テレワークでイチゴ産業革新 単価2倍、多彩な人材を結集 役員の半数は遠隔地、GRA

人手不足対策などを目的に国が普及を目指すテレワーク。ICT(情報通信技術)を活用して働く時間・場所の選択肢を広げる、この働き方の先進事例を総務省が選んで表彰する「テレワークトップランナー2025 総務大臣賞」に、株式会社GRAの取り組みが選ばれた。GRAは、積極的なテレワーク活用で多種多様な能力を持つ人材を地元内外から引き寄せ、地元特産品イチゴの生産・流通・販売システムを革新した個性的なイチゴビジネスを展開する。
「弊社のモットーは“世界を、甘酸っぱくしよう。”イチゴを世界に広め平和な世界をつくりたい」と話すGRAの岩佐大輝代表取締役CEOに、革新的なイチゴビジネスを可能にしたテレワークの効用などを聞いた。
▼テレワークは当たり前の“初期設定”
――テレワークの取り組みはいつから始めましたか。
2012年1月のGRA設立時から導入しています。テレワークの活用が創業の大前提でした。弊社の事業そのものがテレワークの活用を不可欠とします。GRAはイチゴの生産から販売までを担い新たな価値創造を行う、いわゆる“農業の6次産業化”を目指す企業なので、こうした多岐の事業の展開に必要な能力を持つ多様な人材を、地元の山元町はもちろん、全国から幅広く募って確保する必要がありました。だからテレワークは最初から導入しています。従業員は山元町を中心に約100人いますが、私自身が東京と山元町を行ったり来たりしていますし、栽培ハウスの技術責任者は栃木、ブランド戦略・マーケティングの責任者は東京に在住するなど、リーダーたちは山元町内にある生産現場に縛られない働き方をしています。農業の企業では珍しいと思いますが、GRA役員の半数以上は生産現場の山元町に住んでいません。町外の遠隔地でもテレワークでそれぞれの役割を果たしています。大げさかもしれませんが、テレワークはこちらが求める能力を持った人材を世界中から確保できる強力なツールだと思います。
――御社ではテレワークは当たり前の“初期設定”ということですね。
そうです。テレワークはGRAの事業理念そのものに根差している取り組みです。事業のきっかけは2011年3月11日に起きた東日本大震災にさかのぼります。僕のふるさと山元町は被災し「壊滅」してしまいました。両親の安否不明の中、援助物資を車に積み込み、急いで両親の救助に山元町に向かいました。そこで目にした地元の状況はひどかった。特産品のイチゴの生産農家の大半が生産停止に追い込まれ、このままでは「地元」は本当になくなると危機感を持ちました。そこで当時経営していた東京のIT企業を共同創業者に譲って主要拠点を地元に移し、故郷の復旧復興を目指して仲間と一緒にNPO法人を立ち上げました。子供たちの教育支援、地場産業への金融支援、地元と町外の人との交流事業に取り組み、都会の人など町内外の様々な人がこのボランティア活動には参加してくれました。この時どんな形であれ、町内外の人々の“交流”さえ続けば地域はなくらない、栄えていくと確信を持ちました。この住んでいる所も能力も異なる人々の交流が地域を豊かにするという感覚が、現在のテレワークの活用につながっています。
▼震災復興のためイチゴ栽培に挑戦
――そのNPO活動を経てGRAを立ち上げ、自らイチゴ栽培のプレーヤーの世界に飛び込んだのはどんな思いからですか。
地元の復興のために何を一番大切にすべきかを考えた結果です。もちろんイチゴ栽培以外の産業にも地元再生の可能性はあったかもしれませんが、僕らが被災した地元の皆さんに聞いた「皆さんの誇りは何ですか」という質問への答えの7割は「イチゴ」でした。「イチゴの名産地・山元町」は地元民のシビックプライド(地域への誇りと愛着)です。山元町のイチゴ産業は震災前、数十億円の売り上げを誇る町の主幹産業でもありました。イチゴを誇りとする地元民の精神的価値と主幹産業としての経済的価値を併せ持つ町のシンボル、イチゴ産業の復活発展が、山元町の復興には絶対欠かせないと強く思いました。山元町のイチゴ農家の皆さんがこれまで培ってきた栽培技術の「巧の技」に、東京でIT会社を経営してきた僕たちの「新しい技術」がマリアージュすれば、ふるさとのイチゴ産業をさらに大きく発展させることができると考えました。
――その巧の技と新技術をマリアージュさせる手段としてテレワークを積極的に活用した結果、GRAのイチゴ栽培はどのような成果を手にしましたか。具体的に教えてください。
わかりやすく数値で説明すると、GRAのイチゴの収穫量(単位当たり収穫量)は宮城県平均の1.5倍に伸びています。また販売単価もおよそ2倍に上がりました。作業面では、イチゴの育苗や温度・湿度・二酸化炭素濃度をはじめとしたハウス内の調節作業など栽培作業の無駄を約2割削減できました。ICTを活用して遠隔地から生産現場を監視し、技術指導するテレワークでは、栽培環境や、生育状況、出荷・販売などの各種データの多くを数値化、見える化、共有化できます。この膨大なデータの分析から、無駄な作業が判明したり、高品質のイチゴ栽培に必要なハウスの最適な環境を追求したりすることが可能になります。育苗面積も含め約3ヘクタール以上の栽培面積を誇るGRAのイチゴが等しく高品質なのは、例えばハウスの温度・湿度など栽培環境の最適値を熟練の技術者が遠隔地から分析、指導、管理できるテレワーク体制を構築しているからです。
▼コロナ後の“リアル回帰”の波には乗らない
――これからのテレワークの取り組みは。
今後もますます推進していきます。コロナ禍後はテレワーク推進から出社を義務付ける“リアル回帰”の動きが起こっているようですが、GRAはあくまで、テレワークの活用を限界まで追求していきます。ただ、テレワークを活用して高品質のイチゴを生産できるのは、栽培技術を高めてきた「巧の技」を持つ農家の皆さんのおかげですから、地元農家の皆さんをリスペクトしています。素晴らしい伝統の栽培技術にテレワークなどの新しい手段を導入して新たな時代にふさわしい新しいイチゴ産業の未来を切り開いていきます。
【プロフィール】
岩佐大輝(いわさ・ひろき)/2002年、大学在学中にITコンサルティングサービスを主業とする会社を起業。東日本大震災後の12年1月にGRA設立。著書に『99%の絶望の中に「1%のチャンス」は実る』『甘酸っぱい経営』『絶対にギブアップしたくない人のための成功する農業』がある。
他のテレワークトップランナー選定団体をご紹介します
株式会社RevComm
【企業情報】
AI × Voice × Cloud を軸にしたソフトウェアデータベースの開発を展開。所在地は東京、従業員数は290人。
【主な取組例】
全国からリモート勤務が可能な働き方を採用し、フレックスタイム制やライフステージに応じた勤務形態を整備。オンライン環境下でもスムーズに業務が進むよう、採用・業務・情報共有を支えるドキュメント文化の徹底や、Notionを活用したオンボーディングパスの設計。さらに、自社プロダクト「MiiTel」を使った会議・商談内容の可視化に加え、日々のSlackでのやり取りを通じて、オープンで迅速なコミュニケーションを実現している。
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