中川晃教「憧れることが原動力」 ミュージカル「サムシング・ロッテン!」で7年ぶりにニック役に挑戦【インタビュー】
数々のミュージカル作品へのオマージュが登場するコメディーミュージカル「サムシング・ロッテン!」が12月19日から上演される。2015年にブロードウェイで初演された本作は、「コーラスライン」、「アニー」、「レ・ミゼラブル」などの人気ミュージカル作品や、シェークスピア作品をほうふつとさせるシーンの数々が舞台・ミュージカルファンの心をくすぐるとして話題となり、2015年のトニー賞では9部門10ノミネート、1部門受賞を果たした。日本では2018年に初演。今回、7年ぶりの再演となる。日本初演からニック役を務める中川晃教に公演への思いを聞いた。

中川晃教 (C)エンタメOVO
-7年の時を経て再びニックを演じるお気持ちを聞かせてください。
世の中にはいろいろなコメディーがありますが、コメディーは難しいですよね。いくつかのコメディー作品を経験させていただきましたが、その中で、山田和也さんと一緒にやらせていただいた「FIRST DATE」が僕の中ですごく大きな経験になりました。「アパートの鍵貸します」、「プロミセス・プロミセス」という2作品もそうですが、ブロードウェイの匂いがするミュージカルのコメディー作品を経験させていただいたことで、自分の中に自信がついてきたように思います。中川晃教にコメディー作品の印象を持たれていない方にとって、自分がその中にいることが一つの武器になるのではないかと。もしかしたら武器というほどのことはまだできていないかもしれませんが、温めてきたものなので何かできるのではないかという思いがあります。この作品が再演されることは僕にとってとても大きなことで、すごくうれしいです。
-ニックという役柄についてはどのように感じていますか。また、再演ではどのように深めていきたいですか。
僕が演じるニックが「シェイクスピアなんて大っ嫌いだ!」と歌うほどの存在のシェイクスピアを加藤和樹さんが演じます。実際のプライベートでは僕たちはお互いに大好き。そういう関係性の僕たちが(嫌い合うという)真逆の関係をやるのが面白いなと思っています。和樹さんと僕は、これまで何度も共演していますが、不思議な組み合わせをいただくことが多いんですよ。今回は(加藤をはじめとした)このキャストの皆さんと一緒に、(演出の)福田(雄一)さんの演出によって、この作品の面白さを再構築し、進化させていかなければいけないと思います。ただ、ニックは引っ張っていくような役でもなくて。どちらかというと、自分のふがいなさにがんじがらめになって、「何とかしなくては」と焦るがあまり、間違ったチョイスをしてしまう人間くさい役だと思います。周りのキャストさんとのバランスの中で、ニックの人間くささが見えてくるのかなと思うと、今回のメンバーでどんなニックが新たに生まれるのかを楽しみにしながら、進化をしていけたらいいなと思っています。
-本作でニックとシェイクスピアは対抗心を持った関係性ですが、中川さんご自身は例えば共演者や同じ業界の方をライバルとして意識して努力したり、ときにはうらやんだりすることはありますか。
僕自身はこの仕事を怒りの感情でやったことがないと思います。好きでやっている気持ちが大きいんです。なので、ライバルとして張り合うということは僕の中で不自然な感情なんですよ。ただ、切磋琢磨(せっさたくま)して盛り上げるということは世の中にありますよね。僕自身もそうした中でここまでやってきているとは思うのですが、限りなく平和主義で、おのおのの良さを引き立て合える間柄、関係性を築いていくことの方が、僕にとって大事なことです。「ライバルだと思う人って誰なのかな」と考えたこともありますが、特定の誰かというのはいないんです。ただ、もちろん誰かが良い曲を書いていたらチッと思うし、歌がうまかったらチッと思うことはある。そういう意味では、誰もがライバルなのだと思います。
-特定の誰かということではないのですね。
そうですね。でも、尊敬する俳優さんや「いいな」と思う方はたくさんいらっしゃいます。先日、市村正親さんが主演されていた音楽劇「エノケン」を拝見しましたが、やっぱり市村さんは芝居がすごい。それに松雪泰子さんもお上手でした。そうして本物に触れる瞬間に、いつも自分は「まだまだです」と思います。ライバルというよりははるか遠くにいる方々ですが、そうした方に憧れることが原動力になっているのかもしれません。
-今回、年末年始を挟んでの公演になります。そこで、2026年の目標ややりたいことを教えてください。
2026年はデビューして25年目に入る年で、一つの節目を迎えます。なので、大きな意味を持った1年にしたいなと思っています。まだ今は出演作品が出ていないですが、いろいろな新しいことにもチャレンジしていこうと思います。絶えず挑戦していくときに、自分の中で、好きだという気持ちを忘れないようにしているんです。例えば、忙しくなると音楽さえ聞く時間がなくなってしまいますが、「歌うことが好きだ。音楽が好きだ」という気持ちに立ち返ることで、より音楽、歌への気持ちが強くなっていくような気がします。好きこそものの上手なれではないですが、「好き」という気持ちを持って、見る人にもそれが作品となって届くように、そしていろいろな自分をお見せできる1年になるように頑張っていきたいと思います。
(取材・文・写真/嶋田真己)
ミュージカル「サムシング・ロッテン!」は、2025年12月19日~2026年1月2日に都内・東京国際フォーラム ホールC、2026年1月8日~12日に大阪・オリックス劇場で上演。















