戸田菜穂「スッとあの時代に入っていけるような空気がありました」名作漫画の実写映画化で、昭和の母を好演『遥かな町へ』【インタビュー】

©︎2026 映画「遥かな町へ」BARCOS
-戸田さんが当時の生活に引かれる理由は何でしょうか。
昔から、向田邦子さん(「寺内貫太郎一家」、「阿修羅のごとく」などを手掛けた昭和の脚本家、小説家)の作品や、そこ描かれている戦後昭和の生活スタイルが好きだったんです。世の中は今よりもずっと不便でしたが、人情味があり、生活も豊かだった気がして。それに比べて、現代の生活はどんどん人間らしさを失っている気がします。
-劇中で話される方言も人間味に溢れ、雰囲気を盛り上げていました。倉吉の方言はいかがでしたか。
お芝居をする上では、方言を正確に話すことができると、グッと臨場感が増し、大きな助けになります。方言は素晴らしい言葉の文化なので、個人的にも大好きです。といっても、やはり難しかったです。私は出身が広島なので、倉吉の言葉には似た点もありましたが、微妙に違っていて。でも、倉吉弁は可愛らしくて素敵でした。
-家族で食卓を囲むシーンも、昭和の家庭らしい温かな空気に溢れていましたが、演じる際に心がけたことはありますか。
食卓を囲むシーンは母親が中心になるので、食事をしながら家族の会話が弾むような日常を、できるだけ自然に演じられれば…と思っていました。監督も、「食卓のシーンは大事」とおっしゃっていましたから。
-そういう温かな空気を生み出す現場は、雰囲気もよさそうですね。
現場は、この映画に懸ける皆さんの気持ちが溢れていて、とてもいい雰囲気でした。息子の博史を演じる及川桃利さんは、素顔も昭和の雰囲気があり、かわいらしく、思わず応援したくなるような方で。しかも、礼儀正しくしっかりしていて、非常にやる気に満ち溢れていました。娘の京子役のこのかさんは、撮影が終わった後、寂しかったらしく、泣いてしまって…。幼いながらも一生懸命この映画に懸けてくれた気持ちが伝わり、かわいいらしかったです。おかげで、私も寂しくなりました。
-それでは最後に、完成した映画をご覧になった感想をお聞かせください。
ご覧になった皆さんが、それぞれ自分の心に問いかけるような作品になったと思います。忙しい日々の中、普段はなかなかそういう時間を取れませんが、一度立ち止まり、家族のことを考えたり、自分と対話したり…。そんな素敵な映画になったので、ぜひ多くの方にご覧いただけたら嬉しいです。世の中はどこへ向かっていくのか、それも合わせて考えていただきたいです。
(取材・文・写真/井上健一)

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