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【週末映画コラム】50年の時を経て製作された『新幹線大爆破』新旧2作を紹介

『新幹線大爆破』(75)(5月9日から2週間限定で全国リバイバル上映)

(C)東映

 国鉄本社に、東京発博多行きの東海道・山陽新幹線に爆弾を仕掛けたという脅迫電話が入る。爆弾は時速80キロ以下に減速すると爆発するようセットされているという。大金を要求した犯人と、警察、国鉄職員との息詰まる攻防が描かれる。東映が当時流行していたパニック映画に触発されて製作。日本で初めてレンズ口径が小さいシュノーケルカメラを使用し、日本が世界に誇るミニチュアワークを駆使して新幹線を再現した。監督は佐藤純彌。

 この映画がユニークなのは、パニックサスペンスの中に、零細工場の経営に失敗した沖田(高倉健)、過激派くずれの古賀(山本圭)、沖縄出身の大城(織田あきら)という、暗く屈折した犯人たちの人物像を描き込んだところ。従って特撮で描かれた新幹線の様子に加えて、彼らと捜査陣や国鉄職員とのやり取りも見ものとなる。

 公開当時、日本では爆発的なヒットはしなかったものの、フランスで『Super Express 109』として短縮版が公開されて大ヒットを記録。逆輸入の形で改めて日本でも公開された。

 「爆弾は、あるスピードに減速すると爆発する」というアイデアはハリウッド映画『スピード』(94)にも応用されたが、佐藤監督は、助監督に付く予定だったが幻に終わった、黒澤明監督の『暴走機関車』からの影響を明かしている。

 ラストシーンの警察に追い詰められた高倉健のバックに流れる青山八郎の哀愁に満ちた音楽が胸にしみるのは、新幹線の描写にも増して人間ドラマが深く描かれていた証しだ。

(田中雄二)

 

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