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農業大国茨城が直面する現実 外国人の不法残留問題 【水谷竹秀✕リアルワールド】

 不法に残留する外国人の摘発や強制送還の手続きを進めるため、政府は本年度内に出入国在留管理庁の職員を200人超増やす方針を固めた。

 日本に不法滞在している外国人数は今年1月現在、約6万8500人。国籍別ではベトナム人が約1万1600人と最多で、これにタイ(約1万900人)、韓国(約1万人)と続く。

 不法残留者の野放し状態は、治安の悪化や犯罪の温床につながるという懸念の声も上がっており、摘発強化に乗り出す政府の意図は分からなくはない。だが、事態はそんなに単純ではない。私が最近、取材をした茨城県における不法残留外国人問題は、地域社会におけるいびつな現実も関係していた。

 茨城県は5月11日から「通報報奨金制度」を始めた。この制度は、不法就労者を雇用する会社やブローカー(仲介者)を通報対象とし、摘発につながる情報提供者には1万円を支払う仕組みだ。就労者個人は対象外である。今年2月に制度の導入方針が明らかにされると、「外国人差別を助長する」などの反発の声が相次いだ。

 茨城県内の不法就労者の数は2022年から4年連続で全国最多(ワースト1位)を記録している。昨年、全国で摘発された不法就労者は1万3435人だった。都道府県別では茨城が3518人と最も多かった。このうち7割が、農業従事者に集中している。その多くは、技能実習生として来日後、実習先の雇用環境が劣悪だったなどの理由で職場から逃げ出して、茨城県に辿りついたベトナム人やインドネシア人だった。

 茨城県は農業産出額が全国第3位を誇る日本有数の農業大国だ。しかし近年は日本の若者たちによる「農業離れ」で農家の高齢化が進み、人手不足が深刻化している。こうした時代背景が、不法就労者の雇い入れにつながっていると、地元の農業関係者は指摘する。

 「作物によっては短期間の収穫作業に人手が必要。ところが、技能実習で定められた1年以上という長期で外国人を雇えるほどの仕事がない。そんな時に『1週間だけでも働けますよ』と紹介された外国人の中に不法就労者が含まれている場合がある」

 特に高齢の農家は、不法就労と気づかないまま雇用している可能性があるという。外国人を雇用する複数の農家に聞いてみると、こんな意見が寄せられた。

 「今は合法的に外国人を雇用できていますが、災害などの緊急事態が発生し、突如として人手が必要になった時に、不法就労者を雇わざるを得ないかもしれません」

 「外国人を合法的に雇う場合、関係機関に提出する書類も多く、複雑な手続きもある。果たして高齢の農家にできるだろうか」

 人手不足に悩む彼らにとっても、不法就労者はある種の「必要悪」という共通認識が広がっていた。出入国在留管理庁の摘発強化方針は、不法でも外国人に頼らざるを得ない農家に暗い影を落としていた。

みずたに・たけひで ノンフィクションライター。1975年生まれ。上智大学外国語学部卒。2011年、「日本を捨てた男たち」で第9回開高健ノンフィクション賞を受賞。10年超のフィリピン滞在歴をもとに「アジアと日本人」について、また事件を含めた現代の世相に関しても幅広く取材。

【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.31からの転載】

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