同じUSB-Cなのに、充電の速さがなんか違う 【岡嶋教授のデジタル指南】
USBでケーブルと口金が統一されれば、周辺機器はもっと使いやすくなる。そう信じていた時代もありました。でも現実は自分の寝室のように混沌としていて、むしろ選ぶのが難しくなった感すらあります。同じ差し込み口なのに充電の速さが違い、モニターにつないでも画面が映らない。店頭には似たようなケーブルが並び、値段も私の人生のように地をはう価格帯のものから、ある種のマスクメロンのような“おねだん”のものまで多様性に満ちています。
近年のスマホやパソコンでスタンダードになった、平たい楕円形の端子がUSBタイプC(USB-C)です。上下を気にせず差し込めるので便利ですし、機器ごとに別の形状のケーブルを持ち歩く手間も減りました。EUでは2026年から、ノートパソコンにも充電端子を共通化するルールが適用されるようになっています。
ただし、USB-Cという名前が示すのは、主に端子の形や接続の決まりです。できることや性能まで同じとは限りません。同じ形だとつい、「みんないっしょ」「挿さればなんとかなる」という幻想を見てしまうので、戸惑いの原因になっていると思います。大昔であれば端子の形である程度分かった使い道の違いが、形状統一によって、かえって見えにくくなったともいえます。
USBケーブルには、送電する、データ伝送をするといった役割があり、組み合わせによっては映像も送れます。そして、それぞれに得意不得意があります。たくさんの電力を送れるケーブルが、写真や動画のファイルも速く運べるとは限りません。「とりあえず一番高いのを買っとけばなんとかなるだろうアプローチ」がうまく行く保証はないです。
一番身近な充電で考えてみましょう。充電の速さは、コンセントにつなぐ充電器、ケーブル、充電されるスマホなどの機器が関係してきます。どれか一つだけマクラーレンのようなハイスペックにしても、残りの機器がそれについていけなければ、力を発揮できません。
例えば、電力ドカ食いのゲーミングノートに、小出力のスマホ用充電器をつないだ場合。端子はぴったりでも、充電が遅かったり、使用中に電池が減ったり、充電できなかったりすることがあります。
目安になるのがW(ワット)で示される電力表示です。充電器には出力の上限、ケーブルには対応できる電力が表示されているものがあります。機器の説明書で条件を調べて、それに合う充電器とケーブルを選びます。大きな数字の製品や高い金額の商品を買えば必ず速くなる、というわけではないので注意です。
ちょっと待て。高出力の充電器をスマホにつないだら、電気が流れすぎて壊れたりしないのか?危なくないのか? 気になりますね。私は小心者なので、すごく気になります。
USB PDという給電の仕組みでは、充電器と機器がやりとりして、供給する電力を決めます。規格に対応した製品同士なら、充電器の最大出力が、そのままスマホに押し込まれる事態を回避できます。
写真や動画をパソコンへ移したい場合は、データ転送への対応と速度を確認します。充電用に選んだケーブルだと、思いのほか伝送に時間がかかることがあります。スマホやパソコンの画面を外部モニターへ映したいなら、端子とケーブルの両方が映像出力に対応しているかがキーになります。
買うときは、まず「何につなぎ、何をしたいか」を決めましょう。スマホの充電なのか、パソコンの充電なのか、写真の伝送なのかです。お店の人にサポートしてもらうときは、細かな規格名を全部覚えて伝える必要はありません。機器の型番と用途くらいで十分です。使える組み合わせを知ったら、ケーブルに用途別のマークをつけておくのもいいと思います。せっかく形がそろった便利さを生かすには、中身の違いをちょっと知っておくと役立ちます。
【著者略歴】
岡嶋 裕史(おかじま ゆうし) 中央大学国際情報学部教授/中央大学政策文化総合研究所所長。富士総合研究所、関東学院大学情報科学センター所長を経て現職。著書多数。近著に「思考からの逃走」「プログラミング/システム」(日本経済新聞出版)、「インターネットというリアル」(ミネルヴァ書房)、「メタバースとは何か」「Web3とは何か」(光文社新書)、「機動戦士ガンダム ジオン軍事技術の系譜シリーズ」(KADOKAWA)。Eテレ スマホ講座講師など。
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