ITRI、Japan Drone 2025に出展 日本の高成長ドローン市場を狙い、日台サプライチェーン協力を深化
インフラ点検・物流向けに6大技術を披露
2025年6月4日
工業技術研究院(ITRI)
ITRI、Japan Drone 2025に出展 日本の高成長ドローン市場を狙い、日台サプライチェーン協力を深化
インフラ点検・物流向けに6大技術を披露
台湾工業技術研究院(以下:ITRI)は、日本最大のドローン展示会「Japan Drone 2025」に出展し、「台湾卓越ドローン海外ビジネスチャンス連盟(TEDIBOA)」が主導する台湾パビリオンにおいて、6つの自社開発による革新的なドローン技術を発表する。
地政学的リスクの高まりやグローバルなサプライチェーン再編の流れを受け、「非レッドサプライチェーン」の構築が国際産業戦略の重要課題となる中、ITRIは、インフラ点検や物流輸送などの高付加価値市場をターゲットに、台湾の技術とサプライチェーンの強みを活かし、日本市場への本格参入を図る。
展示期間中、ITRIは日本UAS産業振興協議会(JUIDA)および、日本をリードするドローンサービス開発企業、日本を代表するeVTOL(電動垂直離着陸機)および物流用ドローンの開発企業など、代表的な10社を訪問し、技術ライセンスの提供、共同研究開発の仕組み、アプリケーション連携などの協業機会を模索し、日台間のドローン自主サプライチェーンにおけるパートナーシップをさらに深化させた。
ITRIの劉文雄院長は、「ITRIは常に産業のニーズに即した技術開発を進め、TEDIBOAの海外展開を支援しています。これまでに、世界第2位のドローンメーカーParrot社や、日本最大のドローン企業ACSL社の台湾サプライチェーン構築を実現しました。また、日本ドローンコンソーシアムを通じて、非レッドサプライチェーンの構築にも取り組んでいます」と語った。今回の出展は、今年2月に参加した欧州最大級のドローン展示会「ドイツ・ドローンエキスポ」に続くもので、アジア地域で最も影響力を持つ展示会として注目されている。日本が自国内でのドローンサプライチェーンの確立に向けて積極的な政策を推進する中、ITRIの出展は台湾の技術力を世界に示す絶好の機会となるとともに、日台産業界の新たな協力の幕開けとして期待される。
画像1:ITRIは「Japan Drone」台湾パビリオンに出展し、長時間飛行可能な燃料電池ドローン、物流用ドローン、AIドローンフリートシステムなど、6つの先進技術を披露。台湾と日本の産業連携の新たな扉を開くことを目指している。写真は、ITRIの劉文雄院長(中央)と展示チームの集合写真。
日本インプレス総合研究所の報告によると、日本のドローン市場は2025年に38億4,000万米ドル、2028年には63億4,000万米ドルに達すると予測されており、年平均成長率は18.6%に上る見通しだ。特に物流配送やインフラ点検分野における需要は急増しており、2024年時点ですでに市場規模は7億米ドルに達している。こうした背景のもと、日本政府はドローンの自律的なサプライチェーン構築を政策的に推進しており、「非レッドサプライチェーン」の形成に向けて1,000億円を超える関連予算を計上し、ドローン産業の発展を国家戦略として位置づける姿勢を明確にしている。ITRIは、台湾経済部産業技術司の支援のもと、産業界のニーズに応じたドローンのキーテクノロジー自立化および高付加価値化の取り組みを強化する。本展示では、機体応用とキーモジュールを含む6つの技術成果を発表する。
画像2:「Japan Drone」台湾パビリオンにて本日開幕式が開催され、ITRIは6つの革新的な技術を紹介した。写真左より、台湾卓越ドローン海外ビジネスチャンス連盟 会長・胡開宏氏、経済部航空宇宙産業発展推進チーム 主任・簡志維氏、台北駐日経済文化代表処 大使・李逸洋氏、ITRI業務発展部 部長・傅如彬氏、ITRI機械・メカトロニクス研究所 グループ長・陳文泉氏。
機体応用の分野では、ITRIが国際競争力を有する3種類のドローン技術を披露し、インフラ点検、物流、特殊任務などの高付加価値ニーズに対応する。
まず、「長時間飛行型燃料電池ドローン」は、水素燃料電池を搭載することで、リチウム電池に比べて航続時間の制約を大きく打破する。最大5kgのペイロードで181分の飛行を実現し、商用ドローンとしては主流モデルの約3倍の性能を誇る。山岳地帯での捜索救助、長距離点検、緊急医療物資の輸送といった用途に適しており、モジュール式の設計によってミッションに応じた迅速な構成変更も可能だ。
次に、「物流ドローン」は、離島や山間部といった配送インフラが限定される地域に対応するために設計されており、高効率モーターとモジュール型ペイロードを組み合わせた構造で、高い飛行安定性と航続性能を両立する。すでに日本のドローン企業と連携し、神戸工業団地における食品配送のデモンストレーションを成功裏に実施している。
さらに、「AIドローンフリートシステム」は、スマート航路の自動生成、リアルタイム映像伝送、AIによる魚群識別機能を統合し、複数機による協調飛行を支援する。遠洋でのスマート漁場探索、橋梁の巡回点検、倉庫内の自律巡回などにすでに活用されており、特に漁場探索では、従来の高コスト・高リスクなヘリコプターによる漁探作業に代わる手段として注目され、探索効率は従来比3倍以上を達成している。
モジュール技術の分野では、ITRIは3つの独自開発による中核技術を展示し、機体性能の向上と多様な使用環境への対応力を強化する。
まず、「動力モジュール(モーターおよびESC)」は、革新的なモーターおよびプロペラ設計に加え、センサーレス制御技術と空冷式冷却システムを採用する。市販の一般的な動力モジュールと比較して、最大推力を約10%向上させるとともに、飛行時間の延長および搭載能力の強化を実現している。
次に、「冗長型フライトコントローラー」は、二重化された制御システムを備え、ドローンの飛行中における“第二の頭脳”として機能する。厳しい気象条件や長時間任務においても高い安定性とフェールセーフ性能を発揮し、運用信頼性を大幅に向上させる。
さらに、「超小型フライトコントロールボード」は、先進的なアルゴリズムと高速応答制御機能を統合する。倉庫内での巡回、農業分野での点検、災害後の捜索救助といった高機動性を求められるシーンにおいて、小型機体への組み込みに最適なソリューションとなっている。
今回、ITRIは台湾国内の企業と連携し、訪問団を編成して展示会での交流成果をさらに発展させ、商業用ドローンの開発・製造を手がける企業をはじめ、ドローンソリューションの開発やドローン自動化プラットフォームの構築に特化したソフトウェア・ハードウェア企業など、複数の代表的な企業を訪問し、具体的な連携案について積極的に協議を行った。これにより、日台間におけるドローン自主サプライチェーンの協力をさらに深め、強靭かつ自立したアジア太平洋地域のドローン産業ネットワークの構築を目指している。
画像3:「Japan Drone」台湾パビリオン初日、台北駐日経済文化代表処の李逸洋大使(左から4人目)が、工業技術研究院(ITRI)の「物流用ドローン」を視察。本技術は、離島や山間部など配送困難地域向けに開発されたもので、高効率モーターとモジュール化されたペイロード設計を統合し、高い飛行安定性と長時間飛行を実現。多様な物資輸送ニーズに柔軟に対応可能で、日本のドローン企業Tomplaと連携し、神戸工業団地での食料配送デモも完了している。
ITRIは、「2035技術戦略とビジョン」を策定し、「スマートライフ」分野におけるスマートモビリティ技術を中核に据え、国際的な連携を加速している。今回の出展を契機に、台湾と日本の技術・市場資源の融合をさらに強化し、台湾産業の国際展開に向けた布石を打つ構えだ。


