妊娠中の夜間の間食頻度が産後うつ病につながる可能性 酪農学園大学小林教授らの研究
妊産婦の7人に1人が経験すると推計されている「産後うつ病」(周産期うつ病)。出産後4週間以内に発生する可能性があり、妊娠出産で大きな負担がかかった体の回復途上で、生まれたばかりの赤ちゃんのお世話に取り組む女性たちにとって重要な健康課題となっている。このほど、酪農学園大学(北海道江別市)の農食環境学群 食と健康学類 小林道准教授らが、妊娠中の夜間の間食頻度が高い人は産後うつ病疑いが出現するリスクが高いという研究結果をまとめた。論文は、3月3日に国際学術雑誌『European Journal of Clinical Nutrition』電子版に掲載された。
夜間の間食頻度が高いことは、肥満や抑うつ症状のリスクとなることが報告されているが、これまでに妊娠中の夜間の間食頻度と産後うつ病の関連については、検討されていなかったという。今回の研究は、2019年7月~2022年7月に江別市在住の妊婦609人を研究対象に、妊娠中の週当たりの夜間の間食頻度、食品群別摂取量と産後うつ病を評価した。
その結果、妊娠中に夜間の間食頻度が週3回以上の人は、週1回未満の人と比較して、産後1カ月以内の産後うつ病疑いの割合が高かったことが明らかになった。さらに、妊娠中に軽度の抑うつ症状が認められた人を解析から外した場合も、同様の結果が得られた。加えて、夜間の間食頻度が高い人では、豆類、野菜類、魚介類の摂取量が低い傾向があり、総エネルギー摂取量、果物類・菓子類の摂取量が高い傾向が明らかになった。
妊娠中は、つわりや、大きくなってきた胎児に胃が圧迫されることなどから、食欲不振の時期もあり、間食などで栄養をとることが必要な場合がある。仕事や家事が忙しい場合は、夕食後に間食をとることもある。一方で、妊産婦以外を対象とした研究においても、夜の過剰なエネルギー摂取がうつ病のリスクになることが報告されている。そのようなことを踏まえて、今回の研究では、夜間の間食頻度や量を考えて摂取することは、妊産婦の健康増進に寄与する可能性があると結論付けている。
一方で、今回の研究対象は小規模な集団であること、夕食後の間食や夜食については、週当たりの頻度のみで評価していることから、夜間の間食で何を食べているのかは明確になっていないとし、今後より詳細な食事調査や実際に夜間の間食頻度が高い人の生化学的データを取得するなど、詳細な調査による追加の研究が必要としている。