【映画コラム】戦争が終わった後に残るものは…『ハート・オブ・ビースト』『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』
『ハート・オブ・ビースト』(9月25日公開)

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かつて陸軍特殊部隊で生死を共にした退役軍人のジェームズ(ブラッド・ピット)と、元軍用偵察犬で義足のオーディン。戦場を離れた現在も、彼らは相棒として深い絆で結ばれていた。
ところがアラスカ上空を飛行中、思わぬアクシデントに見舞われ、「魔の領域(ハート・オブ・ビースト)」と呼ばれる奥地に不時着してしまう。彼らは生還を目指し、互いに支え合いながら過酷な大自然を進んでいくが…。
アラスカ奥地に取り残された退役軍人と義足の元偵察犬。そんな“一人と一匹”のサバイバルを描くところに、本作の面白さがある。
これまでにも、さまざまなシチュエーションで主人公一人の生存を描く映画は数多く作られてきた。『キャスト・アウェイ』(00)のトム・ハンクスや『オール・イズ・ロスト~最後の手紙~』(13)のロバート・レッドフォードのように、ほぼ主演俳優の独り舞台となる作品も珍しくない。
だが、そこに一匹の犬が加わるだけで、“一人サバイバル映画”の描き方が大きく変わってくる。
しかも、ジェームズとオーディンは、共に戦争による身体的、精神的な傷を抱えている。ジェームズだけでなく、オーディンも戦場での経験によるトラウマを抱え、時折フラッシュバックに襲われる。
だから、本作におけるサバイバルには二つの意味がある。一つは、激流や断崖、野生動物などが待ち受けるアラスカの大自然から生きて帰ること。もう一つは、戦場で負った心身の傷を抱えながら、過去をどう乗り越えて生きていくかということだ。
単なる自然対人間のサバイバルではなく、生き残るとは何なのかを、一人と一匹の関係を通して描こうとしているところに本作のユニークさがある。
その意味では、間接的な手法で戦場を描いた『ヒンド・ラジャブの声』、戦争から生還した兵士のその後を描いた『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』、そして大自然でのサバイバルを通して戦争の傷を描いた本作が、相次いで公開されたのは象徴的だ。
アプローチはそれぞれ異なるが、いずれも戦争が終わった後にも残り続けるものに目を向けている。戦争が続く現在、こうした作品が相次いで作られることには、戦争が人間に何をもたらすのかを問い直す意味もあるだろう。
もっとも、本作で何より目を奪われるのは、壮大なアラスカの自然と、オーディンのけなげな姿だ。
義足というハンディキャップを抱えながら主人公を支え続ける彼の存在感は強烈で、気がつけばブラピを完全に食っている。ブラピ自身も、オーディンを演じたジャーマン・シェパードを「この映画のトップスター」と称しているほどだ。
もちろん、ブラピあっての企画であることは間違いない。だが、これほどまでに“共演者”にお株を奪われる大スターというのも珍しい。
よくこんな“損な役”を引き受けたものだと思うが、考えてみれば、人間の共演者に食われるよりは、犬に食われるほうが、まだましなのかもしれない。












