西川美和監督、小八重葵美「子どもたちが本当にみずみずしくて素晴らしいので、ぜひそれを映画館に見に来ていただきたいと思います」『わたしの知らない子どもたち』【インタビュー】
-今回は、二階堂ふみさんが演じた教師の曽根と生徒の琴子という2人のヒロインがいましたが、その意図はどこにあったのでしょうか。
西川 曽根先生をもうひとつの主軸にしようと思ったのは結構後からでした。最初は、子どもたちだけのサバイバルの物語として書いていこうと思いましたが、なぜこの子たちがこういう状況に置かれているのか、誰がそうさせたのか、そうさせてしまった大人たちは何を考えているのかが気になり始めて、それを描きたいと思いました。ただ、子どもたちは本当にひたむきな存在で、状況を言葉で語るわけでもないですし、物言わぬ存在としては非常に強いんですけれど、それを言葉にしながら見ていく、物語を観客に伝えてくれる語り部として、曽根先生に琴子を探すという大役を務めてもらう方が、見てくださる大人の方たちにとっては、この物語がより身近になると思ったので、そうした意味でも二階堂さんに、もう1人のヒロインをやっていただきました。
-1945年の再現が見事でしたが、そこに子どもたちの冒険物語という側面をクロスさせていましたね。
西川 どこまで行っても完全な再現はできません。私も含めて、スタッフも皆戦後生まれですし、自分の目で見たわけではないので、厳密に言えば違うことばかりだと思います。もちろん、いろいろな下調べはしましたが、色彩や技術の表現では、スタッフにどうすれば観客が魅力的に捉えてくれるのかを目指していただきました。結局、先人たちの作った映像資料しか参考にするものがないんです。残っているフィルムはモノクロだし。どこでフィクションの線引きをするかというのは非常に難しかったのですが、今まで見たままのものをトレースするのではなく、映画的な楽しさを求めました。やはりこういう題材だからこそ、映画館にぜひ行ってみたいと思うような楽しさや明るさ、あとは、登場人物たちの魅力もなければいけないと思いました。重くてつらくて勉強になるだけだと人はなかなか食指が動かない。「教育」とは別のものをもたらしてくれるのが映画の素晴らしさだと思うので、映画のきらめきと楽しさを大事にしたいというのがありました。
-自分が出演した映画を見てどう思いましたか。
小八重 撮影中は、自分で画面を見たりとかはあまりしていなかったので、今どういう顔をしているんだろうと気になりました。完成した映画を見たら、こんな顔をしていたんだとか、曽根先生にこんなことがあったんだとか、台本を読んではいたけれど、映像で見ないと分からないこともいっぱいあったので、見られてよかったです。琴子がかわいそうだというのもありますが、とても強いなと思いました。すごく一生懸命に生きている。自分で髪を切って、男の子のふりをして生きていこうとする姿がすごいなと思いました。
-観客や読者の方に向けて、一言お願いします。
小八重 琴子が吉田羊さん演じる鷹間先生に抱きしめてもらうところと、将吉との別れのところは感動すると思います。ピアノやアコーディオンを弾くところは、練習も大変だったし、すごく頑張ったので見てほしいです。多分、みんなすごく泣いてしまうと思うから、ハンカチでは足らないと思います。私は演じた時も、完成したものを見た時も泣きました。
西川 今も各地で戦争が起こっていて、どうしたら止められるのかと思いながら、悶々としている人も多いと思いますが、もう1度、自分たちの国に何が起きていたのかを知ることも大切なのかなと思います。また、子どもというのは、おしなべて素晴らしい存在なんだということを、私もこの映画を撮影して、作り終えて、改めて実感できたと思っています。子どもたちが本当にみずみずしくて素晴らしいので、ぜひそれを映画館に見に来ていただきたいと思います。
(取材・文・写真/田中雄二)

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