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芥川音楽の魅力を存分に 【コラム 音楽の森 柴田克彦】

 芥川也寸志という作曲家をご存じだろうか? 1925年、文豪・芥川龍之介の三男として生まれた彼は、東京音楽学校(現・東京藝大)で学び、1953年に團伊玖磨、黛敏郎と「3人の会」を結成。戦後音楽界の寵児(ちょうじ)として旋風を巻き起こし、強烈なリズムと繰り返しの魔力、そして美しいメロディを特徴とする作品を次々に発表した。

 このほか、NHK大河ドラマ「赤穂浪士」や複数の映画音楽の作曲、テレビ番組「音楽の広場」の司会など、多面的な活動を行い、1989年に亡くなった。だが現在も「芥川作曲賞」に名を残している。

 今回ご紹介するのは、2025年7月の「芥川生誕100年記念コンサート」のライブ録音。BBCフィルをはじめ英国で名を上げ、現在は関西フィルの総監督のほか各地で活躍する藤岡幸夫の指揮、日本の作曲家専門のプロ・オーケストラ「オーケストラ・トリプティーク」の演奏で、芥川のデビュー作「管絃楽のための前奏曲」から遺作のカンタータ「いのち」まで、代表的な管弦楽曲を含む7曲が収録されている。

 ここでご紹介する最大の理由は、すべての楽曲を「プロ」による完成度の高い演奏で耳にできる点にある。これは芥川作品の録音では意外に希少だ。

芥川也寸志生誕100年記念コンサート
藤岡幸夫(指揮)、オーケストラ・トリプティーク
スリーシェルズ 3SCD-0080 3056円

 中でも、記念コンサートでは演奏されていないにもかかわらず、あえて2021年の録音が当ディスクに追加された芥川の最高傑作「絃楽のためのトリプティーク」(本作は、ニューヨーク・フィルによって初演され、海外でも絶賛された)のきめ細かな名演は大いなる聴きものだ。

 また、「いのち」の迫真的な表現も印象的だし、1947年に東京音楽学校の卒業作品として作曲され、1990年の初演以来再演されずにいた〝幻の処女作〟「管絃楽のための前奏曲」のプロ・オーケストラとしての初演と録音、散逸していた映画音楽「八つ墓村」オリジナル・スコアの発見と完全復活などもかなり貴重。全体に精緻かつ迫真的な快演が揃(そろ)い、独特の推進力や高揚感をはじめとする芥川音楽の魅力を存分に満喫させてくれる。

 楽曲はすべて20世紀作品としては異例なほど明快で、演奏は極めて丁寧でクオリティーが高い。本ディスクを契機に、芥川也寸志の業績が見直されることを願ってやまない。


しばた・かつひこ 音楽ライター、評論家。雑誌、コンサート・プログラム、CDブックレットなどへの寄稿のほか、講演や講座も受け持つ。著書に「山本直純と小澤征爾」(朝日新書)、「1曲1分でわかる!吹奏楽編曲されているクラシック名曲集」(音楽之友社)。

【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.13からの転載】

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