KK KYODO NEWS SITE

ニュースサイト
コーポレートサイト
search icon
search icon

豪農産品、米関税で優遇 NZは15%に引き上げで明暗別れる  NNAオーストラリア

 トランプ米大統領が7日から適用した追加関税で、関税引き上げ対象にオーストラリアは含まれず、最も低い10%の関税率を維持することになった。一方でニュージーランド(NZ)の関税は10%から15%に引き上げられた。米国市場で農産品の競争力が高まり、オーストラリア産品は輸出が伸びると期待されている。一方でNZへの引き上げは、ワイン産業などに深刻な影響を及ぼすとみられており、両国の明暗がくっきり分かれた形だ。【ウェルス編集部】

 今回の措置では、カナダ製品には35%、ブラジルには50%など、計69カ国・地域が関税引き上げ対象となった。ファレル貿易相は、「ワインや牛肉、ラム肉、小麦などのオーストラリア産の農産品は米国内において相対的に安くなり、競争力が増すことになるだろう」と期待感を示した。

 米国はオーストラリアにとって、金額ベースで第2位の農産物輸出市場で、2023/24年度(6月期)の輸出額は70億豪ドル(1豪ドル=約95円)を超えた。 

豪に追い風、米市場で優位に

 独立系シンクタンクのオーストラリア農業研究所(AFI)が行ったモデリングでは、農業は米関税を他の経済セクターよりもうまく乗り切る可能性が高いと予想されている。

 同研究所によると、豪ドル安の影響も受け、輸出競争力が高まるオーストラリア産品の農作物輸出は約1%増加し、農業投資も1.2%押し上げられる。

 AFIによると、オーストラリア経済全体を見た場合は米国の関税によって国内総生産(GDP)や投資に悪影響が及ぶものの、農業については影響を上手く回避できる可能性が高いという。

輸出先の再編、日本の重要性高まる?

 米国の関税政策は、長期的には農業貿易の構造にも影響を与えるとみられている。AFIによると、日本向けの農産品輸出が今後10年間に10%増加する見通しだ。欧州連合(EU)やその他の経済協力開発機構(OECD)加盟国では、小幅な増加が見込まれる。一方で米国向け輸出は約6%減少するとの試算が出ている。

■NZへの影響深刻に、ワイン業界など

 一方、NZは深刻な影響を受ける見込みだ。対米輸出額は年間約90億NZドル(1NZドル=約87円)と、米国は国別で2位となっている。マクレー貿易相は、NZの輸出業者は10%の関税は吸収できたものの、15%ではその影響が大きくなると懸念を示した。

 特に懸念が大きいのはワイン産業だ。米国はNZにとって最大のワイン輸出先で、2024年の輸出額は約7億9000万NZドルと、全体の約4割を占める。15年には約3億7200万NZドルで、9年間で211%もの大幅な伸びを記録してきた。しかし、米国による新たな関税措置により、この成長に急ブレーキがかかる可能性がある。

 ワイン業界団体NZワイングロワーズ(NZWG)は、今回の関税によって発生する追加コストを1億1200万NZドルに上ると試算した。同団体は、競合国であるオーストラリア、チリ、アルゼンチンなどには依然として10%の関税率が課されているため、NZは関税面で不利な立場に置かれると強い懸念を示した。

乳業大手フォンテラは「残念」

 酪農業も輸出の約25%を占める重要産業で、影響は免れない。米国は、乳業最大手フォンテラにとって、輸出先トップ5に入る重要市場だ。フォンテラの国際原料部門の責任者、アレン氏によれば、米国は輸出先の中でも上位5位に入る重要な市場で、特にここ数年は大きく伸びているという。

 関税引き上げについて、フォンテラは「残念だ」とコメント。ただ、同社のグローバル対外関係担当グループディレクター、タッカー氏は「世界的な乳製品需要は依然強く、幅広い製品と市場構成を持つ同社は変化に柔軟に対応できる」と強調した。

 米国が最大の輸出先となるNZ産の赤身肉でも、懸念が広がっている。財界団体のNZ国際ビジネスフォーラム(NZIBF)のロクスバーグ事務局長は、「オーストラリアやウルグアイ、アルゼンチンなどの競合国に対して競争力を失う」と危機感を示した。

(オセアニア農業専門誌ウェルス(Wealth) 8月8日号掲載)

【ウェルス(Wealth)】 NNAオーストラリアが発行する週刊のオセアニア農業専門誌です。

編集部からのお知らせ

新着情報

あわせて読みたい

「誰もが輝いて働く社会へ」の特集記事を読む