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ロッカーで売り切る 取り組み 野々村真希 農学博士 連載「口福の源」

 野菜の無人販売などで見かけるロッカー型自動販売機が、近年、売れ残りの食品ロスの削減に活用され始めている。

 食品小売店では、来客数の予想が難しいとか、販売機会ロスを防ぐために閉店間際にも商品棚に品ぞろえを確保しておきたいとかいった理由から、閉店時に一定量の商品の売れ残りが発生する場合が多い。

 これまでは、開店時間内の値引きでできるだけ売り切るということが行われてきたが、2024年ころから、閉店後に店外の近隣のロッカー型自動販売機に売れ残りを入れて売り切るというスタイルが、パンを中心にぽつりぽつりと見られるようになってきたのだ。

 東京都杉並区にあるパン屋「藤の木」のように、個人店が個別の取り組みとして実施する場合もあれば、横浜市のように自治体のプロジェクトとして実施される場合もあるし、CiPPo株式会社の事業「Wakeatte」のように、民間企業主導で行われる場合もある。

 パン屋「藤の木」のケースはこの店がロッカーを専有しているが、横浜市の事例はプロジェクトに参加する複数のパン屋がロッカーをシェアする形だ。2025年6月時点では、市営地下鉄関内駅構内、横浜銀行アイスアリーナなど横浜市内8カ所にロッカーが設置されていて、パン屋は営業時間終了後に近くのロッカーに商品を入れ、販売する。

 商品の管理はパン屋、ロッカーのメンテナンスはロッカー設置者の株式会社アルファロッカーシステム、設置場所の管理はロッカー設置場所の提供者が行う。市は、パン屋、ロッカー設置者、設置場所提供者をマッチングする役割を担う。運営に必要なコストは売り上げから賄われている。

 売れ残りのロッカー販売は、通常価格より少し安くパンが買えるところがまずうれしい。横浜市の事例では、駅構内で、そして自動販売機とほとんど同じ仕組みで買えるというのも、個人的には期待の高まるポイントである。

 仕事から急いで帰る途中、明日の朝食用のパンが家にないことを思い出したけれど、パン屋に入ってパンを選んでトングでトレーにとって袋詰めしてもらってお会計する、その時間が惜しい。パン屋に入ったらどれにするか絶対迷って時間がかかるし。欲しいものがなかったときなんか、そのまま店を出るか何か一つでも買うべきか迷って、ますます時間がかかるし。駅の自販機だったら、きっとそんなことにはならずに、もっと気軽にパン屋さんのパンを買えそうじゃないか。

 横浜市の事例に関しては、パン屋が商品搬入・撤去の負担を感じているということも指摘されている。ロッカーによる売れ残り販売の持続可能な運営に向けては検討すべきことも多いだろうが、ぜひさまざまな地域に(そして私の通勤ルート上に)根付いてほしいと願うばかりである。

 (「藤の木」の事例、横浜市の事例の課題点については、塚原大樹2025年度卒業論文「パンのロッカー販売から分析するロッカー販売の食品ロス削減の可能性について」に基づく)

野々村真希(ののむら・まき)京都市出身。京都大学農学部卒。農学博士。2019年から東京農業大学勤務。研究内容は食品ロス、食生活など。

 【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.1からの転載】

 

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