キンパを極める! 畑中三応子 食文化研究家 連載「口福の源」
すっかり日本に定着した韓国のり巻き「キンパ」。専門店が増え、和風より好きだという声もよく聞く。のり巻きが注目されるのは節分の恵方巻きぐらいになった日本に対し、韓国では一年中若者に大人気だという。そんなキンパの魅力を探ろうと『極めるキンパ』(女子栄養大学出版部)を上梓(じょうし)した金延恩(キム・ジョンウン)さんのキンパ教室に参加した。
金さんはソウルの培花(べファ)女子大学教授として栄養学などを教えるかたわら、料理研究家として活躍中。日本料理にも詳しく、日韓を食文化でつなげたいという抱負を持つ。今回の本でも46種のキンパのうち9種に日本の総菜を使った。

韓国のテレビ出演も多く、人気料理研究家の金延恩さん
かつて韓国でも日本と同様、遠足や行事のときに作る素朴な家庭の味だったが、アメリカで冷凍キンパが流行したのが火付け役になり、韓国に逆輸入されて一躍ファッショナブルな流行食の座を獲得。K‒POPアイドルがSNSに投稿し、さらにバズって大ブームに。断面がきれいで映えるのも若者に受けた。
具はナムルや厚焼き卵、たくあんが定番だったが、ブームで多様化した。ダイエット用に生野菜をたっぷり巻き込んだり、糖質制限用にはご飯のかわりに錦糸卵を使ったりと新しいスタイルが生まれている。ルッコラ、アンチョビ、ドライトマトのワインに合うキンパも人気だという。
キンパと和風のり巻きの違いは、甘いか甘くないかにある。日本では甘酸っぱい酢飯で甘い具を巻くが、韓国ではごま油と塩だけでご飯を調味し、具は甘く味付けないのであっさりしている。のりは韓国のりではなく、普通ののりで大丈夫。巻いたら上面にごま油を塗るのがポイントだ。
ご飯の味付けは簡単だがコツがある。温かいご飯(65度前後)1本分150グラムに塩小さじ5分の1(1グラム)をふり入れ、ごま油小さじ半分をまわしかけてスプーンで切るように混ぜ、均一に味を付ける。この割合だとご飯の塩分はわずか0.7%に抑えられ、ヘルシーだ。
黒米、玄米、もち麦ご飯など、色や味、食感に特徴があるご飯でアレンジでき、チーズにはオリーブ油というように、具に合わせて油を変えるとバリエーションが無限に広がる。
ご飯に個性があるから、具は1種だけでも十分おいしい。きゅうりを1本丸ごと巻いたキンパはダイエット食として、韓国で人気だそうだ。
教室で実演したのは、ゼユックキンパとオムレツキンパの2種。ゼユックは豚肉にコチュジャンだれを揉み込んで炒めた、韓国の定食屋には必ずあるおかずだそうだ。
オムレツだけが具のキンパは、入門編におすすめだ。卵3個に5ミリに切ったカニカマ1本、ネギみじん切り、いり白ゴマ、塩、コショウを混ぜ、丸い棒状に焼く。巻き簀(す)にのりをのせてご飯を広げ、手前にオムレツを置いて巻く。
このご飯で巻けば、和風のおかずや漬物でも本場風キンパになる。手巻きなら、なお簡単。試してみてください。
【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.45からの転載】
















