開湯1800年、熊野古道へつながる温泉地 新鮮な硫黄泉を掛け流す料理自慢の宿 「湯の峰温泉 民宿 瀧よし」 【コラム:おんせん! オンセン! 温泉!】
ようやく日中の気温が30度を下回る日が多くなってきました。朝晩の涼しさは、秋を感じさせてくれます。「行楽の秋」の到来ですね。この季節の爽やかな日差しは、本当に気持ちが良いです。いつもより遠出をして、豊かな自然の中で過ごしたい、という方も多いのではないでしょうか。
今回ご紹介する温泉は、和歌山県の紀伊山地に湧く「湯の峰温泉 民宿 瀧よし」。熊野古道へつながる日本最古と言われる温泉地に立つ料理自慢の温泉民宿です。
湯の峰温泉は、和歌山県田辺市の山あいに位置する温泉地。1800年以上の歴史を誇り、古くから熊野詣での旅人が身を清める「湯垢離場(ゆごりば)」として利用されてきました。深い森に囲まれた温泉街は、川沿いに十数軒の温泉宿が軒を連ね、昔ながらの湯治場の風情を残します。現在では、海外からも多くの旅行者が訪れる人気の温泉地です。

「民宿 瀧よし」の外観

宿泊したベッドタイプの和室
今回ご紹介する「民宿 瀧よし」は、そんな湯の峰温泉の温泉街入り口にあります。4階建ての建物は、和モダンなホテルのような外観。館内へ入ると上品な居酒屋のような雰囲気です。客室は全7室とこぢんまりとしていますが、スペースを有効活用しており、ゆったりと感じられます。宿泊した和室には、シモンズのベッドが置かれ寝心地抜群、壁面のアクセントクロスもおしゃれです。

シックな雰囲気の「男女別内湯」

熱々の源泉を掛け流す「湯口」
お風呂は、男女別の内湯のみ。5、6人が入れそうな湯船が一つの浴室は、御影石などの石タイルをふんだんに使用し、シンプルかつシックなつくりです。ホースの湯口からは、湯の峰の伝統的な源泉が掛け流されています。そのままだと80度以上の高温のため、加水を行った上で、浴槽では熱めの適温に調整、できるだけフレッシュな状態で、温泉を楽しむことができます。
泉質は、含硫黄-ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉。無色透明なお湯は、爽やかな甘さを感じさせる濃厚な硫黄の香りが漂います。源泉を口に含んでみると、お吸い物のような塩ダシの味わいに硫黄の甘い風味が相まって、出来たての玉子スープを飲んでいるようでした。ツルツルすべすべと、少しとろみのある感触が心地よく、湯上りはさっぱりと爽快感がありつつも、モチっとしたプルプル肌を実感できました。

夕食一例

イカとキハダマグロのお造り

野菜とエビの天ぷら
良質な温泉を堪能できる「民宿 瀧よし」は、料理自慢の宿でもあります。魚の仲買人でもある若旦那の仕入れる新鮮な魚介類と、旬の食材を使った女将(おかみ)さんの手料理が名物です。
この日の夕食は、ブリの照り焼き、イカとキハダマグロのお造り、豚肉の寄せ鍋、野菜とエビの天ぷら、ツヤツヤなご飯などが並びました。どれもおいしくいただきましたが、イカはとても新鮮で、コリコリとした食感が絶品でした。源泉を利用した「焼酎の温泉割り」もあり、温泉の硫黄風味と焼酎の芋の香りが抜群の相性で、宿の料理にもぴったり。結局、3杯おかわりするほどハマってしまいました。

朝食一例 源泉で炊いたお粥も登場
朝食には、そんな源泉で炊いたお粥(かゆ)が登場。温泉の塩気と硫黄の香りが効いていて、個人的に大好きな味わいでした。そのほか、食後には源泉コーヒーもいただくことができ、入浴して温泉を楽しむだけではなく、飲食で温泉を味わうこともできました。

世界遺産の一部の「つぼ湯」

湯治場の風情を残す温泉街
暑さも落ち着いてくる秋は、熊野古道を散策するのにおすすめのシーズンです。温泉街には、「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部としてユネスコ世界遺産に登録された温泉「つぼ湯」があり、気軽に入浴することができます。熊野本宮大社への参拝に熊野古道散策、温泉、食事と、「行楽の秋」をアクティブに楽しんでみてはいかがでしょうか。
【湯の峰温泉 民宿 瀧よし】
住所 和歌山県田辺市本宮町湯峰260-4
電話番号 0735-42-1515
【泉質】
含硫黄-ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉(低張性 中性 高温泉)/泉温84.8度/pH:6.8/湧出状況:自然湧出/湧出量:測定不能/加水:あり/加温:なし/循環:なし/消毒:あり ◆掛け流し
【筆者略歴】
小松 歩(こまつ あゆむ) 東京生まれ。温泉ソムリエ(マスター★)、温泉入浴指導員、温泉観光実践士。交通事故の後遺症のリハビリで湯治を体験し、温泉に目覚める(知床での車中、ヒグマに衝突し頚椎骨折)。現在、総入湯数は2,500以上。好きな温泉は草津温泉、古遠部温泉(青森県)