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【がんを生きる緩和ケア医・大橋洋平「足し算命」】やりきらんでええんよ

【がんを生きる緩和ケア医・大橋洋平「足し算命」】やりきらんでええんよ

「やりきる」
ステキな言葉だ。食べきる、を筆頭に「〇〇きる」とは、最後までし終える、残すところなくする、完全にすることを意味する表現であり、この行動は最高である。私は大いに憧れる。

満開の木曽岬コスモス畑

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▽生ききる

わたくしが20年あまり勤めてきた緩和ケアの領域ではこんなことも話題に上がる。それは、「生ききる」。がん患者であっても、終末期であっても、例えばあなたの人生を生ききる。あなたらしく生ききってほしい、などと。
周りのがん仲間にも、
「オレは己の人生を生ききるぞ」
また愛する身内を亡くした家族の中には、
「あの人らしく精いっぱい、生ききりました」
このように言えた家族は、すでにその悲しみ・嘆き、すなわち悲嘆は和らげられている。だからそんな風に語ることができた、できる人は素晴らしい人生を過ごしていると私は思う。

でもそんな人ばかりやない、そんな時ばっかりやない。
だったら、やりきらなくてええんやないか。こう考えることで、私は随分と楽に生きられるようになった。気ぃ楽に、心地よく生きられている。

▽できないことだらけ

私事で恐縮だが、がん治療中の私には「○○きる」はできないことだらけだ。ほぼ全摘に近い胃切除の後遺症で「食べきる」ことはできない。一回当たりに食べられる量は今でも半人前から3分の1人前で食べ残すことは当たり前である。現在受けている抗がん剤の副作用で程度の差はあれども足の裏には常に痛みが生じているため、「走りきる」はおろか走ることすらできない。そして何とか病状の悪化を持ちこたえてくれているこの抗がん剤。血液検査の結果から最近では腎臓の働きがだんだんと下がってきた。効果が出ているにもかかわらず、副作用のために抗がん剤治療を止めざるを得ない時がやってくるのか。そう遠くない将来に。がん治療もやりきれへん。

コスモスたちに近づきました

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▽生きてるだけで十分

すなわち、やりきるなんて到底できっこない。最後までし終えない、やり残す、不完全にすることが日常の生活を送っている。だから「生ききる」などオレには考えられない。
生ききろうなんて思ってない。生ききらなくてええやん、生き残したってええよと思っている。今日を、今この時を生きてるだけで十分や。たとえ不十分な生き方であっても。
がん患者に限らず、もしも生きづらさを抱えている人がいたならば、あなたに届けたい。「やりきらんでええんよ」

ところでユーチューブらいぶ配信、しぶとく続けてます。チャンネル名「足し算命・大橋洋平の間」。配信日時が不定期なためご視聴しづらいとは察しますが、どこかでお気づきの際にはお付き合いくださいな。ご登録も大歓迎。
応援してもらえると、わたくし生きる力になります。引き続きごひいきのほど何とぞよろしくお願い申し上げまぁす。

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