KK KYODO NEWS SITE

ニュースサイト
コーポレートサイト
search icon
search icon

世界デジタル政府ランキング20周年 2025年版を公開

早稲田大学総合研究機構電子政府・自治体研究所

2025年11月17日
早稲田大学

早稲田大学総合研究機構電子政府・自治体研究所

世界デジタル政府ランキング 20周年 2025年版を公開

 

詳細は、早稲田大学HPをご覧ください

 

発表のポイント

1.ランキング開始以降20年目にしてはじめて英国が1位に。2年連続10位圏外だった日本は9位で返り咲き。デンマーク、シンガポール、エストニアをはじめ人口小国の優位性が鮮明。

2.AI開発競争が本格化し、行政サービスの質の向上や業務効率化に貢献するも社会変革を牽引する成果は不十分。気候変動、エネルギー・食料、災害への総合的対策は途上.将来的にはAI/データ重視政府にシフトの可能性。

3.デジタル政府は行財政改革に加え、国民サービス優先の財政シフトへ.技術進化が激しい昨今、新技術への初期費用、保守運用費用の高騰で上位国も財政規律に苦慮。

4.高度なサイバー・セキュリティのリスク拡大と生成AI、偽誤情報対応のリテラシー不足が深刻化。特に人材、技術両面の対策不足が先進国含め現実味を帯びる。

5.中央と地方のデジタル行政に実装面の標準化等課題あり。国際、地域、構造的格差問題が継続。

6.民主主義対権威主義、自国第一主義台頭で国家間の不協和音が表面化。そのため世界で急速に進む高齢社会対応を含め、国連SDGsの進捗度に黄信号。

7.デジタル政府の進捗は経済成長との相関関係にある。また、デジタル資産ならびにデータ重視の国家的経済活動と安全保障の両面に影響を与える。

 

早稲田大学総合研究機構電子政府・自治体研究所(東京都新宿区、所長:加藤篤史。以下、「当研究所」)はこのたび、「第20回早稲田大学世界デジタル政府ランキング2025」を発表しました。本研究調査分析では、デジタル先進国66か国・地域を対象に、国民生活に不可欠なデジタル政府の進捗度を主要10指標で多角的に評価しており、デジタル社会推進へ貢献しています。

 

2025年度調査結果(世界デジタル政府ランキング2025 総合ランキング)

当研究所のランキングは、各国政府の行財政改革と国民サービスを目指して導入された電子政府の20年の歴史をもとに直近の各国デジタル政府の潮流を理解する上で十分なビッグデータを有しています。今回も、前年度に引き続き66か国・地域を対象にし、分析・評価しています。20回目を迎えた2025年度のランキング総合順位は表1の通りです。

今年は英国が1位となりました。英国は「科学技術立国」としての地位を維持しつつ、社会全体の包摂性や持続可能性にも配慮したデジタル政策を展開しています。昨年3位のデンマークは2位に浮上。3位は、昨年1位のシンガポールが2ランクダウンとなりました。4位はエストニア(昨年7位)、昨年と同じ5位は韓国と6位オランダ、7位は米国(昨年4位)、8位が中東の盟主、産油国からデジタル立国を目指すサウジアラビア(同)、9位が日本(昨年11位)、10位がフィンランドで昨年17位から大躍進。

9位の日本は6月にデジタル庁より「ガバメントAI」計画が発表されました。UAEは AI政府確立に向けて行政業務にAIを全面的に導入します。シンガポールや韓国でもAIによる政策提案や市民対応が実用化しています。最近の潮流として、対象国間のデジタル化進捗度の差が開いています。最上位国と下位国には40点以上の差が開き、各国の進捗度に明暗がみられます。また、上位25か国中11か国が非欧米地域という躍進も出色。

 

表1 第20回早稲田大学世界デジタル政府総合ランキング2025 スコアを含む総合ランキング 

 

これらの進捗度の差異をもたらす多様な要因は、当研究所のHP(https://idg-waseda.jp/ranking_jp.htm)に掲載中の報告書にまとめています。報告書は、日本語版、並びに約300頁の英語版を公開しており、後者は国別評価レポートを含め各国の諸課題を多面的に分析しています。このほか、報告書には、ランキング内容の解説だけでなく、過去20年間にみる世界のデジタル政府の進展、総合ランキングの推、デジタル政策、注目の新潮流などをまとめています。

 

20年間の歴史と特徴

1. SNSの進化で、ユーザー体験(UX)を重視した行政ポータルやアプリが増加しつつあります。英国やオランダなどでは、障がい者や高齢者にも配慮したデジタル制度設計が進んでいます。

2. 様々なデジタル格差解消にはヒト、モノ、カネの投入が不可欠ですが、必要とするところにその恩恵が十分行きわたっていません。さらにアクセシビリティ(接続性)だけでなく、AIリテラシーやデータ活用能力が新たな格差要因になっています。

3. サイバー・セキュリティ対策強化は世界各国の共通関心事ですが。公共機関への攻撃が増加しています。米国やEUではゼロトラストモデルの導入が進み、セキュリティ分野等デジタル人材の育成も重要課題になっています。

4. DXとSNSの普及で市民や社会の電子参加及び市民の幸福度向上施策への要望が増加。

5. 国連 「SDGs2030」の達成目標は、残り4年となり目標の実現に向けてさらなる努力が求められています。デジタル政府については具体的な実現目標の対象ではありませんが、デジタル社会の形成こそ、SDGsが目指す平等や貧困の撲滅、格差解消等の観点で解決すべき社会課題になることから、その重要性は高まっています。

6. 隔年発表の国連調査では4項目のベンチマークを指標として使用していますが、毎年実施の当研究所調査では前述の計 10 項目の部門別指標を活用し多岐詳細にわたる20回に及ぶ分析実績があります。とりわけ、最近顕著なDXやAI活用もランキング分析の評価指標に追記し分析力を向上させています。 

 

日本の課題

20年目を迎えた世界デジタル政府ランキング2025では,日本の課題と構造的問題点に対し,次のように総括できます。

1. 司令塔機関として、コロナ禍の混乱も収まり創設5年目に入ったデジタル庁は官民連携に基づく組織体制の構築の成果が見え始めています。政府クラウド共通化、マイナカードの利便性、社会全体のデジタル改革そして各省庁連携の開発、運用が進みつつある点が評価。

2. しかし、重複投資の温床となる官庁間の縦割りの弊害の打破にむけて引き続き取り組む必要があります。さらに、効率性の観点では、利活用する職員の目線も視野に、サービス・アプリケーションの開発と実装にスピード感を持って進める必要があります。

3. 高齢化、人口減少、少子化の影響は年々深刻さを増しています。効率性追求、人手不足を解消するはずのAIを必要とする小規模自治体での財政、デジタル格差は、行政運営の機能や継続性に影響を及ぼします。一時しのぎの支援策ではなく、サステナブルに自治体をどう運営していくか、特に地方独自の課題解決が急務です。

4. マイナンバーカードは国民の利便性を実感できる政策と実装が求められます。さらにAI利活用意識がまだ低く、草の根の課題解決が急がれます。マイナンバーカードの安定的稼働と利便性の確保も不可欠です。

5. 生成AIの導入により急増するサイバーセキュリティ・トラブル対策及び関連するリテラシー向上のための国民各層への啓蒙や教育訓練は引き続き不可欠です。

 

日本への提言

デジタル政府の最優先事項として次の5項目の提言が挙げられます。

●20年間、COVID19など世界的なリスクを乗り越えて、世界のデジタル政策は急激な変革を遂げ、生成AIがさらに加速させました。AIの効用とリスクヘッジをデジタル政策の課題に据え、慎重且つダイナミックに進めていく必要があります。将来のデジタル社会をどのように構築・展開すべきか、総合的に検討する時期に来ています。

●本報告は20回に及ぶ研究調査分析の集大成ですが、時系列分析から得た貴重な歴史的変遷を鑑みるに、経済成長とデジタル政府の進展が相関関係にある点を認識すべきです。背景にはこれまでデジタル化の促進がGDP成長率や労働生産性の向上、さらに技術の社会実装が経済成長を牽引する要因となっています。デジタル政策の根幹を見直し、経済の構造的な底上げや持続可能な成長に直結する重要政策手段としての最適戦略を講じ、実装すべきです。

●理想の電子政府像は行財政改革が本丸です。現在の日本はAI革命によって、官庁のあらゆる無駄、非効率を排し、財政健全化実現目標を達成したい。そのためのビジョン、戦略、最適なデジタル投資が求められます。

●デジタル政府は将来AI、データ、DX、イノベーションが融合する第五世代AI―ロボット協働政府に発展していく。将来の人型ロボット利活用は1日24時間勤務し、飛躍的な効率化、スピード、生産性向上によって人手不足解消と組織の変革が急速に進みます。少子高齢化人口減少社会による“縮む日本”像から脱皮し「誰一人取り残されない、人間中心のデジタル社会」に向けて総合的且つグローバルな課題解決型国家を目指すべきです。

 

「早稲田大学世界デジタル政府ランキング」とは

デジタル対象国66か国のデジタル政府の進捗度を主要10指標で多角的に評価する本研究調査分析は、2005年に始まり、今年で20年目を迎えました。

当研究所の総合性、厳格な中立性・独立性、高度な学術的分析力、グローバルなネットワークが世界中から評価されています。

 

本評価モデルは研究所初代所長の小尾敏夫教授(当時)によって開発され、ランキング手法が確立されました。小尾名誉教授は英国シンクタンクから「世界で電子政府に最も影響力を持つ百人」に日本人として唯一選ばれています。

当研究所はAPECのデジタル政府研究センターも兼務し、国連とSDGsテーマなどへの課題解決フォーラムも共催しています。

本研究調査では最新で、かつ最も正確な情報を得てデータ分析及び評価するために、NPO法人国際CIO学会(理事長/早稲田大学電子政府・自治体研究所研究院教授:岩﨑尚子)の世界組織であるInternational Academy of CIO傘下の提携大学を代表する専門家による合同研究調査チームを編成しています。連携大学は、北京大学(中国)、ジョージ・メースン大学(米国)、ボッコーニ大学(伊)、トルク大学(フィンランド)、タマサート大学(タイ)、大統領連邦政経大学(ロシア)、ラサール大学(フィリピン)、バンドン工科大学(インドネシア)、それに統括拠点の早稲田大学(日本)です。

研究調査プロセスでは専門家チームがデータを収集、分析評価を実施し、さらに各国政府デジタル部門、国連、OECD、世界銀行、APEC、EU、G20等国際機関との意見交換を重視しています。最終的に岩﨑研究院教授の指導の下に完成させています。

編集部からのお知らせ

新着情報

あわせて読みたい