身の丈に合っているのは・・・ 【辛酸なめ子 コラムNEWS箸休め】
少し前、SNSで話題になった「エアポートセオリー」というチャレンジ。飛行機が出発する15~20分前に空港に到着し、無事に飛行機に乗れるか、というスリリングな実験です。「国際線なら2~3時間前、国内線なら1時間前までに空港に到着する」ルールに疑問を持った人が始め、主に欧米で流行。チャレンジした中には間に合わず、泣く泣く搭乗をあきらめた人も。
国内線で平日ならいけるかもしれないと思いながらも、トライする勇気はありません。先日、1時間前でも間に合わなくなりそうな空港を利用したので・・・。それは成田空港第3ターミナル。仕事で福岡に行くことになり、自腹の交通費を安く抑えてLCCの航空券を購入。始発の電車で出発の1時間前に着いて間に合うだろうと思っていたら、歩いても歩いても第3ターミナルが見えません。
どうやら空港第2ビルの駅から1キロくらいあるようでした。LCC専用の簡素な建物内を進みながら格差を痛感。乗る便の搭乗口は保安検査所からも遠く、まるで運動会の障害物競走のように走り続け、ギリギリで搭乗。運動会の演目はこういうときのための練習だったのかもしれません。さらにバスに乗り、やっと辿(たど)り着いたゴールの航空機前では、切ない現実を実感させられました。
60歳前後の女性客2人が、頭上を飛んでいく航空機を見上げながら「ほら、あれが勝ち組のJALだよ。もう一生乗ることはないだろうね」と話すのが聞こえ、こんな人生のゴールって・・・と寂しくなりました。何もそこまで限定しなくても、いつか乗る機会は来ますよ、と言いたいです。

©️2026 Nameko Shinsan
それは意外と早く訪れました。搭乗し、しばらくして「この便は日本航空との共同運航便です」というアナウンスが。先ほどの女性も、JALに乗れたようなものだと喜んでいたことでしょう。
後日、私は別の仕事でJALに乗る機会に恵まれ、羽田空港第1ターミナルの高級感に驚きました。成田空港第3を体験した後だと感動も倍増です。大手航空会社は離発着もスムーズで気付いたら「ザーッ」と着陸。LCCは、気のせいか横揺れが激しく「ドドーンガタガタガタ」と着陸する感じです。でもそんなワイルドな旅も味わい深いです。 大手航空会社のCAさんは髪もメイクも制服も完璧で素敵(すてき)ですが、LCCのCAさんのフレンドリーさ、リラックス感も魅力的。やはりLCCが身の丈に合っているのかもしれません…。人生の縮図を感じられるのが私にとっての「エアポートセオリー」です。
辛酸なめ子(しんさん・なめこ) 漫画家、イラストレーター、コラムニスト。1974年東京都生まれ、埼玉県育ち。武蔵野美大短期大学部卒業。著書に「女子校育ち」(筑摩書房)、「スピリチュアル系のトリセツ」(平凡社)、「電車のおじさん」(小学館)、「大人のマナー術」(光文社新書)など多数。2025年2月に「江戸時代のオタクファイル」(淡交社)を上梓。
















