国民の声を反映した米政策を 青山浩子 新潟食料農業大学教授 連載「グリーン&ブルー」
令和の米騒動はいまだ収まらず、米価は高止まりしている。一方で、流通業者の間では「米の売れ行きが鈍化している」という。生産者が口々にしていた「高値疲れによる消費者の米離れ」が現実のものになりつつある。
2026年の米生産をめぐり、消費者と生産者の間に意識の差が出始めている。消費者の中には、買いやすい価格で出回るように増産を求める声が大きい。一方、生産者の多くは、高止まりしているとはいえ、2025年産米の在庫は潤沢にあるため、増産には否定的だ。まずは、価格下落への不安が大きい。労働力や設備のキャパシティーから増産する余力がないことも背景にある。日本一の米どころである新潟県は、2026年産米の生産目標数値を56万2千トンとした。これは、前年産の実績である58万9千トンより約4%少ない。
令和の米騒動以来、消費者は主食である米がいかに重要だったかを認識する機会となり、農業への理解も進んだように感じる。ところが先行きをめぐる認識の違いにより、再び両者の距離が開いてしまうのではないかと懸念する。
経済界からの風あたりも厳しく、生産調整による米価維持は望ましくないというこれまでの農政への批判がここにきて再燃しつつある。「生産調整による米価維持は納税者、消費者ともに負担を課している」「(増産の余力がある)大規模農家にしぼって支援すれば、コスト削減が進み、国内の消費者にも海外輸出にも有利に働く」などだ。
こういう主張に対し、鈴木憲和農林水産大臣をはじめ、政府サイドはさほど明確な主張をしていないが、2027年度から米政策を抜本的に見直すと言っている。1年余りしか時間は残されていないが、改革の姿はまだ見えない。
抜本改革をするのであれば、消費者と生産者の双方に、望ましい米政策について意見を求めてはどうか。参考になるのは2009年、石破茂農相(当時)の名で、同省が発表した「米政策の第2次シミュレーション結果と米政策改革の方向」。生産調整に対し、見直しを求める国民の声が多かったことから、生産調整に対し、「廃止」「農家の自主性を尊重した上で緩和」「継続」「強化」などの選択肢を示した。選択肢ごとのメリット、デメリットが示された画期的な提案だった。ただ、その後の自民党の選挙敗北、政権交代により、検討結果が日の目を見ることはなかった。
米に対する関心が高い今こそ、再度シミュレーションを行い、国民が議論しあう場が必要だ。「廃止」や「緩和」を求める声が多ければ、増産への支持が高いという判断になる。ただ増産一辺倒では、生産調整により作られてきた大豆や麦、加工用米などの生産は極端に減り、米を原料とする加工品の製造にも影響を及ぼす。一筋縄ではいかない米政策だが、国民自身が答えを出せるよう、政府には説明責任を果たしてほしい。
【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.3からの転載】
青山浩子(あおやま・ひろこ)/ 新潟食料農業大学教授・農業ジャーナリスト。1999年からジャーナリストとして、全国の農業現場を取材し、雑誌・新聞などに寄稿。2018年新潟食料農業大学講師、24年から現職。













