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【輪島だからこそ、できること】(上) 動き出す蔵、もう一度戻ってきた味

戻ってきた「奥能登の白菊」 <白藤酒造店>

 昨年、輪島の酒蔵で初めて震災後に酒造りを再開した白藤酒造店。2シーズン目も、よみがえった直火式のかまどは熱い湯気を上げて酒米を蒸し、看板ブランド「奥能登の白菊」を含む7種を出荷する。震災前の10種前後には届かないものの、昨年の4種から大きく前進した。

震災から復活を遂げた蔵で仕込んだ看板ブランドの「奥能登の白菊」を手にする、9代目社長の白藤喜一さん

 「飲んでいただいたお客様の判断かとは思いますが、納得がいくものができている感触があります」。9代目の白藤喜一さんの表情に、充実感がにじむ。愛好者が特に待ちわびたフラッグシップの「奥能登の白雪 純米吟醸」は評判が良く、たちまち売り切れてしまった。
 上品な口当たりと優しい甘みが特徴の「奥能登の白菊」を造り出す大きな要素のひとつが、蔵の裏側にある寺から引く天然の水。「ご先祖様が手で掘った洞窟みたいな穴から染み出る丸みのある軟水。代々、それを生かした酒造りをしてきたんです」。震災で配管の一部が損傷したが、修復され、以前通りのきれいな水が得られている。江戸時代末期に白藤酒造店ができた原点でもある水源の恵みも取り込む酒は、「白いご飯を食べながらおかずを食べる、そんな感覚で飲んでほしい。常温やちょっとぬるめの、温めて味わいが分かる温度帯でおいしく飲めるので」

「奥能登の白菊」シリーズ4種。右から順に、酒米・八反錦の特別純米酒、山田錦と五百万石の特別純米酒、純米大吟醸酒、貴醸酒

 今秋からは、3シーズン目の仕込みがスタートする。震災前の8割程度まで増やす計画だが、道のりが平たんなわけではない。

 震災前に5人いた蔵人のうち3人が輪島を離れ、蔵は現在、自らも杜氏である喜一さんと妻の暁子さん夫婦と残った2人の4人体制だ。そのうち1人は漁師業との兼業で、人手の確保には不安も残る。「なるべく人の手がかからない設備を入れながら、肝心なところはしっかりと手でやる」。守り続けたものを変えないために細心の注意を払い、省力化や効率化に知恵を絞る。

震災後、新調したタンク

 ようやくめどが着きつつある蔵の工事の後は、生産量を増やすため、瓶詰めと貯蔵のための施設を再建する計画。その次に、つぶれてしまった店舗の再生だ。

▽酒を造り未来への一翼に

 がれきが撤去されて更地が増えた輪島の街を見ると、元通りになるのは難しい、と思うこともある。それでも酒造りをする自分は「喜んでもらえるお酒を造り、届けられる蔵にして、たくさんの人に飲んでもらうことで、これまでとは別の形で輪島に来てもらえるようにしたい」。それが、未来への一翼になり、広がっていくよう願っている。

  • 完成間近となった醤油蔵の前に立つ谷川貴昭さん(左)と妻の千穂さん

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