ヨーグルトの継続摂取による血糖コントロール改善と、腸内細菌叢の関与を、大規模介入研究により示唆
6月5日
株式会社 明治
株式会社ザ・ファージ
ヨーグルトの継続摂取により血糖コントロールが改善することと、 腸内細菌叢の状態がその効果の出やすさに影響する可能性を、大規模介入研究により示唆 ~国際学術誌The Journal of Nutritionおよび第69回日本糖尿病学会年次学術集会で発表~
株式会社 明治(代表取締役社長:八尾 文二郎)と株式会社ザ・ファージ(代表取締役CEO:德永 翔平)は、国立大学法人 千葉大学大学院医学研究院 川上英良教授との共同研究で、Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus 2038株とStreptococcus thermophilus 1131株で発酵させたヨーグルト(以下、LB2038株とST1131株で発酵させたヨーグルト)の摂取が、血糖動態(血糖コントロールの状態)および腸内細菌叢(腸内フローラ)におよぼす影響を大規模介入研究により検討しました。
その結果、同ヨーグルトの継続摂取後に、平均血糖値や血糖波形(血糖値の1日の推移)の特性を示す指標が改善し、酪酸産生菌をはじめとする代謝機能との関連が報告されている腸内細菌が増加することが明らかになりました。また、摂取開始前の腸内細菌叢の違いが、血糖動態変化の個人差と関連する可能性が示唆されました。
当研究成果は、国際学術誌The Journal of Nutritionにおいて5月19日にオンライン掲載されました。また、5月22日に第69回日本糖尿病学会年次学術集会にて口頭発表を行いました。
【研究成果の概要】
非糖尿病の日本人成人を対象に、84日間のヨーグルト摂取が血糖動態に与える影響を持続血糖モニタリング(CGM)で評価しました。また、介入による腸内細菌叢の変化や、摂取開始前の腸内細菌叢と血糖改善効果の個人差との関連も調べました。その結果、以下が示されました。
1.CGMの3指標(平均血糖値、血糖波形の振幅、血糖波形のなめらかさ)が改善しました。
2.腸内細菌叢は酪酸産生菌が増加し、代謝的に良好な状態に変化したことが示唆されました。
酪酸産生菌は、腸内環境や代謝機能の改善に関わることが注目されている腸内細菌群です。
3.摂取開始前の酪酸産生菌が多い人ほど血糖波形の改善効果が高い可能性が示唆されました。
【研究成果の活用】
ヨーグルト摂取は、糖尿病をはじめとする代謝性疾患のリスク低下と関連することが、これまで多くの観察研究で報告されています。2024年には米国食品医薬品局がヨーグルトに対する2型糖尿病のリスク軽減表示を条件付きで認可しました。当社も、ヨーグルト摂取により糖尿病関連の医療費を削減できることを示すシミュレーション研究結果を昨年発表しました。本研究では、ヨーグルトの継続摂取後に、血糖動態および腸内細菌叢に改善が認められました。これらの結果は、ヨーグルトが整腸作用に加え、血糖動態の改善に関与する可能性を示すものです。また、摂取開始前の腸内細菌叢が血糖動態変化の個人差と関連していたことから、今後、腸内細菌叢に基づく個別化栄養介入戦略の開発につながることが期待されます。
なお本研究成果は、株式会社 明治のオープンイノベーション推進プログラム「明治アクセラレーター」をきっかけに2023年3月から開始した協業によるものです。
【研究の目的】
ヨーグルト摂取は、糖尿病、肥満、心血管疾患などのリスク低下と関連することが報告されています。一方で、ヨーグルト摂取が日常生活下の血糖変動パターンに与える影響を、CGMを用いて詳細に評価した研究は限られていました。近年、平均血糖値や血糖波形の振幅が正常でも、血糖波形がなめらかに変動しなくなる集団において糖尿病合併症のリスクが増加することが報告されていますが、このような血糖波形の特徴に対して、ヨーグルト摂取がどのような影響を与えるかは調べられてきませんでした。また、ヨーグルト摂取の効果の個人差への腸内細菌叢の関与は十分に検討されていませんでした。
発表内容
【タイトル】
論文:Associations Between Yogurt Consumption, Gut Microbiota Composition, and Glucose Dynamics: A Single-Arm 84-Day Intervention Study Using Continuous Glucose Monitoring. (Sugimoto et al., The Journal of Nutrition. 2026 May 19, 101572 in press)
学会:発酵乳の摂取と血糖動態および腸内細菌叢の変化との関連の検討 ―持続血糖モニタリングを用いた単群84日間介入研究―(第69回日本糖尿病学会年次学術集会)
【方法】
非糖尿病成人303名を対象にした単群介入研究で、84日間毎日、朝食時にLB2038株とST1131株で発酵させたヨーグルト200 gを摂取してもらい、FreeStyle LibreによるCGMデータを15分間隔で取得しました。血糖動態の評価には、平均血糖値(Mean)、血糖波形の振幅(Std)、血糖波形のなめらかさ(AC_Var)の3指標を用いました。CGM由来の指標は多数報告されていますが、多くの指標は重複する情報を含むため多くの指標がこの3指標だけで説明できることに加え、3指標はそれぞれ独立して糖尿病合併症と関連することが報告されているため※、この3指標を調べました。
腸内細菌叢は便の16S rRNA遺伝子解析を介入の前後に行いました。また、背景因子として、臨床検査値や2型糖尿病に関連する遺伝的指標も調べました。
【結果】
・ヨーグルトの摂取後、平均血糖値(Mean)、血糖波形の振幅(Std)、血糖波形のなめらかさ(AC_Var) のいずれもが有意に改善しました(図3)。
・臨床検査値や遺伝的指標は血糖応答の個人差と有意な関連がありませんでしたが、摂取開始前の酪酸産生菌(Faecalibacterium, Coprococcus, Butyricicoccusなど)が多いほど血糖動態が改善しやすいことが示唆されました(図4)。
・ヨーグルト摂取後、酪酸産生菌をはじめとする代謝機能との関連が報告されている腸内細菌が増加しました(図5)。
図3.ヨーグルト摂取開始後の最初の10日間 (First) および介入期間の最後の10日間 (Last)のCGM由来3指標の推移.平均血糖値(Mean)、血糖波形の振幅(Std)、血糖波形のなめらかさ(AC_Var)の3指標は摂取後に有意に改善した。開始10日間および終了10日間のCGMデータを取得できた170名を解析対象とした。
図4.ヨーグルト摂取開始前の臨床指標や腸内細菌叢と各時点でのCGM由来3指標の変化の相関.
橙は正の相関、青は負の相関を示し、*は有意な相関であることを表す。4つの期間(第1期〜第4期)において8日以上の有効なCGMデータを取得できた158名を解析対象とした。
図5.ヨーグルト摂取前後の腸内細菌叢の変化.青字の腸内細菌は摂取後有意に増加し、赤字の腸内細菌は有意に減少した。横軸は値の変動の程度、縦軸は統計学的有意差の程度を示す。摂取前後で便検体を回収できた298名を解析対象とした。
【考察】
ヨーグルトの継続摂取後、CGM指標で評価した血糖動態が改善し、腸内細菌叢が代謝的に好ましい方向に変化することが示唆されました。血糖応答の個人差は、臨床検査値や遺伝的指標とは関連せず、ベースラインの腸内細菌叢組成と関連していました。これらの結果は、糖尿病発症前段階においてヨーグルト摂取が有用であることを示唆しており、腸内細菌叢に基づく個別化介入戦略に繋がる可能性も考えられます。
※Sugimoto et al., Communications Medicine 2026; eLife 2026; Communications Medicine 2025




















