中川大志、三谷幸喜の最新作は「現代にも通ずる、過去の出来事として片付けられないもの」を描く PARCO PRODUCE 2026「アメリカン・ドリーム」【インタビュー】
三谷幸喜が長年温めていたテーマを豪華キャストで描く、渾身(こんしん)の書き下ろし新作舞台「アメリカン・ドリーム」が8月15日からPARCO劇場で上演される。本作は、1940年代後半のアメリカを舞台に、反共産主義に基づく“赤狩り”によって告発されたハリウッドの映画人たちを描く。調査委員として出演する中川大志に、本作の見どころや稽古の様子などを聞いた。

中川大志【ヘアメーク:長野一浩 (MARVEE)/スタイリスト:川地大介】 (C)エンタメOVO
-出演が決まったときの気持ちを教えてください。
2年くらい前にお話をいただき、本当にうれしかったです。これまで、三谷さんとは映像でご一緒させていただく機会はありましたが、演劇で、しかも三谷さんの演出でというのは初めてのことだったので、チャレンジも多いだろうとすごく高揚しました。
-今回は、元俳優志望の調査委員という役柄です。今はどのように役柄を捉えていますか。
1940年代から50年代にかけて、アメリカ国内で「共産主義者の人たちを排除していこう」という流れが起きます。「赤狩り」や「コミュニスト狩り」と言われるその動きは、アメリカがロシア(旧ソビエト連邦)と冷戦を始めた中で起こったことでした。そうした共産主義者の人たちを調査する非米活動委員会という機関があり、今回、僕はその調査委員を演じます。当時、アメリカでは、政治家はもちろん、一般市民に至るまで、例外なく疑われる、すごく厳しい時代だったそうです。そうした中、調査の矛先は、ハリウッドにも向きました。この作品では、そうした時代が背景となっています。ハリウッドで活躍していた俳優や監督、映画プロデューサーや脚本家といった、誰もが知っている人たちをターゲットにすることによって、世間に対しての見せしめにもなったようです。そうした映画人対調査委員会という構図が描かれています。僕は「赤狩り」というワードは聞いたことがあるというくらいで、この時代の歴史的な背景はあまり詳しくなかったのですが、今、さまざまな書籍を読んだり、映画を見たりすると、すごく興味深い。役作りの入り口も「この時代に何があったのか」に触れていくことから始まりました。
-三谷さんの演出を受けて、どのように感じていますか。
三谷さんが脚本を書かれた作品には出演させていただいたことがありましたが、三谷さんから演出を受けるのは、今回が初めてです。演出を受けられるということが、すごく楽しみでもあり、ドキドキしていたところでもありました。しかも、本作は、三谷さんご自身が「ずっと温めてきた、いつか描きたかったテーマでもある」とおっしゃっていて、すごく熱のこもった脚本になっています。だからこそ、三谷さんからの演出は的確で、丁寧です。すごく楽しく、お芝居を積み重ねる作業ができています。
-今回、調査委員役を浅野雅博さんと務めます。浅野さんとお芝居をされて、今、どんなことを感じていますか。
浅野雅博さんと二人でコンビを組んで調査をしていくという設定なので、一緒にいる時間も長いですし、役柄の関係性も近い。すごく心強い先輩です。毎日、稽古を一緒にさせていただいているので、「このシーンでこんなふうに思ったんですけど、どうですか?」と質問をさせていただいて、ディスカッションをすることもあります。この作品は、映画人たちの素性が少しずつ明るみになっていくという物語ですが、実は調査をする人間たち、つまり僕たちが演じる調査委員たちにも謎の部分がある。なので、お客さまには、そうしたところも少し想像していただけたらいいなと思います。彼らにも彼らの事情があって、厳しい追求をしています。彼らの抱える事情が見え隠れしたら面白くなるのではないかと思います。浅野さんと二人の関係性や余白の部分を積み上げていけたらと考えています。
-浅野雅博さんのほかにも、小日向文世さん、浅野和之さん、山崎一さんと実力派の俳優陣が揃っています。そうした大先輩たちとのお芝居というのは、いかがですか。
正直なところ、最初は怖かったです。「このメンバーの中に僕が入っていいの?」と。自分だけがずば抜けて若いんですよ。ただ、もしほかの同世代の俳優がこのポジションをやっていたら、きっとめちゃくちゃ嫉妬するだろうなとも思いました。
-オフィシャルのコメントで「この役は誰にも渡したくない」と書かれていたのは、そうした理由もあったのですね。
そうですね(笑)。少数精鋭で、濃密な会話劇。そして、大先輩方の中でお芝居を構築していけるというのはすごくぜいたくなことだと思いますし、舞台経験が多くない自分にとってはすごく勉強にもなると思います。僕が演じる役は、映画が大好きな青年なので、憧れの人たちの調査をしなくてはいけないという複雑な立ち位置でもあります。僕自身が感じている、小日向さんを始めとした先輩方に対してのリスペクトや緊張感は、役と通じるところがあります。それもまた、役のエネルギーになっていくのではないかと思います。
-三谷さんというとコメディーの印象が強いですが、本作は、三谷さんが「コメディーではない」と宣言されています。コメディーではない三谷さんの作品の魅力については、どのように考えていますか。
そもそも、「コメディーではないと言っていたけれど、実際はコメディーでした」ということもありますから(笑)。なので、幕が開くまでどっちなのか分かりません。三谷さんのファンの方の中には、三谷さんのその言葉を信じていない人もいらっしゃるのではないかなと思います(笑)。ぜひ、そうしたところも楽しみにしていただけたらと思います。
-では、本作のどんなところに注目してほしいですか。
僕もそうでしたが、なかなかなじみがない時代背景の物語だと思います。ですが、その時代に渦巻いていた熱量や、当事者たちが抱えていた思いを劇場で受け取っていただけたら、きっと興味を持っていただけると思います。劇場からの帰り道で、「この時代にどんなことがあったの?」と調べたくなるかもしれない。モデルになった映画人たちのその後を知りたくなるかもしれない。この時代に起きたことは、現代にも通ずる、過去の出来事として片付けられないものです。難しく感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、構えずに来ていただけたらと思います。
(取材・文・写真/嶋田真己)
PARCO PRODUCE 2026「アメリカン・ドリーム」は、8月15日(土)〜9月13日(日)に都内・PARCO劇場ほか、京都、北海道、岡山、大阪、愛知、福岡で上演。
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