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ロバート・ロレンツ監督「ビッグスターでありながらこういう映画に出演し続けるリーアム・ニーソンは希有な存在」『プロフェッショナル』【インタビュー】

-監督が長く一緒に仕事をしているクリント・イーストウッドとリーアムとの類似点はありますか。

 コラボレーションに関しては、クリントから学んだことが多いです。彼は、全てをマネジメントしようとはせず、むしろ他の人がどんなアイデアを持っているのかを見ることを大切にしていました。私の場合も、プロダクションデザイナーや撮影監督、俳優たちが「こうしたらどうだろう」と提案してくれることがあり、そのアイデアが私が考えていたものよりもはるかにいいことがよくあります。その意味で、計画を持っていることは大切ですが、他のアイデアがあれば耳を傾けるようにしています。クリントとリーアムの似ている点は、非常に無駄がないというか、必要なことが分かっているところです。やることが分かっていて無駄がないから、2人ともあれだけの本数の映画に出たり撮れたりするのだと思います。私自身も映画製作の現場はとても楽しいし、仕事自体がとても好きなので、そこが私たち3人の共通点だと言えます。

-今回、ケリー・コンドンが演じたIRAの女性闘士との対決がユニークだと思いました。これは脚本通りの設定でしょうか。

 実際の脚本も女性の設定です。実は『セイ・ナッシング』(何も発しない)という本がありまして、これは事実に基づいた話で、主人公が実在したIRAの女性兵士なんです。脚本はちょっと彼女の人生をなぞらえた部分があるのではないかと思いました。そのこともあって、この脚本は非常に信ぴょう性があると感じました。

-この映画の原題は「聖人と罪人の土地」です。また、主人公が悪事をしながらも善をなすという設定や、ドストエフスキーの『罪と罰』も出てきますが、こうした矛盾や相反する要素が混在しているところがこの映画の魅力だと感じました。

 まさにそうした相反する要素がキャラクターに深みを与えている部分だと思います。主人公が映画の終盤で「皆のすることにはそれぞれ理由がある。それぞれの正義がある」と語るように、行動の裏には理由があるとして、それぞれの行動を正当化しているわけです。でも、何が正しいのかということはどこから見るかによって変わってくると思います。白黒がつけられない部分がこの映画を非常にリアルにしている要素であって、多層的であり、一筋縄ではいきません。ですから、さまざまな視点とタイトルがそれを象徴しています。ただ、アイルランドを表現する時に使う、「聖人と学者」という知識を持っている人の土地とする言い方をちょっとひねって、「罪深い者」というふうに変えています。

-最後に、日本の観客や読者に向けて、見どころやアピールポイントも含めて一言お願いします。

 リーアム・ニーソンが日本でもとても人気があるというのは私も知っていますが、果たして日本の人たちがこの映画に共感してくれるのか、どう受け取ってもらえるのかというのは、非常に興味があって気になるところです。私は映画を見て知らない世界のことを垣間見るのがとても好きです。ですから、日本の皆さんも、遠く離れたアイルランドのことを、この映画を通して経験して、この時代にここに住んでいたのはどういう人たちで、どんな気持ちを持って暮らしていたのだろうかと思いをはせていただければと思います。その時代の雰囲気や文化、景色の美しさなどを堪能してもらえたらうれしいです。

-先ほどおっしゃった西部劇的というのもありますが、主人公にはちょっと孤独な侍のようなところもあるので、日本の観客は受け入れると思います。

 私がその言葉を発することができたらよかったのにと思いました。素晴らしい表現です。サンキュー。

(取材・文/田中雄二)

演出中のロバート・ロレンツ監督(左)

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