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【がんを生きる緩和ケア医・大橋洋平「足し算命」】空港で野宿

【がんを生きる緩和ケア医・大橋洋平「足し算命」】空港で野宿

2025年4月28日=2,244
*がんの転移を知った2019年4月8日から起算


下見で訪れた 午前 0時を過ぎた中部国際空港・2階到着ロビー内カウンター、もちろん無人

下見で訪れた 午前 0時を過ぎた中部国際空港・2階到着ロビー内カウンター、もちろん無人


 4月初旬に、北海道を訪ねた。専属秘書(※妻のあかねさん)も同行して。とあるイベントに参加したのだが、道中ちょこっと観光もできて、充実した日・月・火曜の2泊3日だった。だが実は土曜も前泊していて、都合3泊している。この度はその前泊についてつづります。

 目的地は富良野市である。わが地元は三重県北に位置する桑名ゆえに、出発は愛知県常滑市・中部国際空港。通称セントレア空港だ。セントレアから旭川空港へは、以前は直行定期便があったが、今は無い。医者だけしていた時、学会で旭川空港に降り立ったことがよみがえる。当時セントレア空港はまだ無く、小牧空港と呼んでいた名古屋空港(現・県営名古屋空港)から飛び立った。あれから30年はたっていようか。

 従って新千歳空港を経由して、目的地・富良野市に向かう計画を立てた。必然的に早めのフライトを選ぶこととなる。午前7時50分の便だ。地元最寄り駅を始発で出発すれば、午前7時ごろにはセントレア空港に到着できる。

▽余裕がない

 だが時間的余裕がないのが気がかりだ。どこかへ向かう際、少なくとも1時間前には到着しているのがわれわれのお決まり行動だ。しかも相手は空港。年に一度利用するぐらいの頻度で慣れてない。となれば2時間前には到着、手続きも済ませ荷物も預けて、1時間前つまり6:50には搭乗入り口付近でゆったりと腰かけたかった。このままでは、それがかなわない。

 そこで空港付近ホテルで前泊することにした。ただホテルへの問い合わせを始めた頃には、どこも予約がいっぱいだった。春休みの週末土曜、おまけにこの時期わが地元・三重県では自動車の最高位レースが開かれていた。セントレアと鈴鹿で離れているが。

 う~んじゃあ前泊しなくても、ぎりぎり何とか間に合うか。

 ところが不安が襲ってくる。もし電車が故障や事故などで遅れたら_。ここで名案を思いついた。空港って24時間営業してるんじゃないか、ならばどこかで座りながら待機することもできそう。友人に尋ねると諭された。

 「セントレアは多分24時間やってないよ、救急病院やないんやから」

 なるほど病院勤め者の発想だ。とは言えホームページには深夜のフライトは無いけれど24時間開放しているスペースが一部あるように書かれている。この手で行こう、でも当日夜に締め出されたら_。

▽下見

 専属秘書とも相談して、ある事を実行した。それは「下見」。決行は1週前の日曜とした。日曜夜10時過ぎ空港に着き、2階到着ロビーへ進入した。ガラガラだ。余裕で座席2人分を確保できた。あたりを見渡す。な、なんと、寝袋に包まっている人が居た。きっと泊まる予定だろう。その後ひとりふたり同士が増え、日付が月曜に変わる頃、われわれの他に3~4人ほどになった。これでひと安心。

ガラガラの同空港・2階到着ロビー、こちらも下見時

 そして翌土曜日、いよいよ本番だ。下見と同時刻ごろ2階にある到着ロビー入りした。ところが先週とはどこか光景が違う。すでに10人以上の姿が見える。何とか2人分の座席を確保した時、下見とは曜日が異なることに気がついた。やっぱり日曜よりは土曜の夜の方が多いのか。さらに今日はF1日本グランプリ鈴鹿で予選から決勝にかけての夜だった。彼らも宿泊ホテルが見つからなかったのかも。

▽まあまあやれます

 いずれにせよ座ったままで1泊した。そばには飲料用自動販売機もあればトイレもある。少し足を延ばせば空港内スペースにコンビニまである、2軒も。

 「座ったままで大変だったでしょ、横にもなれずに」

 なんて思われた方、お気遣い痛み入ります。ただ私は胃の手術後、消化液が逆流するようになったため、どこにいようと真っすぐには眠ることができない。座ったままでも、まあまあやれます。けれど疲れなかったと言えば大ウソになります。現にその後は月曜まで眠くて眠くて。だからもし次あれば、その時は空港付近ホテルを必ず予約するぞ! 一方、同行者から、

 「今度は十分横になれるスペースを見つけて、またここに泊まりたい」

 勧められた手段でないのはもちろん承知の上、24時間開放されている空港のロビーはパッパと動けない私には大いに助かります。ありがとぉ~セントレア。それにしても恐るべし、専属秘書。

 わがユーチューブらいぶ配信、こちらもしぶとく続けてます。チャンネル名「足し算命・大橋洋平の間」。配信日時が不定期なためご視聴しづらいとは察しますが、どこかでお気づきの際にはお付き合いくださいな。ご登録も大歓迎。
応援してもらえると生きる力になります。引き続きごひいきのほどなにとぞよろしくお願い申し上げまぁす。

(発信中、フェイスブックおよびYouTubeチャンネル「足し算命・大橋洋平の間」)


おおはし・ようへい 1963年、三重県生まれ。三重大学医学部卒。JA愛知厚生連 海南病院(愛知県弥富市)緩和ケア病棟の非常勤医師。稀少がん・ジストとの闘病を語る投稿が、2018年12月に朝日新聞の読者「声」欄に掲載され、全てのがん患者に「しぶとく生きて!」とエールを送った。これをきっかけに2019年8月『緩和ケア医が、がんになって』(双葉社)、2020年9月「がんを生きる緩和ケア医が答える 命の質問58」(双葉社)、2021年10月「緩和ケア医 がんと生きる40の言葉」(双葉社)、2022年11月「緩和ケア医 がんを生きる31の奇跡」(双葉社)を出版。その率直な語り口が共感を呼んでいる。


このコーナーではがん闘病中の大橋先生が、日々の生活の中で思ったことを、気ままにつづっていきます。随時更新。

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