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「のどちんこ」に感謝! 安武郁子 食育実践ジャーナリスト 連載「口福の源」

筆者作画

 子どものころ、「のどちんこ!」と大声で言ってゲラゲラ笑った記憶がある方も多いのではないでしょうか(笑)。

 実はこの「のどちんこ」、正式名称は「口蓋垂(こうがいすい)」といい、体の中ではかなり重要な役割を担っています。

 口を大きく開けると、喉の奥でぶら下がっている小さな突起が見えます。あれが口蓋垂です。見た目はちょっとユーモラスですが、実は食べ物と空気の〝交通整理係〟なのです。

 食べ物は口から入って咽頭を通り、食道を通って胃へ向かいます。この時、口蓋垂がしっかりと鼻の通り道をふさぎ、食べ物が鼻に流入しないようにしてくれています。一方で、鼻から吸った空気は咽頭から喉頭を通り、気管へ入って肺に届きます。普段は口蓋垂がぶらぶらと下がっているおかげで、この空気の通り道=気道がちゃんと確保されているのです。

 つまり口蓋垂は、小さいけれど頼もしい〝門番〟。もし働きが弱まると、食べ物が気管に入り込み「誤嚥(ごえん)」を起こしやすくなり、誤嚥性肺炎など命にかかわる病気につながってしまうのです。

 では、どうしたら口蓋垂を元気に保てるのでしょうか?

 実は、口の周りの筋肉である口輪筋や表情筋とつながっています。ここが弱ると、口蓋垂の動きもにぶりがち。だから「しっかり噛(か)むこと」「よく話すこと」が一番のトレーニングになるのです。

 さらにもう一つ大切なのが「姿勢」です。背中を丸めてスマホを見ながら食べていませんか? 姿勢が悪いと、舌やのどの動きが制限され、噛む力や飲み込む力も弱くなります。足を床につけ、背筋をのばして座るだけで、嚥下(えんげ)の通り道がまっすぐになり、口蓋垂もしっかり働いてくれるのです。

 「よく噛む」というのは、ただ消化を助けるだけではありません。お口全体を鍛え、飲み込む力を守り、元気に年を重ねていくための秘訣(ひけつ)でもあります。

 今日の食卓では、ぜひ「一口30秒噛む」を意識してみてください。よく噛んで味わえば、口輪筋も口蓋垂も元気になり、姿勢も自然と整って、笑顔も若々しくアンチエイジングにつながります。

 楽しく食べ、楽しく話すこと。幸福は口から生まれる「口福」です。のどちんこに感謝しながら(笑)、今日も良食を楽しんでいきましょう。

【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.36からの転載】

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