大谷亮平「お芝居の原点に触れた気がした」北斎の娘の生きざまを描く映画の現場で過ごした貴重な時間『おーい、応為』【インタビュー】

大谷亮平(ヘアメイク:堤紗也香、スタイリスト:カワサキタカフミ) (C)エンタメOVO
-そうやって出来上がったふわふわとした初五郎の存在が、対照的に絵の道を極めようとする北斎親子の生きざまを際立たせている印象です。北斎親子についてはどのような印象を持たれましたか。
2人とも自分の意志を曲げないので、ことあるごとにぶつかり、けんかが絶えない。そうやって文句を言いながらも、お栄は自分でも気付かないうちに、父親の生き方を認めているところがある。そこは、やっぱり親子だなと。それが滑稽に見えるときもあり、そういう2人の生きざまがとても面白いですよね。
-大谷さんもエンターテインメントの世界で活躍されている1人として、北斎親子に共感する部分もあったのでしょうか。
北斎親子のように、一つの道を極めようとする生き方は、誰にでもできるものではありません。それだけに、それがどれほど大変で、それを貫くことがいかに素晴らしいかは理解しているつもりです。ただ同時に、それ以外の生き方も同じくらい価値があるのではないかと。
-というと?
「石の上にも三年」という言葉が重んじられ、終身雇用が当たり前だった時代は過ぎ、人生の選択肢が増えた今は、転職を繰り返しつつ、スタンスを変えながら生きていく時代です。そういう時代の移り変わりを見ていると、どちらの生き方が素晴らしい、どちらの生き方が良かった、ということは、誰かの価値基準で決まるものではなく、本人にしか決められないものだと思うんです。
-確かにおっしゃる通りですね。
そう考えると、それぞれの人生は、自分の責任で納得できるように選択していくしかありません。劇中の北斎とお栄も、自分たちの人生について満足していたのかどうかは、本人にしかわかりませんから。そんなことを感じさせてくれるこの物語が、僕は好きです。ご覧になる皆さんも、ぜひこの作品からいろんなことを感じとっていただければと思います。
(取材・文・写真/井上健一)

(C)2025「おーい、応為」製作委員会