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女性活躍は「制度整備」から「構造変革」のステージへ 東京都・松本副知事らが現状分析

東京都の松本明子副知事

 日本企業における女性活躍推進のあり方を議論する「女性活躍推進フォーラム」(主催:日本企業女性活躍推進委員会)が2026年1月27日、東京都千代田区のシャングリ・ラ東京で開催された。フォーラムには東京都の松本明子副知事やプライム上場企業の女性執行役員らが出席。人的資本経営の核となる女性登用を阻んでいる「構造的障壁」について、踏み込んだ議論が交わされた。

均等法制定から約40年――露呈した「制度の副作用」

 松本氏は冒頭の講演で、世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数を引用して日本の現状をこう分析した。

 「教育と健康は世界のトップレベルにあります。これほどのリソースがありながら、なぜ経済や政治に生かせていないのでしょうか。実にもったいない」

 男女雇用機会均等法の制定から約40年が経過し、女性の就業率は約7割に達している。かつての課題であった「M字カーブ」は解消の兆しを見せ、全就業者に占める女性の割合が5割に迫る一方で、女性管理職比率は約16%に留まる「L字カーブ」の現実があるという。

 「ボリューム(就業者数)は整いました。法制度もすごく整っていて、世界の中でもトップレベル、北欧諸国並みだと言われています。しかし、その制度を使っているのがほぼ女性だけに偏っていることが問題の本質です」

 松本氏は、両立支援制度の利用が女性に偏ることで、結果として「女性は不在がちな働き手」という固定観念を強める副作用が生じていると分析。制度が整うほどに、かえってキャリアの分断が形作られてきた経緯を振り返った。

58%が抱く「無意識の偏見」の正体

 さらに松本氏は、東京都が実施した意識調査の結果を示し、社会に根深く残る「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」に踏み込んだ。調査では「性別によって向いている仕事がある」と考える層が58%に達しているという。

 「アンコンシャス・バイアスを持つこと自体は悪ではありません。しかし、その無意識の『配慮』が、女性から成長のチャンスを奪っていないか。上司の勝手な決めつけが、成長の芽を摘んでいる現実に気づかなければなりません」

 この「配慮」こそが、女性を重要な職務から遠ざける最大のボトルネックになっているという。東京都は女性活躍推進条例を制定し、事業者の取り組みを後押しする体制を整えており、行政としても変革を促す「加速装置」としての役割を果たす方針を強調した。

経営戦略としての多様性 

 フォーラムでは、運営に携わった株式会社レオパレス21の宮尾文也代表取締役社長があいさつし、少子高齢化の進行により人手不足が深刻化する中、企業が保有する人的資源を十分に活かす視点の重要性を指摘。女性活躍を経営課題の一つとして捉える必要性に言及した。

 「企業に内在している人的資源、とりわけ女性の活躍に目を向けることが重要です」

 宮尾社長はまた、女性活躍推進フォーラムを特定の施策に限定せず、参加企業間での意見交換を通じて実務的な課題を共有する場としたいとの考えを示した。

当事者の声:数値では見えない「機会喪失」の構造

 フォーラムの後半に行われたグループディスカッションでは、事前アンケートの結果を土台に、より踏み込んだ議論が展開された。

 アンケート結果によれば、各社の現在地として「育児支援等の制度面(ハード)」は進んでいるものの、「キャリアパスの可視化等の運用面(ソフト)」に課題があった。分析を行ったフォーラム事務局は「配慮が機会を奪っている構造」と指摘した。

 参加者からは、数値だけでは見えてこない切実な生の声も相次いだ。

 「育児中の社員に対し、周囲が『大変だろう』と忖度(そんたく)して重要なプロジェクトや出張のアサインから外してしまう。これこそが成長機会を奪う最大の要因ではないでしょうか」

 あるテーブルからは、現場にはびこる「善意の差別」への危惧が報告された。本人が望んでいるかどうかにかかわらず、周囲が勝手に配慮することで、女性社員が最も必要としている「経験値」を得る機会を失っているという。

グループディスカッションの様子

 議論はさらに、日本企業における「リーダー像」にも及んだ。現在の管理職評価が、依然として長時間労働や滅私奉公を前提とした旧世代の働き方に依存していることが、次世代の女性リーダーの意欲を削いでいるという指摘が、会場のあちらこちらから上がった。

 こうした中で、一つの解決策として注目を集めたのが、〝早期復帰インセンティブ制度〟。この日のディスカッションで参加者から紹介されたこの事例は、産休・育休から早期に職場復帰した社員に対し、現金を支給するというもの。事務局も「非常に興味深い打ち手」として注目した。

 「現金支給という形をとることで、配偶者(夫)側が家事や育児を分担して復帰を後押しする動機が生まれる。家庭内の壁を、経済合理性によって突破する試みです」

 今回のフォーラムで浮き彫りになったのは、女性活躍推進が単なる「数合わせ」や「社会貢献」にとどまるものではなく、企業が生き残るための経営戦略として捉え直す必要性だ。行政と企業が手を取り合い、こうした構造改革を具体化できるかどうかが、日本経済の停滞を打開し、社会全体の活力を高める上での鍵となる。

  • 東京都の松本明子副知事

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