「書評」『何を問う? 令和の米騒動 (日本農業の動き 227)』 足踏み状態の水田政策 共同通信アグリラボ
1年前の通常国会で自民党は「水田活用の直接支払交付金(水活)の根本的な見直し」を明言し、これを受けて政府は「27年度からの新たな水田政策の方向性」を公表した。「水活見直し」は、運用次第では減反廃止に直結する大きな政策転換であり、具体的な制度設計に入る前に十分な議論が必要だ。本来なら今頃には、新たな政策の骨格が示され、国会で議論が白熱していなくてはならない。このままでは27年度予算編成に向けた「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)をまとめる6月に間に合わない。
制度設計が足踏み状態になっている最大の理由は、不安定な政治情勢だ。昨夏の参院議員選挙以降、自民党の総裁選挙と高市早苗内閣の発足、衆院の解散・総選挙と続き、新たな政策どころか、その前提となる米騒動の総括さえ満足にできていない。ただ、新政策の停滞には良いことが一つだけある。令和の米騒動を検証する十分な時間ができたことだ。昨年末には主な課題が出そろったと言える。
本書は25年6月から8月にかけて「農政ジャーナリストの会」が主催した4回の研究会の採録だ。講師は、米不足を早い段階から予想した三菱総合研究所の稲垣公雄研究理事、全国の水田に足を運び続け政策を知り尽くしている荒幡克己日本国際学園大学教授、「令和の百姓一揆」に参画した新潟県上越市の稲作農家の天明伸浩氏、生活クラブ連合会の村上彰一会長だ。
稲垣氏と荒幡氏は、当時それぞれ米騒動をテーマにした著作を発表しており、最新の研究成果を踏まえている。天明氏と村上氏は生産者と消費者という立場から具体的な課題を指摘している。本書を読めば米騒動の全容と分析を理解できるが、昨年秋以降は「米の量は足りているのに価格は高止まり」という需給バランスだけでは説明できない現象が起きている。年明けとともに米価は下落に向かう気配が強まっており、水田政策を見直す際には、価格形成に関する追加的な研究も必要だ。
巻末には、第40回農業ジャーナリスト賞を授賞した秋田魁新報社の連載企画「地方創生 失われた10年とこれから」など7作品の紹介が掲載され、生産現場の報道状況を伝えている。本書は、一般社団法人 農山漁村文化協会(農文協)から2025年11月10日に出版された。1320円(税込み)。
(共同通信アグリラボ編集長 石井勇人)
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