勉強中の「もうひと頑張り」、何を飲ませる?食べさせる? 子どもの集中力を支える栄養と生活習慣
内科専門医に聞く、勉強の集中力・効率を高める栄養と習慣
いよいよ夏休みも目前。受験を控えるお子さんたちにとっては、実力を蓄えるラストスパートともなりえる重要な時期です。猛暑に負けず、集中力を維持して勉強に励むことができるのが理想ですよね。
「勉強をもうひと頑張りしなければならない」場面では、チョコレートや甘い飲み物などを口にしたり、カフェイン飲料を飲んだり、その子やご家庭によってさまざまな工夫をしている人も少なくないのではないでしょうか。
大正製薬株式会社は、全国の高校生以上の子どもがいる保護者410名を対象に、「子どもの勉強時の飲食と栄養意識」に関する実態調査を実施しました。
その結果、子どもが勉強中やテスト前に「もうひと頑張りしたい」ときに、食べさせている/飲ませている、または子ども本人が摂っている具体的な食品・飲料のうち、最も多かったのは「チョコレート・キャンディ・グミなどの甘い菓子」(146人)で、次いで「おにぎり・パン・サンドイッチなどの主食・軽食」(77人)、「ケーキ・ドーナツ・菓子パンなどの甘いパン・洋菓子」(74人)が続きました。勉強の踏ん張りどころでは、気分転換にもなりやすく、また糖分を含んだ甘いものや、手軽に食べられるものが選ばれていることがわかります。
一方、「特にない」という人も155人おり、勉強時の飲食について特別な意識をしていない家庭も一定数みられました。
集中力やコンディションを保つために“意識的に”摂らせている栄養素・食品についてきくと、「特に意識していない/わからない」と回答した人は247人と半数以上で、子どもの勉強時の集中力やコンディションを、具体的な栄養素と結び付けて考えている家庭は限られていることがうかがえます。
具体的な栄養素としては、上位に「ブドウ糖(ご飯・パンなどの主食)」(75人)、「たんぱく質(肉・魚・卵・大豆製品など)」(71人)、「水分(こまめな水分補給)」(53人)が挙がりました。脳が大量に消費するブドウ糖や成長期の体づくりや神経細胞も含む細胞を育てるのに必須のたんぱく質への意識が高いながらも、集中時のストレスや自律神経との関連がわかっているタウリンを意識している保護者はわずか13人と、選択肢の中では最も低い結果となりました。
勉強時の集中力は、本人のやる気だけでコントロールできないことも多々あります。睡眠不足や空腹、栄養不足、ストレスなどが重なると、心身のコンディションが崩れ、集中できない、イライラする、眠くなる、頭がうまく働かないといった状態につながることもあります。
子どもが勉強でもうひと頑張りしたいとき、保護者はどのような飲食や生活習慣を意識すればよいのでしょうか。内科専門医として幅広い世代の日常的な体調管理に向き合う医師の久住英二先生に、勉強に集中しやすい状態をつくるための栄養と生活習慣について伺いました。
【監修】 立川パークスクリニック院長 久住英二先生
内科専門医、血液専門医。1999年新潟大学医学部卒業後、虎の門病院で内科研修ののち血液内科に進み、白血病など血液がんの化学療法・骨髄移植に長年携わる。感染症・予防接種・旅行医学にも精通。2024年12月、内科・小児科・皮膚科の複合クリニック「立川パークスクリニック」を開設。疲労や栄養、体調管理など日常の健康課題に幅広く向き合って豊富な診療経験を持つ。テレビ・ラジオの情報番組やネットメディアでも「分かりやすい」と評される医療解説を続けている。
勉強の集中力が続かない……その原因は?
勉強に取り組むときには、注意を向け続ける「集中力」、課題を継続するための「持続力・意欲」、情報を覚えて必要なときに取り出す「記憶力」、不安やイライラに気を取られずに取り組むための「感情を調整する力」など、複数の脳機能が同時に働いています。これらの機能が十分に発揮されることで、学んだ内容を理解し、記憶し、効率よく学習を進めることができます。
しかし、勉強を続けていると、「眠くなる」「頭に入らない」「集中が続かない」「イライラする」といった状態になることがあります。これは単なる気合いや根性の問題ではなく、脳や身体のコンディションが整っていないサインかもしれません。
例えば、睡眠不足になると、記憶を整理し、定着させる能力が低下し、学習効率に大きく影響します。また、睡眠不足により集中力や判断力、感情のコントロールを担う前頭前野の働きが低下することも知られています。
水分不足にも注意が必要です。脳の約75%は水分で構成されており、軽度の脱水でも集中力や認知機能、気分に影響を及ぼすことが報告されています。脱水状態では血液循環や体温調節に負担がかかり、自律神経のバランスが乱れやすくなるため、疲労感や集中力の低下を招くことがあります。
また、食事を抜くなどしてエネルギー源であるブドウ糖の供給が不足すると、脳は十分なエネルギーを確保できなくなります。脳の重量は体重の約2%でしかありませんが、全身のエネルギー消費量の約20%を消費しています。欠食や栄養不足は集中力や思考力を低下させます。
脳が適切に働くためにはエネルギーだけでなく、神経細胞同士の情報伝達やストレスへの対応、自律神経の働きを支えるさまざまな栄養素も必要です。成長期は身体だけでなく脳の発達も進む重要な時期であり、勉強や部活動などで心身への負荷が高まることで、これらの栄養素の必要性も高まります。
勉強時に意識したい栄養素は?
● タウリン:神経の働きやストレス反応を調整し、学習時のコンディションを整える
勉強中には、集中力や記憶力だけでなく、緊張や不安、イライラといったストレスに適切に対応することも重要です。ストレスが強くなると自律神経のバランスが乱れやすくなり、集中しづらい、落ち着かない、疲れやすいといった状態につながることがあります。
タウリンは魚介類に多く含まれるアミノ酸で、細胞内の浸透圧の調整や体内環境の維持に関わるほか、神経や筋肉の正常な働きを支える成分として知られています。また、自律神経やストレス応答との関連についても研究が進められています。
タウリンと学習時のストレスや心理状態との関係については、さまざまな研究が行われています。
健康な男子大学生20人を対象とした研究では、タウリン3gを摂取した後に計算課題を2回行ったところ、課題に伴う唾液アミラーゼ活性※(※ストレスを受けると増加することが報告されているストレスマーカー)の上昇が抑えられたことが報告されています*1。
また、韓国の高校生134人を対象とした研究では、タウリンを多く含む夕食(1食あたり平均466.2mgのタウリンを含む)を5日間提供されたグループで、教員に対する態度、目標意識、モチベーションと自己抑制、学業に関する自己認識などを含む「学校態度評価(生徒の学校生活や学習に対する態度を測る35項目の自己評価尺度)」のスコアが高かったことが報告されています*2。
さらに、大学入試を控えた学生17人を対象とした予備的な研究(パイロット研究)では、タウリン3gを含むゼリーを1日1回、2週間摂取した群で、モチベーションや自己制御に関するスコアが高まる傾向がみられたことが報告されています(少人数を対象とした予備的検討であり、効果を確定するものではありません)*3。
*1 Suzuki D, et al. Taurine Modulated the Changes in Salivary Markers Induced by Psychological Stress. 臨床生理(J. Clin. Physiol.)Vol. 50, No. 5, 2020.
*2 Park SH, Park SJ, Chang KJ. Dietary Taurine Supplementation in School Meals Has Positive Effect on School Attitude Assessment in Korean High School Students. Adv Exp Med Biol. 2017;975 Pt 1:79-88. PMID: 28849445.
*3 Park SH, Kang DH, Kim SH, Chang KJ. Effects of Dietary Taurine-Containing Jelly Supplementation on Academic-Related Characteristics and Academic Achievement in Korean College Entrance Examinees: A Pilot Study. Adv Exp Med Biol. 2022;1370:405-414. PMID: 35882814.
勉強のパフォーマンスは、単に脳のエネルギー量だけで決まるものではありません。ストレスに適切に対応し、自律神経や神経機能が正常に働くことで、集中力や意欲を発揮しやすい状態を維持することが大切です。タウリンは、こうした学習時のコンディションづくりとの関連が研究されている注目の成分です。
タウリンは、魚介類を日々の食事に取り入れることで補うことができます。例えば、朝食にしらすや焼き魚、昼食にツナ缶やさば缶を使った料理、夕食にあさりの味噌汁、イカやタコを使った炒め物などを取り入れるとよいでしょう。
● たんぱく質:脳や神経の働きを支える神経伝達物質の材料
勉強に必要な集中力や意欲、判断力には、ドーパミンやノルアドレナリン、セロトニンなどの神経伝達物質が深く関わっています。これらは、たんぱく質を構成するアミノ酸を材料として体内でつくられています。
たんぱく質は筋肉や骨をつくるだけでなく、脳や神経が正常に働くためにも欠かせない栄養素です。不足すると神経伝達物質の材料が不足し、意欲が湧かない、集中しにくい、疲れやすいといった状態につながる可能性があります。
毎食20gを目標に、たんぱく質を含む食品を摂りましょう。朝食には卵(6g)や納豆(8g)、ヨーグルト、昼食や夕食には肉や魚(100gあたりたんぱく質20g)、豆腐(半丁でたんぱく質10g)などを取り入れると、無理なく補えます。勉強中の間食にヨーグルトやチーズ、牛乳(100mLあたり3g)を摂るのもおすすめです。
● 糖質:脳の主なエネルギー源となるブドウ糖を供給する
脳の重量は体重のおよそ2%程度しかありませんが、安静時でも全身のエネルギー消費量の約20%を消費しているといわれます。その主要なエネルギー源がブドウ糖です。
食事で摂ったご飯やパンなどの糖質(でんぷん)は消化されブドウ糖となって体内に吸収され、脳や身体を動かすエネルギーとして利用されます。そのため、朝食を抜いたり、空腹状態が長く続いたりすると、脳に十分なエネルギーが供給されず、集中力や思考力の低下、疲労感につながります。
ご飯やパン、麺類などの主食を抜かず、たんぱく質や野菜と組み合わせて食べることが大切です。ただし、血糖値の乱高下を避けるためには、野菜→肉や魚のおかず→主食の順番で食べることが推奨されます。また、30回噛むことも消化を助けるうえで大切です。
勉強中に小腹が空いたときの補食は、素焼きナッツ(アーモンド、くるみ)ひとつかみ、ゆで卵、チーズ、無糖ヨーグルト(+少量のナッツや果物)、枝豆・蒸し大豆、高カカオチョコレート(カカオ70%以上)を数片、するめ、小魚アーモンドなどがおすすめです。
補食でのポイントは、血糖値の変動(血糖スパイク)を抑えるため、①血糖値が急に上がりやすいものを単体で摂らない(低GIを選ぶ)、②糖質に、たんぱく質・脂質・食物繊維を組み合わせることの2点です。血糖価が急上昇すると、その反動で急降下し、かえって眠気・だるさ・集中力低下(いわゆる反応性低血糖)を招きやすいためです。
● 鉄:脳への酸素供給を支える
脳が働くためには酸素も欠かせません。鉄は、全身に酸素を運ぶヘモグロビンの材料となる栄養素です。
鉄が不足すると酸素を運ぶ能力が低下し、疲れやすさや倦怠感、集中しにくさなどにつながることがあります。特に成長期の子どもや月経のある女子は鉄不足に注意が必要です。
赤身の肉や魚、あさりなどの貝類、レバー、大豆製品、小松菜などを積極的に取り入れましょう。ビタミンCを含む野菜や果物と組み合わせることで吸収率が高まります。
● ビタミンB群:脳と身体のエネルギー産生を支える
糖質やたんぱく質、脂質をエネルギーとして利用するためには、ビタミンB群が欠かせません。
ビタミンB₁は糖質の代謝、ビタミンB₂はエネルギー産生、ビタミンB₆はアミノ酸代謝や神経伝達物質の合成などに関わっています。脳と身体が効率よくエネルギーを利用し、学習時のコンディションを維持するためにも重要な栄養素です。
豚肉、魚、卵、納豆などの大豆製品、乳製品、玄米などに多く含まれます。
勉強を支える食事の例
■朝食・・・ご飯、味噌汁、焼き魚、卵または納豆、果物
糖質、たんぱく質、ビタミンB群、鉄、タウリンなどを複数の食品から補いやすく、午前中の活動や学習に必要なエネルギーと栄養素をバランスよく摂れる組み合わせです。時間がない場合でも、ゆで卵、ヨーグルト、ナッツ、チーズ、おにぎりなどを活用して完全な欠食を避けることが重要です。
■塾や自習前の軽食・・・ナッツ、ヨーグルト、ゆで卵、チーズ、ゼリータイプの栄養補助食品
勉強前に空腹を感じている場合は、食べすぎない程度の軽食でエネルギーを補いましょう。甘い菓子や飲料だけに偏らず、たんぱく質と食物繊維、少量の炭水化物などを組み合わせることがポイントです。ゼリータイプの栄養補助食品も、食事を十分に摂れないときの補助として活用できます。
■夕食・・・ご飯、魚または肉料理、野菜の副菜、味噌汁
主食・主菜・副菜をそろえることで、たんぱく質、鉄、ビタミンB群などを無理なく補えます。焼き魚やあさりの味噌汁を組み合わせると、タウリンや鉄も一緒に摂ることができます。夜遅くなる場合は油の少ない食材を用いて調理し、就寝の2時間前までに食べ終えましょう。やはり早食いは禁物で、30回しっかり噛むことが大切です。
■夜の勉強中・・・水または麦茶などのカフェインを含まないお茶、消化のよい軽食を少量
夜におなかが空いたときは、食べすぎを避け、ゆで卵、チーズ、ヨーグルト、スープなど、消化しやすいものを少量取り入れましょう。空腹を我慢して無理に勉強を続けるのではなく、必要に応じてエネルギーを補い、その後は十分な睡眠をとることが大切です。
脳が働きやすい状態をつくる生活習慣
食事で必要なエネルギーや栄養素を補うだけでなく、睡眠や休憩、勉強する環境を整えることも、集中して学習に取り組むためには大切です。
● 睡眠を削らない
眠気を感じたまま無理に勉強を続けたり、甘いものや刺激の強い飲み物で一時的に眠気を紛らわせたりする習慣が続くと、就寝時間が遅くなり、睡眠時間を確保しにくくなります。学習した内容は睡眠中に整理・定着するため、起きて勉強を続けるより、しっかり眠るほうが記憶を保ちやすいとされています。睡眠時間は7〜8時間必要で、毎日同じ時間に寝て起きる決まったリズムを保つことが望ましいです。
● 集中しやすい時間とリズムをつくる
毎日決まった時間に机に向かう、勉強する場所を決めておくといった“いつものパターン”をつくると、脳が勉強モードに切り替わりやすくなります。また、長時間続けるのではなく、時間を区切ってこまめに休憩を挟むことも大切です。スマートフォンは通知で集中が途切れやすいので、勉強中は手の届かない場所に置くのもひとつの方法です。
● 休憩と軽い身体活動を入れる
長時間同じ姿勢で座り続けていると、筋肉の活動量が低下し、血液循環が滞りやすくなります。また、集中した状態が続くことで脳にも疲労が蓄積し、眠気やだるさ、集中力の低下といった症状が現れることがあります。これらを防ぐためには、定期的に立ち上がって軽く体を動かしたり、ストレッチを行ったりすることが重要です。さらに、適度な休憩を取り入れることで、心身のリフレッシュにつながり、作業効率の向上にも寄与します。日常生活の中で意識的に体を動かす習慣を取り入れ、健康的な状態を維持することが大切です。
勉強は脳だけではなく、身体の状態、食事、睡眠、ストレスの影響を受けます。子どもが頑張る時期こそ、毎日の食事から必要なエネルギーや栄養素をしっかり補い、勉強に取り組みやすい心身のコンディションを整えることが大切です。
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