関税問題が世界20カ国の消費者の生活不安を助長
ーKANTARによるグローバルオリジナルレポート発表 ー
2025年5月14日
合同会社カンター・ジャパン
回答者の62%は物価上昇の原因を経済政策に求め、86%はライフスタイルを変えている
米国製品ボイコットの検討も
マーケティングデータおよびアナリティクスの世界的リーディングカンパニーであるカンター(KANTAR 本社英国、ロンドン)は、2025年5月2日(金)20カ国の10,200人以上を対象とした関税に関する消費者センチメントバロメータによる傾向を発表した。この調査によると、関税の脅威はすでに現在高まっている消費者の生活費に対する懸念に拍車をかけており、調査対象国76%の人々が、これらの貿易政策が個人に及ぼす影響を懸念していることが示された。
カンターの消費者センチメントバロメーターでは、世界の消費者の最大の懸念は経済(88%)とインフレ(85%)であることを示している。 そして、関税は現在進行中の生活費問題をさらに悪化させる恐れがあり、個人消費への脅威は間もなく現実のものとなる可能性がある。 本調査対象者の32%は、毎月の家計と支出をやりくりすることが昨年よりも難しくなっていることを回答、また45%は、こうした基本的な家計のやりくりを果たすことができない、あるいはやりくりに苦慮していると回答している。
すでに調査対象者の凡そ半数46%は、昨年の今頃よりも景気が悪くなっていると考えている。 関税は店頭売価に影響を及ぼし始めたばかりだが、当調査の回答を鑑みると、すでに支出を削減するために自分たちの消費行動を変え始めていることが見て取れる。例えば回答者の40%が値下げやキャンペーンを積極的に探している、35%がより安い店への買い替えを行っている、といった具合だ。
今後の展望 – 報復に対する広範な支持
本調査によると、調査対象者の86%は物価上昇のためにライフスタイルや買い物を変える必要があると考えている。 1年後の経済状況が良くなっていると考える人は、調査対象者のわずか4人に1人、25%に過ぎない。
71%の人々が関税の混乱は米政権のせいだと回答しており、55%は自国政府のこれまでの対応には概ね好意的である。 また、アメリカ人の58%はアメリカ政府のやり方を支持しているのに対し、他国では自国政府はアメリカの要求に応じるべきだと考えている人は13%に過ぎない。 報復措置を好ましいものだとする回答の本調査対象国平均は38%、カナダ61%、フランス59%、メキシコ57%である。
米国ブランドは後手に回るか
米国外の対象者の56%は関税引き上げに対応して、より現地の製品やサービスを購入する意向である。 この傾向は、アメリカの隣国であるカナダ66%、メキシコ69%、フィリピン80%、インド77%、南アフリカ71%で特に顕著である。 また、アメリカ以外の国々では37%の人々がすでにアメリカの製品やサービスの購入をやめる意向を示している。 一方、中国の消費者の81%は、米国ブランドに対する購入意欲は減退していると回答した。
企業は何をすべきか。KANTARの示唆
カンターのチーフ・リサーチャー、ジェーン・オスラーによる示唆は以下の通り。 「人々はピンチを感じており、関税はこの問題をさらに悪化させています。 一方、このような消費者の不安は、新製品や新サービス、価格体系の変更、関連製品カテゴリーや新領域への進出など、企業がイノベーションを起こす機会を生み出します。 企業は、人々の機能的・感情的なニーズとの関連性を維持する方法や、競合他社に打ち勝つ方法を常に見直す必要があります。」
「そして、企業はコミュニケーションを続けるべきです。 私たちは過去の危機の中で、たとえ6ヶ月間であっても広告を削減すれば、売上と成長に悪影響を及ぼし、その回復には何年もかかることを目の当たりにしています。」
「大半の消費者は関税について米政権の経済政策を非難しているが、一方で、ブランドもまたその矢面に立たされています。 5人に2人以上は、世の中の物価上昇に関し、物価危機に乗じ企業が過剰に請求しているからだと考えています。 それが事実であろうとなかろうと、ブランドにとっては懸念すべき事態です。 この為、マーケティング担当者は、関税の問題であっても価格設定を正しく行う必要があります。」
以上
【Kantar’s Consumer Sentiment Barometer:消費者センチメントバロメータについて】
調査概要
・19市場:オーストラリア、ブラジル、カナダ、フランス、ドイツ、インド、イタリア、日本、韓国、メキシコ、オランダ、フィリピン、サウジアラビア、シンガポール、南アフリカ、スペイン、UAE、英国、各500サンプル、米国1000サンプル、及び中国Kantar Liveにて別途調査。
・調査対象:一般生活者
・調査期間:第一回2025年4月16日~25日 *次回未定
聴取内容
・消費意識態度: 現在の感情、懸念と楽観のレベル、現在の問題、経済見通し、物価認識、雇用の安定、生活費、政府とブランドがすべきこと、リスクと関税
・消費支出行動: 現在の支出、最近の購入品、価格変動と景気後退の見通しによる行動の変化、貯蓄額
【カンターについて】
カンターは、世界をリードするマーケティングデータおよびアナリティクス・ビジネス世界のトップ企業にとって不可欠なブランド・パートナーです。最も意味のある態度・行動データと深い専門知識、高度なアナリティクスを組み合わせ、人々がどのように考え、行動するかを明らかにします。私たちは、クライアント企業の皆様の市場理解及び未来を形作るマーケティング戦略を支援いたします。 カンターグローバルウェブサイト:www.kantar.com
【カンター・ジャパン会社概要】
社名:合同会社カンター・ジャパン
本社:東京都渋谷区代々木2-1-1 新宿マインズタワー6F
事業内容:市場調査・コンサルティング
マネージング・ディレクター 佐々木 亨
カンタージャパンウェブサイト:www.kantar.jp
