物価高・売上減少・人件費増加と重なる金利上昇リスクに注意 大同生命保険の中小企業調査、借入金利上昇に4割が無対策
大同生命保険(大阪市)は全国の中小企業経営者を対象に、景況感に加えさまざまなテーマを設定したアンケート調査「大同生命サーベイ」を2015年10月から毎月実施している。2026年6月度のテーマは「資金繰り」。全国の5139社の中小企業経営者を対象に、6月1日~29日にかけて、訪問、またはZoom面談で調査を行った
全体として景況感については、「現在の業況」(業況DI)がマイナス14.79ポイント(前月差マイナス2.4ポイント)と6カ月連続で悪化。「将来の見通し」(将来DI)はマイナス2.6ポイント(前月差プラス3.3ポイント)と持ち直しつつある。
■半年後の資金繰り、約半数が「不安」
まず、「直近1年間の借入金の残高状況」を聞くと、借入金残高状況が「増加している」(14%)企業は、同テーマの前回調査(2025年5月)と比べ若干回答割合が高くなった。半年前と比較して資金繰りの状況が改善した企業は12%だった。
「半年後の資金繰りへの不安」については、「非常に不安」(10%)と「やや不安」(37%)を合わせ、47%が「不安がある」と回答。今後1年間の資金調達意向は、約4割の企業で「意向あり」だった。「資金繰りに影響を与えている要因」の上位3位は、「原材料・仕入価格の上昇」(51%)、「売上減少」(29%)、「人件費の増加」(21%)だった。
現在、「借入がある」企業は約7割(71%)。主な資金調達手段は、「地銀・第二地銀」が57%と最も多く、次いで「信金・信組」(46%)。従業員規模が大きくなるほど「地銀・第二地銀」の回答割合が高く、小さくなるほど「個人(経営者本人・親族等)」の回答割合が高かった。
借入金利上昇による影響について、金利上昇単独では「大きな影響はない」との回答が35%だったが、約4割の企業が「物価高等の要因が重なれば大きな影響がある」と回答した(複数回答)。一方で、借入金利上昇への対応については、「特に対応はしない」が38%と最多。以下、「借入額を抑える」(22%)、「製品・サービス価格を見直す」(16%)と続いた。

■金融機関との情報共有などに取り組み
経営者たちからは、「材料不足・物価高で利益を圧迫され、廃業している同業者が多い。コロナ禍の借入金の借り換えを勧められるが、今後、借入金利が上がることが予想されるため不安」(建設業・千葉県)、「日本経済の全体の成長見通しが立たないため融資する側も慎重になっていると感じる。利息分だけでも国が支援してくれたら余裕がもてる企業はたくさんあるのでは」(卸売業・北海道)といった不安や課題が寄せられた。
一方で、「借り入れが必要ではない時でも、金融機関から融資の勧誘があれば応じている。余分なコストのようにも思えるが、その方が金融機関との関係が深まり、企業側が融資してほしい時に応じてくれる」(小売業・愛知県)、「中期経営計画を複数の金融機関と情報共有し、それぞれ特長のある融資条件を設定し事業の発展をサポートしてもらっている」(卸売業・大阪府)、「税理士と定期的に帳簿をチェックし自社のキャッシュフローを常に把握しておくことが大事」(サービス業・奈良県)などの取り組みも寄せられた。
■専門家、「複数の金利上昇リスクに注意」
今回の調査では、半年後の資金繰りについて約半数の中小企業が不安を抱いている実態が浮かび上がった。資金繰りに影響を与えている要因の上位は、「原材料・仕入価格の上昇」「売上減少」「人件費の増加」。調査を監修した神戸大学経済経営研究所の柴本昌彦教授は、中小企業の資金繰りは、単一の要因ではなく、仕入価格や人件費の上昇、売上の伸び悩みといった複数の要因が重なる形で圧迫されていると指摘する。
借入金利上昇への対応として「特に対応はしない」とする回答が最も多かった点にも着目。長期間にわたり低金利環境が続いてきたことで、金利上昇を経営上のリスクとして十分に織り込む意識が弱まっている可能性があるとする。柴本教授は、物価高・売上減少・人件費増加といった要因が重なる局面では、金利負担の増加が資金繰りをさらに圧迫する可能性があると警鐘を鳴らす。
柴本教授は、「金利上昇だけを切り離して考えるのではなく、複数の負担が同時に生じた場合の資金繰りをあらかじめ確認しておくことが重要。入出金を見える化し、売上減少・コスト増・金利上昇が重なった場合の資金繰りを想定しておくことが求められます。あわせて、コスト上昇の根拠を踏まえた価格見直し、固定費や運転資金の点検、金融機関との継続的な対話を進めることが、変化する経営環境の中で事業を安定的に続けるための基礎になると考えられます」とアドバイスしている。
■「担保・保証なしによる融資」の整備促進を
また、今回の調査では、「借入時の担保・保証」について約半数近くが「代表者等が個人保証」(46%)と回答。「担保・保証なし(事業の安定性・将来性を評価等)」と回答した企業は18%にとどまった。従業員規模が小さいほど「代表者等が個人保証」と回答した企業の割合が高いことも分かった。
経営者個人の連帯保証なしで融資を受けられる「信用保証制度」については、全体の40%が「制度は知らず、活用もしていない」と回答した。「信用保証制度」では、一定の条件を満たせば、信用保証協会の保証付き融資で「経営者保証なし」を選択できる。保証料は少し上がるが、経営者個人の連帯保証を付けずに融資を受けることができ、万一の際も自宅など個人資産への影響を抑えられる、事業承継や新たな投資への挑戦がしやすくなるといったメリットがある。
柴本教授は、「中小企業が資金調達に躊躇する要因が『代表者の個人保証』。今後、積極的な資金調達を促進するためには、事業の安定性・将来性を評価し、担保・保証なしによる融資が整備されていくことが重要です」と指摘している。

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