛けるテーマ、〝ヒトは「 」で人になる〞 あなたの考える「  」に入る言葉を教えてください。

 とりあえずやってみる、じゃないですかね。嫌だったら辞めてもいい、というくらいの軽い感覚で。そうやって流され流され、今の私があるんで(笑)。この仕事が自分に合う、合わないって頭でジャッジしたものって、正しくない気がしていて。アルバイトでも何でも、やりたくないと思ったことも、やってみたらすごく楽しいって意外とありますよね。頭で思っていた仕事と、実際の仕事は違う。現場に入ってみて分かることがいっぱいあります。想像とか妄想じゃなくて、現実を知れるっていうか。だから、「やってみる?」って聞かれたら、とりあえず「はい!」って答えるのがいいと思いますね。

 

紺野乃芙子の陶器。 デニムのような味わいの古布シリーズや紺野ブルーシリーズ。独特の青みは、土を掘った瞬間にだけ見られる、酸欠の状態の土の色をヒントにした。作った器は、お客様の使用に問題がないかを確認するためにも、自分で毎日使用している。
紺野乃芙子の陶器。
デニムのような味わいの古布シリーズや紺野ブルーシリーズ。独特の青みは、土を掘った瞬間にだけ見られる、酸欠の状態の土の色をヒントにした。作った器は、お客様の使用に問題がないかを確認するためにも、自分で毎日使用している。

 

紺野乃芙子(こんの・のぶこ)/1983年生まれ。大阪府出身。沖縄県在住。06年、沖縄県立芸術大学卒業。08年、沖縄県名護市で作陶を始める。現在はヤンバルの山中で活動している。
http://conerisya.com/index.html


#はばたけラボは、日々のくらしを通じて未来世代のはばたきを応援するプロジェクトです。誰もが幸せな100年未来をともに創りあげるために、食をはじめとした「くらし」を見つめ直す機会や、くらしの中に夢中になれる楽しさ、ワクワク感を実感できる体験を提供します。そのために、パートナー企業であるキッコーマン、クリナップ、クレハ、信州ハム、住友生命保険、全国農業協同組合連合会、日清オイリオグループ、雪印メグミルク、アートネイチャー、東京農業大学、グリーン・シップ、ヤンマーホールディングス、ハイセンスジャパンとともにさまざまな活動を行っています。

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