クリエーターの理想空間を実現 コナミグループの次世代研究開発拠点が完成
ゲーム大手コナミグループ(東京都中央区)の次世代研究開発拠点「コナミクリエイティブフロント東京ベイ」がこのほど、東京都江東区に完成し、10月23日に竣工(しゅんこう)式が行われた。同グループCEOの東尾公彦社長は「クリエーターの才能を最大限発揮してもらう“クリエーターのクリエーターによるクリエーターのための研究開発施設”が完成した。ここを起点に素晴らしいコンテンツ、サービスを次々に創出して、コナミグループのさらなる発展、成長を目指す」と決意を新たにした。10月末に開業予定で、コナミのゲームクリエーターら最大約2千人の従業員が働く巨大オフィスが稼働する。
コナミクリエイティブフロント東京ベイは地上8階、地下1階の楕円(だえん)形の建物で、延べ床面積5万6千平方メートル余りの広々とした空間を誇る。その特徴ある楕円の外観から、近接する国内最大級の国際展示場・東京ビッグサイトと並んで、地域のランドマーク的な存在になりそうだ。
竣工式の神事にはコナミグループの東尾社長のほか、コナミクリエイティブフロント東京ベイで最先端のゲーム開発を担うコナミデジタルエンタテインメント(東京都中央区)の早川英樹社長をはじめとするコナミグループ中核会社の代表や日建設計(東京都千代田区)の大松敦社長、大成建設(東京都新宿区)の相川善郎社長など関係者20人余りが参加した。

神事に臨むコナミグループの東尾公彦社長(中央)ら=東京都江東区、2025年10月23日
神事後、参加者は完成したコナミクリエイティブフロント東京ベイの各階をじっくり視察した。東尾社長は「実際にデスクや椅子などのオフィス家具がそろったフロアや植栽が整えられた屋上の庭園などを見たのは今日が初めて。素晴らしい施設が完成したと思う。海やゲートブリッジ、東京ビッグサイトが見えるロケーションも素晴らしい。完成はとても感慨深いが、同時に経営者としては身の引き締まる思いだ」とグループのさらなる成長をけん引する重要施設の無事完成を喜んだ。
また「この施設はコナミグループのクリエーターが日本一の研究開発施設を造るという意気込みで構想を練り上げて完成した。持てる力を存分に発揮できるようクリエーターの意見を最大限取り入れた。さらに次代を担う若い世代、クリエーターの卵の皆さんがコナミグループに入社したいと思っていただけるような魅力ある施設にもなったと思う」と思い切った“人的投資”の今後の成果に期待した。

コナミグループのさらなる成長を目指す東尾公彦社長
コナミデジタルエンタテインメントの早川社長は「5年前からおよそ1500人の社内のクリエーターを巻き込んで、どういうオフィスにしたらクリエイティビティー(創造性、独創性)が高まるかについて議論を重ねてきた。その思いが具体的な形になったと実感する。日本から世界に向けて商品、サービスを送り出すにふさわしい建物であり、クリエーターに存分にクリエイティビティを発揮していただき、できれば新しい、いままで誰も見たことのない商品、サービスを生み出してもらいたい」と話した。
自身がクリエーターでもあった経験から、新しいゲームデザインやイノベーション(革新的な商品、サービス)が生まれるきっかけ、環境を熟知している早川社長は新しい発想を生む望ましい環境についても言及。「最後は人間がイノベーションを生み出す。人と人の交流、コミュニケーションからいろんなアイデアやイノベーションが生まれる。会社には部署が違うと動きが取れないことがよくあるが、例えば今回完成した施設の緑豊かな屋上の庭園は、部署の違うクリエーターがそれぞれの発想、企画について気軽に話し合える空間になるはずだ」と述べた。

自由な発想を育むことを狙いにした屋上の庭園
設計段階からコナミのクリエーター陣が全面参画したコナミクリエイティブフロント東京ベイの設計を担当した日建設計の杉山俊一執行役員は、5年前から重ねてきたクリエーター陣との議論をこう振り返った。
「コナミの中にはゲーム内の空間デザイナーの専門家もいた。さまざまなクリエーターの皆さまとお互いプロ同士の意見交換を重ねる中で、ゲームソフト開発などクリエイティブな成果を生み出す理想の空間として、クリエーターの方はシームレスとチェンジャブルの2つのことを求めていることが分かった。シームレスはそれぞれのクリエーターが網の目のように継ぎ目なく縦横無尽につながりあう関係性を、チェンジャブルはいろいろなチームが縦横無尽にやりやすい空間をつくることや変幻自在性を意味する。この2つのことを具現化するために、一般的なオフィスビルとはまったく違う設計手法を採用した」

海を望める開放的なダイニング
そのシームレス、チェンジャブルな空間は、発想の異なる多様なクリエーターの偶発的な出会いを促進する、全階を高低差の少ない緩やかな楕円状のらせん通路で移動できる工夫や、明るい日差しが差し込む天窓まで吹き抜けになっている中央部の各フロアを見渡せる視界の広さ、リラックスしながらアイデアを深められそうな緑豊かな「屋上庭園」、大きなガラス越しに海を望みながら食事ができる開放的なダイニングなどで表現している。
設計だけでなく建設工事もさまざまな工夫と高度な技術が施され、緻密な施工計画の下に進められたという。施工を担当した大成建設東京支店のコナミクリエイティブフロント東京ベイ新築工事統括所長・市塚貴浩さんは「これだけの大規模な建物でシームレスな空間や楕円の形を作り上げることは一筋縄ではいかない挑戦だった。らせん状に上がっていく建物の構造から資材の運搬にも工夫が必要だった。設計会社さんはもちろん、鉄骨業者さんをはじめとした協力業者の皆さんと日々考えながら慎重に工事を進めていった」と難しい工事を振り返った。

通路に飾られたコナミの人気ゲームキャラクター

人気ゲーム「桃太郎電鉄」のキャラクタータイルアート
コナミクリエイティブフロント東京ベイの正面入り口から延びる広いメイン通路の床には、コナミの人気ゲームのキャラクターを描いた正方形のタイルアートが所々に埋め込まれている。これらのキャラクタータイルアートの上を通り過ぎるクリエーターが、コナミの歴代名キャラクターと肩を並べる新たな人気ゲームキャラクターを生み出す日はそう遠くないかもしれない。
















