最高評価事業に支援金300万 AI活用構想競う成果発表会 アクシス創業支援プログラム
人工知能(AI)に関する創出事業アイデアの検証成果を競う催しが6月13日、東京都内で開かれ、成果を発表した7組のうち、自律的に動く「AI エージェント」の透明性・安全性を高める事業の取り組み成果を報告したAIGYM(エーアイジム、東京都豊島区)の神田良輝代表取締役が最も高い評価を受け、優勝賞金300万円を獲得した。神田さんは「賞金は事業の宣伝活動や人材確保などの資金として有効に活用していきたい」と優勝を喜んだ。
この日の催しは、コンサルタント人材紹介業のアクシスコンサルティング(東京都千代田区)が、AI研究を行う東京大「松尾・岩澤研究室」の協力を得て、コンサルタントらの起業を伴走支援する創業プログラムの一環。支援希望者46組のうち、絞り込まれた8組が今年1月から半年間、起業支援家や「松尾・岩澤研究室」の学生らと議論を重ね、各自の事業アイデアの独自性やAI活用の有効性、収益性、実現可能性などを磨き上げた、という。
最終的には、1組を除き、起業支援家やAI専門家と意見を交わす中で自身の事業内容・構想に自信を得た7組が、「松尾・岩澤研究室」の松尾豊・東京大教授▽加治慶光・シナモン会長▽白川智樹・MINT ゼネラルパートナー▽山尾幸弘・アクシスコンサルティング代表取締役会長―の審査員4人を前に、その成果を発表した。

7組の発表を審査した(前列左から)松尾豊・東京大教授、加治慶光・シナモン会長、白川智樹・MINTゼネラルパートナー、山尾幸弘・アクシスコンサルティング代表取締役会長
審査員の高い評価を得て優勝した神田良輝代表取締役は3月にAIGYMを創業、AIスキルを向上させる研修事業やAIサービスのコンサル事業を展開してきた。

事業内容を説明するAIGYMの神田良輝代表取締役=東京都千代田区の日比谷国際ビル、2026年6月13日
発表の中で神田さんはまず、 AI エージェントが実際何をしているかを“事後検証”するシステムの不在を強調し、今回事業化に取り組んでいるのは「企業がAIを安心して使うためのAIエージェントの稼働可視化や成果物品質の自動検証などを一体で行う基盤システム」と説明した。
その上でこのシステムが「AIエージェントがどのAIツール(コパイロット クロード、カーソルなど)をどのように使っているかを可視化したり、AI成果物を組織で無制限に使わせない品質保証システムを組み入れたり、事後検証のため必要なログを記録保存したりできる」技術的な仕組を詳しく述べた。売り上げは「今後増加が見込まれる企業の老朽ITシステムの更改機会を捉え、5年後に10億円を目指す」とした。
受賞後のあいさつでは「(発表の準備で)昨日から寝ていません。3人目が昨年生まれたばかりの小さな娘が3人いる中で、会社を辞めて起業したので、絶対に失敗したくはない。AIがものすごい勢いで発展する中、私がやろうとしていることはAIがやってしまうかもしれないと思うこともありました。会社は社長の私1人なので、自分は一体何をしているのか不安になるほど、孤独でした」と創業直後を思い出して涙ぐんでいた。
時には起業支援家とけんかもしながら切磋琢磨(せっさたくま)して事業を磨き上げた“熱い半年間”にも触れ「大人になっても“魂と魂の磨き合い”ができたことは素晴らしい経験でした。もちろん優勝はうれしいですが、プログラムでの人との出会いに感謝しています」と語った。

アクシスコンサルティング賞を受賞したwhymeの鈴木隆之代表取締役
40時間の事業推進サポートが受けられる準優勝のアクシスコンサルティング賞には、AIを活用して複雑な事業承継事業を効率化するサービスに取り組むwhyme(ファイミー、東京都港区)の鈴木隆之代表取締役が輝いた。
鈴木さんは大手コンサル会社を退職し、3年前に同社を創業。発表では「仲介料目当てのM&A(企業の買収合併)が事業承継業界で横行している」とM&A業界の体質を指弾し、この業界の課題を「AI活用による事業承継事業の効率化で解決したい」と述べた。
受賞後のあいさつでは「(プログラムでの体験は)自分の血肉になった」と神田さん同様に目頭を熱くしながら語った。
4人の審査員は一人一人講評を述べ、発表者全員の健闘をたたえた。松尾東京大教授は「受賞者以外の皆さんの事業にも面白いものがたくさんありました。一番大事なのは、誰にも負けない事業のポイント・特長がどこにあるかの見極めです。もう少しその点を掘り下げるようにしてください」と話した。

審査後、講評を述べる松尾豊・東京大教授
シナモン会長の加治さんは「アイデアを研ぎ澄ますことだけに時間を使うのではなく、広い世界の中で自分の事業を位置付けてほしい」と述べた上で、映画『ニュー・シネマ・パラダイス』中のセリフ「行くんだ、お前は若い。もうお前と話したくない、お前の“うわさ”が聞きたい」を引用し、今後の発表者の飛躍に期待した。
MINTゼネラルパートナーの白川さんは「皆さんの経験を踏まえてAIを活用すると、いろいろ世の中を変えられることができると感じました。今回の半年間の創業プログラムは今日終わりますが、つらい時にも励まし合えるように、このプログラムでの出会い、つながりを今後も大切にしてください」と話した。

前列の発表者らを囲んで記念撮影する審査員や関係者
アクシスコンサルティングの山尾会長は「いずれの事業・アイデアも甲乙つけがたく審査に苦労しました。今後はその事業アイデアが他人にまねられないか、まねられた時どうするかを常に考え続けてください。今回のプログラムは当社の初めての試みです。今回の発表者はかけがえのない“第1期生”になります。プログラムは次回2回目もありますので、1期生の皆さんには、先輩、仲間として次回以降のプログラムに関わっていただけたら光栄です」と述べた。

















