厳しく裁くより、見守る姿勢が大切? 評判の“中立評価”が人の協力を支えていた
研究成果が国際的なオンライン学術誌PLOS One に掲載
2025年8月18日
立正大学(学校法人立正大学学園)
概要
立正大学(本部:東京都品川区)経営学部の山本仁志教授を中心とする研究チームは、人が他人の行動をどう評価し、それが協力行動にどうつながるのかを詳しく調べました。
これまでの理論では、評判は「良い」か「悪い」かの2つだけで判断されるという前提をおくことが多くありました。しかし今回の実験では、評判は「良い」「中立」「悪い」の3段階で扱われており、人々は他人の行動を少しずつ慎重に評価していることがわかりました。またこうした評判の変化は、一気に良くなったり悪くなったりするのではなく、段階的に少しずつ変わるという特徴がありました。
研究成果は2025年8月8日に、国際的なオンライン学術誌PLOS One に掲載されました。
背景
私たちは日々、誰かを助けたり、頼みを断ったりしながら暮らしています。こうした協力が社会全体で続くためには、「あの人は信頼できる」といった評判が重要な役割を果たします。これまで理論研究では、協力を持続させる評判情報の複雑な多層構造が提案されてきましたが、実験研究は単純化されたモデルにとどまることが多く、このギャップを埋めることが課題でした。
本研究では、現実社会における評判に必要な情報の種類や粒度を明らかにすることを目的としました。
主な発見
シナリオ実験と厳密な数学的解析を組み合わせた結果、評判は「良い」か「悪い」かの2つだけで判断されるのではなく、「良い・中立・悪い」の3段階で扱われており、協力や裏切り行動に応じて段階的に変化することが示されました。研究グループは発見された評価ルールを”Gradating”と名付けました。
たとえば、「評判が良くない人の頼みを断った」ような“正当な断り方”は、これまでの理論研究では「良い」と評価されることが示唆されてきましたが、この評価ルールでは中立的に評価されることが明らかになりました。また、理論分析により、良いか中立の評判を持つ相手には協力し、悪い評判を持つ相手には裏切る「寛容な行動ルール」が条件次第で支配的となり、協力が安定し長続きすることが示されました。
研究の意義
この研究は、「悪いことをした人には厳しく接するべき」という単純な考え方に再考を促すものです。実際の社会では、人は常に正義の味方でもなければ、悪人でもなく、その間に揺れ動く存在です。今回の結果は、そんな複雑な現実に即した“評判の見方”が、人と人との信頼関係を長く保つカギになっていることを示しています。
今後の展望
研究チームを率いる山本教授は「今後、3値で表現される評判ダイナミクスが文化差を超えて普遍的なものであるのかを検証する必要がある」と述べています。また、こうした知見は、デジタルプラットフォームやグローバル社会における協力維持の仕組みづくりにも活用される可能性があります。
論文情報
掲載誌:PLOS One
論文タイトル:Gradual reputation dynamics evolve and sustain cooperation in indirect reciprocity
著者:Hitoshi Yamamoto, Isamu Okada, Takahisa Suzuki
掲載日: 2025年8月8日 (現地時間)
DOI:10.1371/journal.pone.0329742
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