起業支援から社会課題の解決へ、関西大学イノベーション創生センターが10周年で展望示す

イノベーション創生センター10周年記念シンポジウム(関西大学提供)
関西大学は9月26日、千里山キャンパスでイノベーション創生センター(KUCIC)の創設10周年記念シンポジウムを開催し、約100人が参加した。同センターは2016年、創立130周年記念事業の一環として設立され、研究成果を活用した起業支援などに取り組んできた。
冒頭、高橋智幸学長はこの10年間の活動を評価し「社会にインパクトを与えるのはこれから」と期待を寄せた。
基調講演では、情報処理推進機構(IPA)の川上悟史氏が「科学とビジネスが近接化する時代の大学」をテーマに登壇。川上氏は、かつて基礎研究から事業化まで段階的に進んでいた科学とビジネスの関係が大きく変化していると指摘。AIや量子コンピューターなどの分野では、研究の早い段階から民間企業が巨額の資金を投じるようになり、大学の研究とビジネスの距離が縮まっていると説明した。
こうした変化の中で重要性が高まっているのが、大学発スタートアップだ。従来の企業との共同研究や技術移転に加え、研究者らが自ら会社を立ち上げ、技術を育てながら事業化する道が広がっているという。
続いて、石川正司センター長が10年間の歩みを報告。研究成果の事業化を後押しするため、独自の「研究GAP」プログラムを設けた。研究成果が実際の事業に活用できるかを確かめる実証試験などを資金面から支援する制度で、これまで約15件を支援し、うち4件が起業につながったという。現在は16社がセンターに入居しており、理系だけでなく文学部から生まれた企業もある。
石川氏は今後の方向性として、企業の設立や成長を支えるだけでなく、災害対策やAIの活用など社会課題の解決につなげる「社会変革支援」への転換を掲げた。さらに、ベンチャーキャピタル、企業、政府、自治体、金融機関、他大学などと連携し、人材や技術、資金が行き交いながら新たな事業を生み出す「エコシステム」の発展を目指す考えを示した。
トークセッションでは、関西大学卒業生で宇宙ベンチャー「AstroX」の小田翔武CEOや、ベンチャーキャピタル「インキュベイトファンド」の下原右多氏らが登壇。それぞれの経験をもとに、研究成果を起業に結び付けるタイミングや条件、大学の役割などについて意見を交わした。
研究成果を事業化するだけでなく、社会課題の解決にどう生かすか。関西大学は、産学官との連携を通じて、その実現を目指す。

関西大学イノベーション創生センターの石川正司センター長(関西大学提供)













