JICNが福岡で地域脱炭素化イベント 「百年ソーラー九州」企業ら熱弁
官民ファンドの脱炭素化支援機構(JICN)は2月19日、「地域の魅力を活用した脱炭素ビジネスの可能性」と題したイベントを福岡市内で開いた。専門家の講演や、地元で進む「百年ソーラー九州事業」を事例としたパネルディスカッションがあり、現地会場では九州全域などから参加した金融機関や企業の担当者100人余りが聞き入った。
日本政府が、2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにする脱炭素社会の実現を目指す中、地域の脱炭素プロジェクトをビジネス化する「地域脱炭素」の重要性が増大している。JICNはこれに沿う取り組みを促進するため、地域では初めて福岡でイベントを企画した。
国内では12年に始まったFIT制度(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)に伴い、発電量1メガワット(MW)未満の中小型太陽光発電所が急増したが、FIT期間が満了になる32年以降、大半が廃棄・放棄される懸念が高まっている。とりわけ九州は、中小型太陽光発電所の割合が全国的にも高いのが課題だ。百年ソーラー九州事業は、発電所の性能評価から性能再生(リパワリング)までを担う東大発スタートアップのヒラソル・エナジーと、地元九州の中核企業、金融機関がタッグを組む。27年までに10MW分の発電所を取得・修繕した上で、一般企業と売電契約を締結して太陽光発電を安定的に継続させるプロジェクトだ。昨年から始動した。
パネルディスカッションで、ヒラソル・エナジーの李旻代表取締役は「最初のステップで一番難しかったのは投資活動。パートナーに恵まれ、売電先やリスクを協議しながら一つずつ問題をつぶし、案件を組成できた」と説明。「夢の部分だけでなく、現実的な支えが必要。投資対効果をはかって還元できるモデルの作り方に関し、(タッグを組む)皆さまにいただく指導・支援は大切なもの」と話した。
■苦労乗り越え、それぞれが役割果たす
地元中核企業として参画するJR九州は、これまでも系統用蓄電池による再エネ事業などに取り組んできたが、太陽光発電所のリパワリングには知見がない。赤木由美取締役常務執行役員は、「自社だけでは解決できない、あるいは参入できないようなビジネスも、それぞれが役割を果たすことによってプロジェクトを組めることを証明したい」と述べ、九州の脱炭素化に向け力を合わせる意義を強調。
「初めての事業、“想定の想定”を現実的なものにするため、個別のシミュレーションを作り、契約締結まで皆でプロジェクションを叩く時間を過ごした」と語ったのは、肥後銀行の藤本和裕・法人コンサルティング部副部長。先行事例のある山梨にも足を運び、問題を体で理解したという。「チャレンジングなことをしないと、脱炭素目標は達成できない。これからも苦闘しながらチームとしてやっていきたい」と意気込んだ。
プロジェクトの枠組みを作る際の橋渡しをした三菱UFJ信託銀行の鶴岡秀規法人マーケット統括部副部長は、「地域の中核企業と金融機関、スタートアップによる座組みのプロジェクトファイナンスは、あまりない。しっかり成功させ、これからの参考になるような好事例にできれば」と力を込めた。
パネルディスカッションに先立ち、九州大学主幹教授でユヌス&椎木ソーシャル・ビジネス研究センター長の馬奈木俊介氏、環境省地域脱炭素政策調整担当参事官の浜島直子氏が講演した。馬奈木氏は「地域の価値の見える化」と題し、自然資本の価値を、予測を含めたデータとして可視化し、その地域の経済的な利点と環境保全を両立することの必要性を指摘。浜島氏は、「地域脱炭素のこれまでとこれから」を演題に、政府の地域脱炭素化施策の詳細な方向性や現状を、農業や畜産などと連動した具体的な成功事例を交えて分かりやすく解説した。
■地域に脱炭素化のポテンシャル
JICNの田吉禎彦社長は「自然資本が非常に大事な時代になり、それを持つ地域は脱炭素化の主体になるポテンシャルを一番持っている。自然資本を活用したビジネスを地域としてどう生かすかを、スタートアップや各地域を代表する企業がいろいろ考えていくことが、とても重要だ」と指摘。今回イベントを行った九州だけでなく、全国で支援を強めたいとしている。
JICNは22年に設立した環境省所管の官民ファンド。国の財政投融資と民間からの出資金を原資に、カーボンニュートラル関連ビジネスを資金供給などで支援する。今年1月時点の民間株主は83社(うち金融機関56機関、事業会社27社)で、民間からの出資金総額は109億5000万円。九州地域では、福岡銀行・西日本シティ銀行・佐賀銀行・大分銀行・宮崎銀行・宮崎太陽銀行・肥後銀行・鹿児島銀行・西部ガスなどが出資している。


















