「豊臣兄弟!」第6回「兄弟の絆」 序盤の集大成となった小一郎必死の説得【大河ドラマコラム】
NHKで好評放送中の大河ドラマ「豊臣兄弟!」。戦国時代、主人公・豊臣秀長(=小一郎/仲野太賀)が、兄・秀吉(=藤吉郎/池松壮亮)を支え、兄弟で天下統一を成し遂げるまでの軌跡を描く物語は快調に進行中。2月15日に放送された第6回「兄弟の絆」では、調略した大沢次郎左衛門(松尾諭)による主君・織田信長(小栗旬)暗殺の疑惑を晴らし、人質となった兄・藤吉郎(池松)を救おうとする小一郎の奮闘が描かれた。

(C)NHK
この回の白眉は、なんと言ってもクライマックスの事件解決場面だ。信長から1日だけ時間をもらった小一郎は、暗殺疑惑の証拠となった武器を大沢の荷物に隠した犯人の調査に当たる。ところがそれは、大沢を信用していない信長が、大沢を斬るため、佐々成政(白洲迅)に命じたことだと判明。それを信長自身から聞いた小一郎には、どうすることもできない。だが、大沢が死ねば、人質として大沢の居城・鵜沼城に残った藤吉郎の命はない。絶体絶命の危機。
そして迎えた翌日。信長の前に出た小一郎は、「私の調べた限り、やはり大沢殿に二心はありませんでした」と主張するが、もちろん犯人を明かすことはできない。当然、信長は大沢を斬るように命じ、「さすれば侍大将にしてやる」と告げるが、小一郎は「そんなものになりたくありませぬ!」と拒み、次のように訴える。
「大沢殿の命は、兄の命じゃ。この手で兄を殺すことなどできませぬ。わしはどんなことがあろうとも、兄者を裏切りませぬ。なぜかお分かりか。兄者がわしのことを信じているからじゃ。殿のことを信じておるのです!」
さらに過去の小一郎と前田利家(大東駿介)の会話から、信長が大沢を殺そうとしていることを知りながら、藤吉郎は信長を信じて人質になったことが明らかに。それを踏まえて小一郎は、「兄者が殿を裏切ることは、金輪際ありませぬ。そういう家臣を、あなた様は失うことになりますぞ!」と再び訴える。必死に兄を救おうとする小一郎を演じる仲野の熱演に、思わず心が震えた。
ここで小一郎の無礼な態度に激怒した柴田勝家(山口馬木也)が、「この場で斬り捨ててくれるわ!」と迫ると、「わしを斬るのは、大沢殿じゃ」と持っていた刀を手渡し、「裏切り者であるわしを斬って、殿に忠義の証を見せるのじゃ」と大沢に告げる。静かに目を閉じた小一郎が「直、すまぬ…」とつぶやくと、頬を伝う一筋の涙…。まさに、死を覚悟した小一郎の覚悟が伝わる迫真の演技だった。

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さすがに小一郎を斬るわけにいかない大沢は、自分の髷を落とすと、出家して家臣、所領を差し出すことを約束し、事態は決着する。藤吉郎を救うため、真相を公にせず、大沢を斬らぬように信長を説得する高難度の交渉術。辛うじて周囲の心を動かすことができたものの、一歩間違えれば破綻していた“薄氷の勝利”と言ってもいい。だがそれは、ドラマの作り手にとっても同じだったのではないだろうか。
秀吉の伝記「太閤記」によると、大沢の窮地を救ったのは、史実では藤吉郎だったという。それを、「藤吉郎に救われた」とも言えるやり方で小一郎の働きに置き換え、説得力のあるドラマに仕上げるのは、大きな挑戦だったに違いない。奇抜なこの作劇が成功したのは、ここまで小一郎の誠実な人柄や藤吉郎との兄弟の絆を丁寧に描いてきたからこそ。この回で描かれた信長と謀反を企んで討ち取られた弟・織田信勝(中沢元紀)の過去との対比も、小一郎&藤吉郎兄弟の絆を際立たせた。その見事な作劇には正直、舌を巻いた。
さらに言えば、主演の仲野を始め、小栗や松尾ら俳優陣の息の合った芝居に加え、スタッフのチームワークがなければ、これほどの真実味は生まれなかったに違いない。そう考えると、この場面は俳優&スタッフ一丸となって積み上げてきたこれまでの丁寧なドラマ作りの集大成だったともいえる。物語序盤でこれほど見事な人間ドラマを描いて見せた「豊臣兄弟!」がこの後、どのような展開を見せるのか。期待はさらに高まる一方だ。
(井上健一)

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