EY調査:有料の配信サービス利用世帯の38%が解約した、または今後解約予定
~消費者の価格高騰への懸念が強まる中、配信サービス利用は流動化へ~
EYは、テクノロジー、メディア・エンターテインメント、テレコム(以下、TMT)に対する消費者意識に関する最新調査「デジタルホーム市場を読み解く 2025」(Decoding the digital home 2025)を発表しました。当調査は、EYグローバルのTMT業界を担当するチームが実施したもので、家庭内におけるテクノロジー、メディア、電気通信製品およびサービスに関する消費者の行動や態度の変化について理解を深めることを目的としています。
<キーハイライト>
有料配信サービス利用世帯の38%がサービスを解約したか、今後解約する予定と回答
特定のコンテンツの需要拡大により、消費者の選好度が前年調査から上昇
全体の37%が、有料であってもスポーツコンテンツを視聴したいと回答
<EY Japanの視点>
EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社
テクノロジー/メディア・エンターテインメント/テレコムセクター
アソシエートパートナー 原 晋一郎
~デジタルホームの勝ち筋は「整えて任せる」体験~
EYの調査においては、デジタルホーム市場を、通信・コンテンツ・デバイス・サポートを世帯単位で統合し、「暮らしとしてのデジタル体験」を提供する領域として捉えています。これは個別の製品やサービスを提供する市場ではなく、家庭内のデジタル環境をいかに分かりやすく、安心して利用できる形で成立させるかが問われる市場です。
グローバルでは、地政学リスクやインフレを背景に価格不安が高まる中、通信速度よりも安定性や体験の一貫性、分かりやすさが重視される傾向が強まっています。その結果、FWAや衛星通信の活用、ストリーミングサービスの流動的な利用が進み、AIは購買や情報探索を加速させる役割を担う一方、最終的な信頼は人による対応が担うという構図が明確になりつつあります。
一方、日本市場ではFTTH(Fiber To The Home)の高い普及率により性能差を感じにくく、惰性による継続利用が多いのが特徴です。そのため競争軸は「安さ」や「速さ」から、災害時も含めた安心感や、契約・コンテンツの整理・統合、AIと人を組み合わせた丁寧なサポートへと移行していくと考えられます。日本では“選ばせる”よりも、“整えて任せられる”体験設計が、デジタルホーム市場の成否を左右すると言えるでしょう。
調査に回答した世帯の半数以上(59%)が配信プラットフォームの年間利用価格の引き上げを懸念しており、価格高騰について、過半数にあたる58%が、「不当かつ理不尽」だと回答しています。このように価格に対して、消費者の感度が高まっている環境下において、サービス提供事業者はどれほどの価格決定力を持っていようと、それを当然のことと受け止めるべきではありません。
【サービス利用者に向けた新たなエンゲージメント戦略の必要性】
配信サービスは世界的に依然として人気が高く、グローバル全体における有料月額契約数は現在の18億件から2029年までに20億件を超える見通しです(※)。一方で、成長率は横ばいで推移するとみられています。こうした状況を背景に、競争は依然として激化しています。複数の有料配信プラットフォームに加入している世帯が多いなか、約4割(37%)が「加入先を減らすことを検討している」と回答しています。有料配信サービスを利用する世帯の38%が、「いずれかのサービスを解約した」、または「今後解約する予定である」と回答し、この割合は前年調査の35%から増加しています。
※データ出所
Ampere: streaming subscriptions to pass 2 billion by 2029 – TVBEurope, TVB Europe, 9 December 2024
解約理由として最も多いのは「節約」ですが、それに加えて、他の理由を挙げる世帯も目立っています。具体的には「好きなコンテンツが配信されなくなった」(12%)や、配信プラットフォームの多様化が進むなかで、「別の配信プラットフォームの方が良くなった」(12%)などが挙げられています。
これらの調査結果について、EY Americas Media and Entertainment Growth LeaderのJohn Harrisonは次のように述べています。
「配信プラットフォーム事業者は、サービスをバンドルすることでより大きな価値を提供するとともに、コンテンツライブラリを定期的に更新し、利用頻度の低下といった解約の兆候を示す利用者を的確に把握し、そのエンゲージメントを高めることに注力すべきです。各利用者セグメントに合わせた戦略を策定し、解約の兆候を示す利用者に早い段階で対応することで、事業者は解約リスクを効果的に軽減し、顧客関係を長期的に強化することができます」
【良質なコンテンツの需要拡大】
消費者が新しい配信プラットフォームに加入を検討する際の最大の理由は、依然として「魅力的な月額料金」です。その一方で、近年の料金改定により、コンテンツに対して支払い過ぎているのではないかと、消費者の懸念が高まるなかでも、費用以外の判断要素も明らかになりました。これは配信プラットフォーム事業者にとって好材料と言えるでしょう。前年と比べて重要性が増しているのは「特定のコンテンツへのアクセス」(37%)と「コンテンツライブラリの充実」(33%)、「オリジナルコンテンツや独占コンテンツ」(28%)が挙げられています。
EY Global and Americas Media & Entertainment Sector LeaderのJavi Borgesも次のように述べています。
「オリジナルコンテンツへの投資拡大は消費者心理に沿った動きである一方で、制作コストの上昇や政府による規制、競争激化を伴います。そのため、配信プラットフォーム事業者は今後、投資拡大を慎重に進めていく必要があるでしょう」
【サービスの加入・解約を意図的に繰り返す消費者行動】
調査結果から、消費者が解約と加入を繰り返す消費行動パターンも明らかになりました。1つ以上の配信プラットフォームに再加入した回答者は全体の38%に達し、前年の33%から増加しています。こうした行動は、単なる加入先の変更にとどまらず、消費者と配信プラットフォームとの関係が本質的に流動的であることを示しています。
回答者の42%は「一度加入した配信プラットフォームの解約を検討することはめったにない」、19%は「インターネット接続のバンドルプラン経由で契約している」と回答しており、配信プラットフォームごとに個別最適を図る判断をしていない傾向です。一方、残りの39%は月額料金を抑えて一気見するため、特定のコンテンツを視聴するため、あるいはキャンペーン期間中の割引を利用するために、「加入・視聴・解約・再加入」を意図的に繰り返しています。特記事項として、世帯の56%が「配信プラットフォーム事業者は、加入や解約の煩わしい手続きなしに、コンテンツを簡単に視聴できるようにすべきだ」と回答しています。
Harrisonは、こうした消費者行動について次のように解説しています。
「消費者の意図を理解し、それに即した対応を取ることで、配信プラットフォーム事業者は収益化に向けた新たな道筋を見出すことができます。価値提案のパーソナライズ、新たな料金戦略の策定、新しいインセンティブの導入は、短期的な契約件数の最大化だけでなく、顧客の長期的維持につながります。良質のコンテンツが購買決定時に果たす役割は拡大する中、大胆な戦略を打ち出す事業者にとって、今後の見通しは明るいと言えるでしょう」
【急速に変化しているジャンルはスポーツコンテンツ】
スポーツコンテンツは台頭が著しく、最もダイナミックかつ急速に変化しているジャンルの1つです。有料でもテレビでスポーツを観戦したいと回答した割合は37%で、前年の35%から微増しました。一方、全体の3分の1(33%)が、過去12カ月間にスポーツの生中継配信があることを理由に配信プラットフォームへ加入したと回答しています。大手事業者がボクシングや総合格闘技の生配信に参入し、ペイパービュー(PPV)などの従来型収益化モデルに挑戦している過渡期でもあります。
有料スポーツコンテンツの需要が拡大しているなかで、世帯の半数近く(49%)が課題感を持っていると回答しました。最も多く挙げられたのは「料金が高い」(22%)で、次いで、「応援するチームを見つけ、継続的に追いかけて視聴することが難しい」(11%)でした。複数のスポーツを熱心に応援するファンにとって、これらの課題はさらに顕著であり、スポーツを配信するチャンネルが増加していることが背景にあります。
Borgesは、こうした課題について、次のように指摘しています。
「スポーツイベントを生中継で観戦したいという声がファンの間で高まるなか、幅広いスポーツコンテンツに簡単にアクセスできるパッケージプランを提供する事業者は、競争が激化する市場のなかで、差別化を図ることができるでしょう。そのためには、スポーツのライブ放映権を確保するだけでなく、視聴体験を向上させ、より手頃で利便性の高いサービスを提供することが求められます」
【消費者はAIが生成したコンテンツの透明性向上を求めている】
映像効果から最適化に至るまで、AIはコンテンツ体験において多面的な役割を果たしています。しかし、オンライン上で目にする情報の信頼性をAIが損なう可能性について、消費者が警戒しているのも事実です。それでも、3分の1以上(37%)は、AIによる広告パーソナライズの高度化を評価しています。特に、この傾向は25~34歳の年齢層で顕著です。また39%がAIを活用したコンテンツ管理は便利だと感じています。こうした評価がある一方で、AIが果たす役割に対する不安もあり、71%が「混乱を避けるため、AI生成コンテンツであることを明確に表示すべきだ」と回答しています。
Harrisonはこれらの調査結果について、次のように述べています。
「消費者がコンテンツ体験の一環としてAIを高く評価している一方、責任あるAIの活用を求める声も強まっています。サービス事業者はこうした意識を踏まえ、利用者に安心感を与え、最終的に保護するためのAI活用の枠組みやアプローチを構築することが不可欠です」
当調査をより詳細にまとめたレポートの全文(フルレポート)は、以下よりご覧ください。
シンプルさと選択肢を求めるコネクテッドコンシューマーのエンゲージメントを高めるには
※本ニュースリリースは、2025年12月8日(現地時間)にEYが発表したニュースリリースを翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。
英語版ニュースリリース: EY study: cost-conscious streaming subscribers looking for more value for money
本調査について
「Decoding the Digital Home」は、インターネット接続やコンテンツ関連の製品とサービスに関わる消費者の行動と意識の変化に関するインサイトを得るため、年に1回実施している経年調査です。今回の調査では、地政学的環境が顧客の意識に与える影響や、乗り換えの複雑さとロイヤルティの問題に加え、顧客体験の変化、特にAIがカスタマージャーニーで果たす多面的な役割といったテーマに焦点を当てました。さらに、EYグローバルTMTチームのインサイトと分析結果も盛り込まれています。
調査期間は2025年7~8月で、オーストラリア、オーストリア、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ノルウェー、韓国、スペイン、スウェーデン、スイス、英国、米国の計15か国、合計20,500世帯を対象にオンライン調査を実施しました。
〈EYについて〉
EYは、クライアント、EYのメンバー、社会、そして地球のために新たな価値を創出するとともに、資本市場における信頼を確立していくことで、より良い社会の構築を目指しています。 データ、AI、および先進テクノロジーの活用により、EYのチームはクライアントが確信を持って未来を形づくるための支援を行い、現在、そして未来における喫緊の課題への解決策を導き出します。 EYのチームの活動領域は、アシュアランス、コンサルティング、税務、ストラテジー、トランザクションの全領域にわたります。蓄積した業界の知見やグローバルに連携したさまざまな分野にわたるネットワーク、多様なエコシステムパートナーに支えられ、150以上の国と地域でサービスを提供しています。
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本ニュースリリースは、EYのグローバルネットワークのメンバーファームであるEYGM Limitedが発行したもので、顧客サービスは提供していません。
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