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睡眠6時間未満の生徒が7割 足立新田高が改善目指し講演会、関係者と連携“集合知”確立へ

東京都立足立新田高校で開かれた全校生徒を対象にした睡眠に関する講演会

 「朝、起きるのがつらい」「日中、授業に集中できない」―。このような睡眠不足による生活のリズムの乱れが影響しているとみられる生徒たちの悩みを受け止め、東京都立足立新田高校(足立区新田2丁目、高松久一校長)が、スマートフォンの長時間使用など睡眠不足になりがちな生活習慣の改善を目指した取り組みを始めた。

 この取り組みの“第1弾”として、同校は7月15日、子どもの睡眠問題に詳しい一般社団法人「こども睡眠カウンセラー協会」(大阪市)の秋山信子代表理事を講師に招いた講演会を同校体育館で開いた。 

 秋山さんは「眠りを知ることは自分を守ること」と題し、「できていない(睡眠が十分とれていない)自分を責めないで聞いてください」と冒頭断った上で、日本人の睡眠時間が他国の人に比べて少ないことや、睡眠不足と学力低下、肥満、発育不全、肌荒れ、精神的ないらいら・落ち込みなどとの関係性を示す学術研究結果を紹介。睡眠の時間と質を確保した生活の大切さを訴えた。

 全校生徒約750人は、重度脳性まひの三女の睡眠障害から語り始めた秋山さんの話に真剣な表情で耳を傾け、睡眠不足が健康面、精神面、学習面などに及ぼす悪影響への理解を深めた。

先進国の中で日本人の睡眠時間が最下位であるとのデータを紹介する、こども睡眠カウンセラー協会の秋山信子代表理事=東京都立足立新田高校、2026年7月15日

 

 足立新田高校は1979年、隅田川沿いに開校。都立校としてはユニークな「相撲部」がインターハイ上位入賞の常連校となるなど都内でも有数のスポーツ校として知られる。2025年4月に校長に着任した高松久一さんは生徒の遅刻が多いことなどから、睡眠への問題意識を持った、という。睡眠不足は、生徒の健康や体の発育、学習や運動・スポーツの成果などさまざまな面に影響を及ぼし得る課題であるため、学校だけの取り組みでは「限界」があると判断し、睡眠の専門家や行政機関、民間企業など関係機関の協力を求めて、科学的、社会学的な知見を生かした“多面的アプローチ”で生徒の睡眠改善に取り組むことを決めた。

 

こども睡眠カウンセラー協会の秋山信子さん(中央)ら関係者と今後の取り組みについて話し合う東京都立足立新田高校校長の高松久一さん(左)

 

 高松さんは筑波大体育専門学群出身で「スポーツ健康科学」の専門家。都立高教員になる前は、民間のスポーツクラブで主婦やビジネスマンなどを対象にインストラクターとして健康指導に取り組んできた異色の経歴を持つ。「生徒の睡眠不足は、社会の夜型化など、社会・産業構造と関連しており、基本的に個人の努力だけで改善する次元の問題ではないと考えています。学校や睡眠の専門家など関係者が連携を深めて“集合知”を築き、社会的次元で改善を目指すべきだと思います。今回の取り組みを、睡眠不足の解消を促す効果的な改善プログラムの開発につなげていきたい」と話す。今後、睡眠に関するさまざまな知見を持つ行政、企業、大学、研究機関、医療機関、報道機関などとの連携をさらに強化し、子ども、若者の睡眠不足解消を目指す取り組みの輪を広げていく予定だ。

 今回の取り組みへの関係機関の関心は高い。この日の講演会には東京都教育庁の指導部と東部学校経営支援センター経営支援室の担当者のほか、足立区のあだち未来創造室長と同室子どもの貧困対策・若年者支援課長、健康測定機器の提供など生徒の健康活動に協力する意向を示している明治安田生命の担当者らが参加。高松さんとも意見交換した。

 取り組みの今後の予定としては、夏休み明けの9月に、生徒の1日の睡眠時間や朝食時間などの実態を2週間継続して把握する調査を行う、という。30分ごとの刻みが付いた1日24時間の棒グラフを14本並べた「睡眠朝食調査票」を生徒に手渡し、睡眠時間部分を黒鉛筆で塗りつぶしたり、ふとんに入ってから実際に寝るまでの時間に斜線を引いたり、「朝ごはんを食べた日」「自分で起きられた日」などに印を付けたりなどしてもらう。これらの記入によって2週間の睡眠状況を“視覚化”し、生徒一人一人の課題を明らかにして睡眠・生活習慣の改善につなげていく方針だ。

 この日の秋山さんの講演では、講演前の全校生徒を対象に実施した睡眠に関する「事前アンケート」の結果も発表された。それによると、平日の睡眠時間が「6時間未満」の生徒は71.3%、授業中の居眠りを自覚している生徒は61.6%に上っていた。またスマホを1日4時間以上使用する生徒の割合は71.7%を占め、使用時間は夜に集中していた。

アンケート調査で平日の睡眠時間が「6時間未満」の生徒は71.3%に上ることが分かった東京都立足立新田高校

 

 これらの事前アンケートの結果を踏まえ、秋山さんは「睡眠を阻害する最大の原因としては、スマホの長時間使用が考えられます。そのほかの阻害要因としては朝食抜きや運動不足を指摘できます。朝食を抜くと午前中に体温と血糖値が十分に上がらず、体内時計(サーカディアンリズム)もリセットされないため、寝付きが悪くなることがあります」と述べた。

 講演後は、全校生徒を代表して生徒2人が秋山さんに質問。「テスト対策として徹夜学習、夜学習、朝学習のいずれが最適ですか」「通学に1時間以上かかり、部活の終わりが遅くなると、どうしても睡眠時間を削ることになってしまいます。早く寝る、長く寝ることができない場合に睡眠の質を上げる方法はありますか」など、切実な問題の解決策を聞いていた。

  • 東京都立足立新田高校で開かれた全校生徒を対象にした睡眠に関する講演会

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