「豊臣兄弟!」第1回「二匹の猿」豊臣秀長、秀吉、織田信長 新味を感じさせる主要人物の初登場【大河ドラマコラム】
1月4日から放送スタートしたNHKの大河ドラマ「豊臣兄弟!」。大河ドラマで人気の戦国時代を舞台に、豊臣秀吉の弟・豊臣秀長(若い頃の名は小一郎)を主人公にした物語ということで、どのような幕開けになるのか、興味深く第1回を見守った。小一郎役の主演・仲野太賀を始め、俳優陣の好演もあり、戦国時代の過酷な生活、小一郎と兄・藤吉郎(後の豊臣秀吉/池松壮亮)の再会、織田信長(小栗旬)との対面といった場面が軽快なテンポで描かれ、上々の滑り出しだった。

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そこでここでは、今後を見守る上での注目ポイントを振り返ってみたい。まず印象に残ったのは冒頭、小一郎がけんかの仲裁をするシーン。その前に人物紹介のような形で顔見せはしているが、実質上の初登場といえる重要な場面だ。村の仲間が、種もみの貸し借りでもめる中、現れた小一郎は「双方とも落ち着かんか。一体、何があったんじゃ」と割って入る。その上で双方の言い分を聞き、「種もみを貸した上で、収穫した米の半分をもらう」というどちらにとっても損のない、いわゆる「WIN-WIN」の提案をして、ことを丸く収める。誰もが生き抜くことに必死な戦国の世で、争わずに生きようとする小一郎の人柄が端的に表現されたシーンだった。このとき、対立する両者を説得するために小一郎の語ったせりふが心に残った。
「このまま争ったところで、互いに傷ついて、双方が大損するだけじゃ」
舞台となる戦国時代に限らず、世界各地で戦争が続き、身近なSNS上でも争いが繰り返される今の世にも響くこの言葉に、思わずハッとしたのは、筆者だけではないだろう。インタビューによると、仲野は池松と「今この時代に、戦国時代を舞台にした『豊臣兄弟!』をやる意味はなんだろう?」といったことを話し合っているらしいが、まさにこの言葉こそ、本作が今の世に通じる物語である証しと言えるのではないか。

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そして、本作において小一郎のバディともいえる存在が、兄の藤吉郎だ。演じる池松は、映画『フロントライン』(25)で見せたようなシリアスな演技から、「オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ」(21)などのコメディーまで幅広くこなす実力派。今回も“お調子者”という秀吉のパブリックイメージを踏襲しつつ、見事な好演を披露。口から出まかせを並べ立て、小一郎ら周囲の人物を翻弄(ほんろう)しつつ巧みに世を渡っていくさまは、まさに秀吉といった感じ。その上、クライマックスでは、世話になっていた横川陣内(勝村政信)を容赦なく斬り捨てる非情な一面も見せた。「大事ないか?」の言葉と共に小一郎に向けた血まみれの顔には、お調子者の顔の裏に秘められた狂気が漂っていた。それを見た小一郎は、清州を去る別れ際、「わしが恐ろしかったのは、兄者じゃ」と藤吉郎に告げる。基本的に兄弟仲は良いものの、性格の対照的な兄弟が今後、どんなドラマを織りなしていくのか、がぜん興味が高まった。
さらにもう一人、異色の初登場となったのが、織田信長だ。信長と言えば、威厳ある戦国大名としてのたたずまいとは対照的な、粗末な身なりで「うつけ」と言われた若い頃が印象的に描かれることも多い。だが今回は、すでに清州城主でありながら、小一郎が駆り出された土木工事の現場に正体を隠し、作業員の一人として紛れ込んでいるという初登場。自らの目で現場を確かめる姿からは、並々ならぬ才気とカリスマ性が漂い、正体を明かした後の小一郎との対面も印象的で、今までにない信長になるのでは…という期待を抱かせてくれた。
本作ならではの新味を織り交ぜつつ、主要人物の初登場を印象的に描いて見せた第1回。第2回以降、どんなドラマが繰り広げられるのか、これからが楽しみだ。

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(井上健一)














