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第2次高市政権の農業政策 2つのシナリオ 共同通信アグリラボ編集長コラム

 2月8日投票・開票の衆院議員選挙は、自民党(公示前198議席)が単独で3分の2(310議席)を超える316議席を得て圧勝した。参院で法案を否決されても衆院で再可決し、成立させることが可能になり、憲法改正の国会発議に必要な議席数も満たした。改憲論議をどのように主導していくのか、少数与党である参議院の議事運営にどのように臨むのかが最大の焦点であり、農業政策にも影響しそうだ。

 一方、中道改革連合は公示前(167議席)と比べて3分の1に満たない49議席にとどまり惨敗した。敗因として「選挙期間が短く(中道の意義を)浸透できなかった」(野田佳彦前共同代表)と弁明したが、それ以前に党上層部の一部だけで極秘に「衆院限定合体」が進められたことに対して、有権者は組織の理屈を最優先する体質に違和感や反発を覚えたのではないか。

 自民圧勝の要因として高市早苗首相の個人的な人気が挙げられているが、単なる「推し活」による戦術上の成果ではなく、「ポピュリズムの時代」への周到な戦略があった。選挙戦直前になって「消費税減税」を公約に掲げたのは、その一例だ。

 ポピュリズムは「大衆迎合」と訳され、統治するエリートが統治される大衆に妥協するという上から目線の含意があるが、情報発信のデジタル化と多元化が進んだ今となっては、「直接民主主義」に近い語感で受け止めるべきだ。欧米の政界は既にポピュリズムに傾斜している。

 自民党は企業や団体に支えられた既存政党だが、ポピュリズムへの対応を怠らず、有権者が抱いた「自民党は変わるかも知れない」という期待と「この人たちは変わらない」という失望が、今回の選挙結果を招いた。

 第2次高市政権が直ちに、農業団体の支持を失うような乱暴な政策を採用するとは思えないが、長い目でみれば農村部にも徐々にポピュリズムが浸透していく。農業団体の利害得失ではなく、農村部の有権者一人一人が納得するような政策を訴える必要に迫られる。盤石の党内基盤を得た高市政権にとって、政策の軸足をポピュリズム側に移し、団体離れして思い切った改革を実現する絶好のチャンスだ。小泉純一郎政権による規制改革や、安倍晋三政権による農業協同組合(JA)改革と同様の素地ができあがっている。

 ただ、高市首相が本気で憲法改正を狙う場合、別のシナリオが浮かび上がる。参議院では少数与党のため野党の取り込みが不可欠であり、その前提として自民党内に亀裂があってはならない。党内結束を最優先し、農林議員との融和・協調を重視、米政策は「需要に応じた生産」を堅持、農政は漸進的な改革にとどまるだろう。首相が憲法改正と向き合う姿勢は、一見無関係な農政にも強い影響を与える。

(共同通信アグリラボ編集長 石井勇人)

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