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【K-POPもKドラマも深読みしたら韓国が見えた】#韓国人はなぜ「呼称整理」をするのか、「脱出おひとり島」が映す韓国社会

▽年齢公開のあとに始まる韓国社会

 そして、最終日前夜。

 参加者たちはキャンプファイヤーを囲み、打ち解けたおしゃべりの中で、それまで隠してきた年齢と職業を、一人ずつ明かしていく。「実は◯歳です」の一言ごとに、歓声と悲鳴が上がる。年上だと思っていた人が年下だった。タメだと思っていた相手がオッパやヌナだった。この夜の盛り上がりは、番組のクライマックスの一つである。

 その盛り上がりの中で、私が最も「これぞ韓国」とうなった一言が飛び出す。参加者の一人、プロバスケットボール選手のグァンヒが、男性メンバーたちに向かって、こう言うのだ。

 「そろそろ、呼称整理をしなきゃいけないと思うんだけど」。

日本語字幕は、こうなっている。「上下関係がわかったら言葉遣いはどうする?」

 意味はきちんと伝わるが、原語を聞き取ると、もう一段面白い。グァンヒが使ったのは「ホチンチョンニ(呼称整理)」という言葉である。誰を「ヒョン(兄さん)」と呼び、誰とタメ口でいいのか。年齢が明かされた以上、それを確定させよう——韓国ではごく自然に行われる確認作業だ。

 これは、宴の終わりを告げる合図でもある。年齢のない世界で無礼講を楽しんだ時間は終わり、参加者たちは誰を「ヒョン」と呼び、誰とはタメ口で話すのかを整理して島の外へ戻っていく。恋愛だけでなく、その後の人間関係まで映し出すところに、この番組ならではの面白さがある。

▽セブチは、デビュー前に「呼称整理」を終えている

 「脱出おひとり島」では、年齢を伏せたまま関係を築き、最後に「呼称整理」を行う。では、最初から年齢が分かっている集団ではどうなのだろうか。SEVENTEENである。

 13人のメンバーは、ファンの前に立つより前から、誰がヒョンで誰がタメなのかをすでに整理している。最年長は95年生まれのS.COUPS、末っ子は99年生まれのディノ。だから彼らの自主コンテンツをどれだけ見ても、「タメ口にしよう(マルノッチャ)」という場面は出てこない。ディノはS.COUPSにタメ口で話しかけながらも、呼びかけは必ず「ヒョン」。語尾はいくらでも崩れるのに、呼称だけは変わらない。

 もっとも、その呼称は自然に決まったわけではない。年上と年下の境界が曖昧なケースでは、自分たちでルールを決めている。基本は生まれ年だが、早生まれについては実際にどの学年で過ごしたかまで考慮し、自分たちで線引きをしたようだ。例えば、96年11月生まれのウジと97年早生まれのドギョムは、本来ならタメだが、ドギョムが一学年下として学校に通ったため、ウジを「ヒョン」としている。(注:かつては早生まれの子どもが入学時期を選べたが、2003年生まれ以降、原則として1~12月生まれが同じ学年になり、早生まれ制度は廃止された)

 普段はわちゃわちゃと戯れている13人も、呼称整理は徹底している。ヒョンが付くか付かないか——それだけのことに、呼び方も、甘え方も、相手との距離感も懸かっている。だから、曖昧なままにはしておけないのだ。

 島の男女は、呼称のない世界をゼロから組み立て、最後に呼称へ帰っていった。一方、SEVENTEENは、デビュー前に呼称整理を終え、その関係をそのまま生きている。違いはあっても、どちらも人間関係の土台にあるのは「呼称整理」なのである。

「呼称整理」で宴は終わる

 最後の夜、隠していた年齢の公開でここまで盛り上がれるのは、日韓社会に共通の感覚かもしれない。日本人にも覚えがあるはずだ。初対面の集まりで「え、同い年だったの?」と盛り上がる、あの瞬間に少し似ている。

 ただ、韓国ではその先がある。年齢が分かった瞬間、誰がオッパ(兄さん)で、誰がオンニ(姉さん)なのか——呼び方を決めなければならない。年齢の公開は、関係の整理の始まりなのである。

 だからグァンヒのあのセリフは、単なる進行役の仕切りではない。年齢のない世界という酔いから醒めて、韓国社会に帰るための、締めのあいさつなのだ。字幕は「言葉遣いはどうする?」と訳した。でも、その向こうで「呼称整理」という一語が聞き取れたとき——その瞬間、この番組は恋愛リアリティーを超え、韓国社会を映し出す縮図となる。


筆者プロフィール

たんふる先生(韓活韓国語ラボ)。韓国語・韓国文化研究者。NHKラジオ語学講座講師や韓国ドラマの字幕翻訳を手がけ、韓国ドラマ専門誌「もっと知りたい!韓国TVドラマ」(休刊)では「ドラマで学ぶ韓国語」を15年間連載。現在は「GOING SEVENTEEN」全123話・字幕約11万行やBTSのバラエティー字幕をデータ分析し、「推しが実際に話す韓国語」を読み解いている。分析の詳細はnote「韓活韓国語ラボ」で公開中。

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