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広島の都心を皆でデザインする~ 広島都心会議の可能性 沼尾波子 東洋大学教授 連載「よんななエコノミー」 

 昨年、数年ぶりに訪れた広島市では、街の中心部で再開発が相次いでいた。原爆投下で壊滅した中心部は、復興都市計画の下で再建され、80年を経て更新期を迎えている。ビルの建て替えや公共空間の再整備が同時多発的に進む現在、広島の中心部をどのように再生し、中国地方最大の都市として、魅力を創出し続けていくのか。

 そこで立ち上がったのが「広島都心会議」である。広島駅周辺から市内最大の商業・業務中心地である紙屋町・八丁堀地区一帯までの「都心」地域の賑(にぎ)わいと魅力創出を考えようと、さまざまな地域の担い手が対話を重ね、認識の共有を図る。

広島都心会議のアクションミーティング=広島都心会議提供

 広島都心会議の最大の魅力は、「対話」を起点に官民をつなぎ、都心の将来像を共有するプラットフォームとして機能している点にある。2021年の発足以来、地元企業や支店企業、金融機関、メディアなど多様な主体が正会員・賛助会員として参画し、広島県・広島市もオブザーバーとして加わる体制を築いている。経済界が行政と一体となりながらも、上意下達ではなく、丁寧なヒアリングと意見交換を重ねることで信頼関係を醸成している点が興味深い。

 立ち上げ当初は、各地のエリアマネジメント団体との対話に時間をかけ、「何を求めているのか」を聞き取ることから始めたという。急がず、まずは関係性を築く。そのプロセス自体が、この組織の基盤を形づくっている。

 掲げる将来像は「環瀬戸内の文化経済首都『広島』」。広島都心を瀬戸内文化経済圏の中心として位置づけ、イノベーション、ローカリズム、リバブルの三つの視点から都心力を高めることを宣言している。単なる経済的成長ではなく、暮らしやすさや地域文化の厚みを含んだ都市像を描いている点に、ビジョンの独自性がある。

 活動は理念にとどまらない。各地のエリアマネジメント団体が一堂に会する「エリマネミーティング」や、都心全体で同時多発的に社会実験を行う「CITY SCAPE」など、横断的な連携を生み出しながら、都市空間の使い方を試行錯誤する。

 

 さらに若手社員による「東千田塾」や、新入社員を対象とした異業種交流の場づくりを通じ、次世代の担い手を育成している点も注目に値する。大企業の広島支店に転勤で赴任した若手社員にとって、地域で異業種の人たちと語る機会が生まれることは、孤立を防ぎ、広島ファンを創出することにもつながるという。都市の未来はハード整備だけではなく、人材とネットワークによって形づくられるという認識が貫かれている。

企業の若手社員がアクティブに語り合う「東千田塾」の様子=広島都心会議提供

 多様な主体が「仲間」としてまちづくりに関わる土壌を育むことが、広島の都心を皆でデザインする力になっている。大都市における企業・地域・行政の新しいネットワークの形である。
(東洋大学教授 沼尾波子)

【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.9からの転載】

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