丘みどり、ジャッキー・ウー監督「もっとうまく歌えと言われたことは何度もありますが、もっと素人っぽく素朴に歌ってほしいというのは初めてでした」『演歌の坂道』【インタビュー】
-「いい日旅立ち」を何回も歌う場面がありましたが、いかがでしたか。
丘 自分の歌手生活で、「もっとうまく歌え」と言われたことは何度もありますが、「もっと素人っぽく素朴に歌ってほしい」というのは初めてでした(笑)。そこの引き算が難しかったです。もっと声を伸ばしてとか、声を張ってとかはできるんですけど、あまりやり過ぎるとわざとらしいし、どの辺りで折り合いをつけるのがいいのかなと。あのシーンは何回も撮り直しました。
-良子のキャラクターをどのように理解して演じましたか。
丘 私も歌の仕事をしながら、家族がいるので、何か良子さんと気持ちが重なる部分がありました。たくさん歌って帰ってきて、息子の寝顔を見ながら一緒に寝るシーンなどは、今の生活と同じなので。こうなった時に、母親なのか、妻なのか、歌手としての自分の夢なのか、どれを選ぶ。どうバランスを取るみたいなことは、常に私も考えていることなので、とても共感できました。
-乾物屋の女将さん役を演じるというのはいかがでしたか。
丘 その部分では、自分の生活の中に重なるところが全くなかったし、商店街の乾物屋さんに行ったこともありませんでした。ちょうど地方に行くことが多かったので、実際にいろいろな乾物屋さんに行って雰囲気を確かめたりしました。本物の女将さんの接客などを見させていただいて、自分の中でこんな感じかなとか、髪形はこんな感じにしようとか、いろいろと考えて、役に生かしました。
-完成作を見た印象はいかがでしたか。
丘 自分の演技のことは照れくさくてよく分かりませんが、自分が出ていないシーンを初めて見て、こんな感じになっているんだと、新鮮な気持ちで楽しめました。川﨑麻世さんの、実は愛のあるシーンや、私1人のシーンのふとした表情、後は、アキラ(100%)さんが夫役だったから、私もこの演技ができたんだなというシーンがたくさんあったので、とても感動しました。
ジャッキー 僕は、映画を作る時はメッセージ性を大事にしています。今回は、夢は幾つになっても追っていいものだということ。その根底にあるのは一歩前に進めていく勇気なんだということ。それを見守ってくれる、家族や恋人、友だち、町内の人たちとの絆。そういうことが描けたので、僕としてはすごくいい作品ができたと思います。
-観客や読者の方に向けて、アピールポイントも含めて一言ずつお願いします。
丘 夢を持つことは、幾つになっても大事なことだと改めて思いました。普通の生活の中に光をくれて、生きる勇気にもなるし、それでまた頑張れることもあると思います。あの頃の夢を思い出すでもいいですし、今また新しい夢を持つでもいいですけど、夢を持つことの大切さを、この映画を通して改めて感じていただければと思います。人との付き合いが薄くなってきている時代だからこそ、この映画の隣近所の人たちとの温かい付き合い方を見ていただければ、人間関係の素晴らしさも感じていただけると思います。
ジャッキー 今回は海外に向けても作らせていただいたので、日本の文化の一つである演歌、後は世界にも広がっているカラオケ。この二つの文化を通して、夢に向かっていく勇気を描きたいと思いました。夢を諦めない、一歩前に出ていく勇気。これがあることによって人生がどんどん変わっていく。夢がかなうかどうかではなく、その勇気を持った一歩において、周りの波動がいろいろと変わってくる。その中で本当に正しいものが見えてくる。忘れかけていた夢に対して、一歩前に出る勇気を少しでも感じていただけるような映画になっていたらと思います。
(取材・文・写真/田中雄二)

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