セラミックデバイスを用いて熱を計算資源として活用するリザバーコンピューティングを実証
京都大学×京セラ共同開発
国立大学法人京都大学
京セラ株式会社
京都大学×京セラ共同開発 セラミックデバイスを用いて熱を計算資源として活用する リザバーコンピューティングを実証
国立大学法人京都大学(総長:湊 長博、以下:京都大学)工学研究科の廣谷潤准教授と京セラ株式会社(代表取締役社長:谷本 秀夫、以下:京セラ)は共同で、セラミックデバイスを用いて「熱」をAIの計算資源として活用するリザバーコンピューティング技術の実証に成功しました。
●研究概要
熱は、私たちの生活に身近なエネルギーであり、衣服、食事、住居などさまざまな場面で使われています。しかし、日本のように資源が限られた国では、「熱エネルギーをいかに有効に活用するか」が重要な課題です。一方で、近年AIの学習や推論を担うデータセンターの消費電力は、生成AIの普及により急増しており、社会的な問題となっています。
京都大学と京セラは、これまで廃棄されてきた排熱をAIの「計算資源」に変換し利活用するという新しい発想のもと、熱そのものを使って情報処理を行う技術を開発しました。
我々はこの技術を、『サーマルリザバーコンピューティング(Thermal Reservoir Computing、以下:TRC)』と呼称しており、熱の広がり(拡散)をそのまま時系列データとして利用し、従来は無駄になっていた熱そのものをAIの「計算資源」に変えることを可能にする技術の確立と省エネルギー社会の実現を目指しています。このTRC技術を活用することでさまざまなモノの状態判定を現場で素早く行うことが期待できるだけでなく、このTRC技術を搭載したエッジAI処理によりデータ量を 1/10〜1/100 に削減できれば、通信に必要な電力やデータ転送の遅延を大幅に抑えることも可能です。
●共同開発の体制と成果
本技術開発では、京都大学が熱伝導シミュレーション(有限要素解析)とリザバーコンピューティングの性能予測を行い、セラミックデバイスを用いたTRCの基本設計を担当しました。京セラは、自社の高精度セラミックパッケージ設計・製造技術を生かし、実際のセラミックデバイスを開発しました。その後、京セラで製造したデバイスを用いて京都大学で実証実験を行った結果、リザバーコンピューティングとして機能することを確認しました。
今後、両者はさらなる性能向上と産業応用に向けて、共同研究を継続してまいります。
●将来展望
TRCを用いたエッジAI技術は、「熱を減らす」だけでなく「熱で計算する」ことを実現する新しい仕組みです。この技術により排熱のムダとAI計算のエネルギーロスという二つの社会課題を同時に解決できる可能性があります。今後は、製品が発する熱や温度変化に対応する技術として、電子機器、自動車、情報通信、宇宙航空など、幅広い分野での応用が期待されます。
京都大学と京セラは、本技術をもとにさらなる実証実験(PoC)やニーズ探索を進め、実用化に向けた研究開発を加速してまいります。
この研究開発の成果の一部は、東京ビッグサイトで2025年12月17日(水)~19日(金)の期間で開催されるSEMICON Japan 2025のアカデミアエリア(小間番号E6844)にて展示と説明を行います。
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