【週末映画コラム】人気シリーズの最終章『ブリジット・ジョーンズの日記 サイテー最高な私の今』/実際の元収監者たちが演劇メンバーを演じる『シンシン SING SING』
『シンシン SING SING』(4月11日公開)

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無実の罪でシンシン刑務所に収監されたディヴァインG(コールマン・ドミンゴ)は、刑務所内更生プログラムの一環である「舞台演劇」のグループに所属し、収監者仲間たちと日々演劇に取り組むことで気を紛らわせていた。
そんなある日、刑務所内で一番の悪人として恐れられている通称ディヴァイン・アイことクラレンス・マクリン(本人)が演劇グループに参加することになる。そして演劇グループは、次の公演に向けた新たな演目の準備に取り掛かるが…。
米ニューヨークで最も厳重なセキュリティーが施されたシンシン刑務所で行われている収監者更生プログラムの舞台演劇を題材に、無実の罪で収監された男と収監者たちとの友情を実話を基に映画化。
主人公のディヴァインGを演じたドミンゴは、第97回アカデミーで『ラスティン ワシントンの「あの日」を作った男』(23)に続いて2度目の主演男優賞ノミネートを果たした。
そのほかのキャストは、シンシン刑務所の元収監者で、舞台演劇プログラムの卒業生および関係者である俳優たちが多数参加している。監督は『ザ・ボーダーライン 合衆国国境警備隊』(16)などのグレッグ・クウェダー。
実際の元収監者たちが演劇メンバーを演じていることもあり、全体としてはドキュメンタリー的な要素が強く、彼らが劇中劇を作っていくところには演劇的な魅力を感じる。
また、体制による抑圧、自由への渇望、あるいは多彩な演者一人一人の個性が際立つという点では、精神病院を舞台にした『カッコーの巣の上で』(75)を思い出すところがあった。あの映画ももともとは舞台劇だったから、この2作がつながると感じたのが全くの当て推量というわけでもあるまい。
そんなこの映画テーマの一つは再生だが、メンバーたちに感情移入して、本当の意味での悪人はいないのではないかと思ってしまうところが悩ましくもある。
(田中雄二)