EY調査、「責任あるAI」ガバナンスは事業成果の向上に寄与
■ AIリアルタイム監視や監督委員会を導入している企業は、収益成長、従業員満足度、コスト削減において確かな成果を上げている。
■ ほぼすべての回答企業が、コンプライアンス違反、持続可能性への取り組みの悪影響、バイアスのかかったアウトプットによって、財務的損失や組織全体への広範な影響を経験している。
■ ガバナンス、可視性、人材面の備えなどへの対応が不十分な企業では、従業員主導のAI開発・導入における管理面で課題が顕在化している。
EYは、「Responsible AI Pulse Survey(責任あるAIに関するパルス調査)」2025年度第2回目のレポートを発表しました。本調査では、責任あるAIの取り組みを先進的に進めている企業は、イノベーションや業務効率の向上に加え、収益成長やコスト削減、従業員満足度の改善といったビジネス成果で他社を上回っていることが確認されました。一方、取り組みが遅れている企業では、こうした成果の伸びが停滞しています。
AI技術の活用が急速に拡大する中で、責任あるAIを最も先進的に進めている企業ほど、その恩恵を最大限に享受しています。実際、企業の約8割が、イノベーション(81%)や業務効率・生産性(79%)が向上したと回答しています。さらに、約半数が、収益成長(54%)、コスト削減(48%)、従業員満足度向上(56%)といった成果を上げています。
責任あるAIの導入は、原則を明確化し、社内で共有することから始まります。その後、実践とガバナンス体制の構築へと進めていきます。原則から実践への移行は、責任あるAIに関する企業の方針を業務に根付かせるための「責任あるAI施策」を通じて実現されます。
回答企業は、10項目の施策のうち、平均7項目をすでに実施済みであり、未実施の企業も、大半が今後の実施を予定しています。全施策において、実施予定のない企業は2%未満でした。これらの結果から、企業が責任あるAIへの取り組みを積極的に進めており、今後さらに強化していく姿勢が明らかになりました。
さらに、本調査では、責任あるAIへの取り組みをより忠実に実践している企業ほど、企業の業績が向上する傾向があることが確認されました。例えば、リアルタイム監視システムを導入している企業は、収益成長を達成する可能性が34%高く、コスト削減の可能性も65%高いことが明らかになっています。
本調査は、2025年6月に実施された初回調査に続く第2回目です。企業が責任あるAIをどのように認識し、それをビジネスモデル、意思決定プロセス、イノベーション戦略にどう組み込んでいるかを評価することを目的としています。2025年8月から9月にかけて実施され、21カ国・11の役職にわたる975名の経営層(C-suite)からインサイトを収集しました。
その他の調査ハイライト:
AIリスクに対するコントロールの不備は好ましくない影響をもたらす要因となる
調査対象となった企業のほぼすべて(99%)が、AI関連のリスクによって財務的損失を経験しており、そのうちの約3分の2(64%)は100万米ドルを超える損失を被っています。平均損失額は控えめに見積もっても440万米ドルに上ります。
企業が直面するAIリスクの中で最も多く挙げられたのは、AI規制の不順守(57%)、サステナビリティ目標の悪影響(55%)、そしてバイアスのかかったアウトプット(53%)です。
C-suite全体が、適切なコントロール措置に対する認識が不十分である
AIに関連する5つのリスクに対して、適切なコントロール措置を選ぶようC-suiteに求めたところ、平均正答率はわずか12%でした。AIリスクの最終的な責任を担う最高リスク責任者(CRO)でさえ、11%と平均を下回っています。職場におけるエージェント型AI(自律的に行動するAI)の普及と、従業員による市民開発の広がりに伴い、リスクは今後さらに高まり、適切なコントロールの重要性も一層増していくと考えられます。
市民開発者の台頭により、ガバナンスや人材面の備えの不備が浮き彫りになっている
従業員によるAIエージェントの自主的な開発・導入が広がる中、企業はこうした市民開発者への対応に迫られています。回答企業の3分の2がこの活動を認めていますが、責任あるAIの原則に沿ってAIエージェントを導入するための全社的な方針や枠組みを正式に整備しているのは、60%にとどまっています。また、従業員によるAIエージェントの利用実態を十分に把握できていないとする企業も、半数に上ります。市民開発者の取り組みを積極的に推進する企業では、人間とAIの協働に備えた人材モデルを進化が必要という認識する傾向が見られました。
こうした企業は、新たなAIモデルに関して、「将来の人材不足」を最大の懸念事項として挙げており、その割合は31%に達し、他の企業21%を上回っています。また、人間とAIのハイブリッド労働力を管理する戦略策定にすでに着手している割合が50%と、他の企業26%を大きく上回っており、準備面で明確な違いが見られます。
EY Globalの Managing Partner(Growth & Innovation)であるRaj Sharmaのコメント:
「AIを適切に管理しないことは大きな損失を招きます。リスクを低減し、価値創出を加速するためには、責任あるAIを事業の中核に組み込むことが不可欠です。単なるコンプライアンス対応ではなく、信頼、イノベーション、差別化を推進する原動力です。こうした考え方を軸に事業活動を行う企業は、AI主導の経済において、生産性向上と収益成長を実現し、競争優位を確保できます」
EY Global Chief Innovation OfficerであるJoe Depaのコメント:
「企業がAI活用を進める中、責任ある姿勢を持ち続けることが、これまで以上に重要です。明確で倫理的な枠組みのもとでこそ、真のイノベーションが生まれます。企業には、単なる成長ではなく、正しさを伴う成長が求められています」
EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 リスク・コンサルティング パートナー 川勝 健司のコメント:
「今回の調査は、日本企業50社からの回答も含まれています。当回答企業においては、グローバル全体の傾向と同様の結果が見られました。一方、日本企業はガバナンスやポリシー策定は進んでいるものの、具体的な施策実装や教育には相対的に改善余地があるという傾向が見られるため、今後は個々のAI利用ケースに沿ったリスク施策の実施が必須と言えます。
EYは、2025年にアムステルダムで開催された、AIおよび新興技術をテーマとする世界最大規模の年次イベント「World Summit AI(世界AIサミット)」にて、本調査結果を発表しました。このサミットでは、世界のリーダー、イノベーションの推進者、そしてAIの専門家が一堂に会し、変革をもたらす可能性から潜在的なリスクに至るまで、AIの活用を多角的に探求します。また、恩恵を最大化し、責任あるAIの導入を推進するための戦略にも焦点を当てています」
調査に関するレポートの全文はこちらをご覧ください。
「責任あるAI」により投資を成果につなげる方責任ある | EY Japan
※本ニュースリリースは、2025年10月8 日(現地時間)にEYが発表したニュースリリースを翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。
英語版ニュースリリース: EY survey: companies advancing responsible AI governance linked to better business outcomes | EY – Global
本調査について
EYのグローバルネットワークにおいて、2025年7月から8月にかけて、「Responsible AI Pulse Survey(責任あるAIに関するパルス調査)」を実施しました。本調査は、現在および次世代のAI技術の活用に伴い、責任あるAIのあり方をどう考えているのか、経営層(C-suite)の見解をより深く理解することを目的としています。
対象者は、10の役職にわたる975人のC-suiteで、匿名のオンライン形式で行われました。
回答者は全員、自社内でAIに関する何らかの職務上の責任を担っています。
所属企業は、年間売上高が10億米ドルを超える規模で、主要セクターに属し、拠点は、Americas(北・中・南米)、Asia-Pacific(アジア・パシフィック)、およびEMEIA(欧州、中東、インド、アフリカ)の21の国・地域にわたります。
〈EYについて〉
EYは、クライアント、EYのメンバー、社会、そして地球のために新たな価値を創出するとともに、資本市場における信頼を確立していくことで、より良い社会の構築を目指しています。 データ、AI、および先進テクノロジーの活用により、EYのチームはクライアントが確信を持って未来を形づくるための支援を行い、現在、そして未来における喫緊の課題への解決策を導き出します。 EYのチームの活動領域は、アシュアランス、コンサルティング、税務、ストラテジー、トランザクションの全領域にわたります。蓄積した業界の知見やグローバルに連携したさまざまな分野にわたるネットワーク、多様なエコシステムパートナーに支えられ、150以上の国と地域でサービスを提供しています。
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