魂込め、あふれる躍動感 【正田裕生 コラム 直線・曲線・斜め線】

最優秀作品賞を受賞した「KOSÉ 8ROCKS」の演技=1月、トヨタアリーナ東京(©D.LEAGUE25―26)
ジャンプ、宙返り、そして倒立。アクロバティックな動きから一転して体を止めるフリーズ。8人がビートに乗ってステージで舞うと、躍動感と奔放さがあふれる。圧巻の迫力だ。近年人気が高まるプロダンスリーグ「第一生命Dリーグ」で、ブレイキン(ブレイクダンス)のチーム「KOSÉ 8ROCKS」はひときわ輝きを放つ。
Dリーグは2021年、1チーム8人のダンサーによる団体戦としてスタート。12年に中学校の体育の授業でダンスが必修となり、部活動やダンススクールを通して若者にダンスが広まったことで注目を集めた。さらにSNSによる拡散で関心を呼んだ。ブレイキンは24年パリ五輪で実施され、Shigekix(半井重幸)が開会式で日本選手団の旗手を務め、競技で4位に入るなどして多くの人がその魅力に触れた。
最初のシーズンを争った9チームのうちの一つである「KOSÉ 8ROCKS」は21〜22年シーズンで優勝した中核チーム。24年にはShigekixが加入。今年5月に終了した25〜26年シーズンは惜しくも4位に終わったが、各チームが披露した演技の中で最も高く評価された「最優秀作品賞」を受賞した。
受賞した演技は、ブレイキンの魅力が詰まっていた。体を激しく回転させる「パワームーブ」に、突然スローな動きを交える。最後はたたみかけるような激しい動きの後、全員が倒立してフリーズした。息をのむ展開に、トヨタアリーナ東京(東京都江東区)を埋めた約7千人の観客から大きなどよめきが起こった。Shigekixは「すごく光栄。特有の爆発力、インパクトを表せたのがこの作品。脳裏に焼き付く感覚がブレイキンにあるんだなと、改めて感じた」と自信を深めた。
ブレイキンは通常、1対1で対戦する「バトル」と呼ばれる形式で行われ、DJがかける曲に即興でダンスを繰り出す。Dリーグでは、事前に時間をかけて最長2分15秒の演技の構成や振り付けを考えて練習し、曲や照明も準備する。チーム発足時にディレクターを務めたISSEI(堀壱成)は「Dリーグでやるのは『ショーケース』。今までやったことがなかったし、即興じゃないことに違和感があったけど、自分たちが必死に考えて作品を練り上げることができて形が残る。そこが一つの魅力」と語る。ISSEIの弟、Taichi(堀泰致)は「チームの中で出られない選手もいる。(チームの母体の)会社やスポンサーさん、ファンの思いを背負う責任がある」と言う。発足して6シーズンの若いリーグの選手からは、新たな活躍の場に魂を込めようというひたむきさが伝わる。
10月開幕の来シーズンは16チームから20チームに増え、さらに激戦となる。Shigekixは「勝てるチームだと思っている。優勝したい」と雪辱を期す。より進化したパフォーマンスを、ぜひ見たい。
正田裕生(しょうだ・ひろき) 共同通信編集委員。埼玉県出身。総合商社勤務後、1991年に共同通信社入社。99年に運動部。水泳、バスケットボール、テニス、IOCなどを取材し、五輪は9大会で現地に。ロンドン支局、運動部長、編集局次長などを経て現職。
【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.30からの転載】
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